作品タイトル不明
第1341話 精霊儀式<前編>
『人族の子らよ、感謝する』
現れたのは、大人より少し大きいぐらいの背丈になった精霊さまたち。
悠は5歳ぐらいの子供の背丈だ。
『こうして悠と再び会えた。なんと感謝していいのか』
精霊たちは口々に感謝の言葉を述べた。
『我が絶望せず暴走しないで戻ってこれたのは人の子のおかげだ。感謝する』
悠は丁寧に胸に手を置いてわたしの目を見る。
「暴走しなかったのは、悠さまが踏みとどまれたから。
絶望から戻ってこれたのは、あの集落、そして使い魔があなたを支えていたからです」
悠は少し口を開いて、言葉を噛みしめて、そしてうなずいた。
「今度はお兄さんやお姉さんがいるから、ひとりで悩まずに打ち明けてくださいね」
『娘の言ったことに胸を打たれた。絶望するのは後にする』
あ、あれね。
睨まれてはいないけど、他の精霊からの視線が痛い。
『皆、きっと転生してる。我は何度でも探そうと思う。そして見届ける。それが我の役割だと思うから』
悠が発光したような気がした。そう思ったのはわたしだけじゃないみたいで、みんな気のせい、あれってな表情だ。
『人族の子らよ。うぬらは我らの願いを叶えてくれた。我らもいつでも協力すると共に、約束した瘴気の件について話そう』
瘴気という単語で、悠が少しびくついた。
「悠さまの自我があるから、方法があるということですね?」
ダニエルが口火を切る。
レイヨンさまがうなずいた。
『我らと悠の違いを考えた。我らは送り出してもらう時、女神さまから祝福ともう一ついただいたものがある』
祝福ともうひとつ?
『地上に降りた時、授けられたものがわかった。それは〝名前〟』
名前?
あ、そういえば、光のレイヨンさま、とか。時のトンさまとか。
悠はずっと悠だった……。
『そして自我がしっかりとしたのは個々の名前があったからではないかと思うのだ』
ふむふむ。
『それで人の子よ、悠に名をつけてくれまいか?』
ええ?
え、でも、それはやっぱり、女神さまがつけたから効力があったんじゃないの?
なんの力のないわたしたちがつけてしまったら……。
「人族が、ですか? それでは効力が期待できないのでは?」
同じことを思ったようでロサが進言する。
『だが、女神さまは地上に降りてくることはない』
そ、それはそうかもしれないけど。
「あ、アイリスさま。聖女さまにつけてもらうのは?」
ブライがいいことを言った。聖女は女神さまの申し子のようなもの。
神力も持ってるし。
『我は、娘につけてもらいたい』
高い男の子の声で言って、悠はわたしを見ていた。
「わ、わたし!? わたしなんの力もないですよ? 神力だって」
『だめか?』
そんな可愛く首を傾げられても。
『人の子よ、悠もそう申しておる。お願いできないだろうか?』
「ちょっと待ってください。名前をつければ、悠さまが暴走したり、うっかり瘴気が増えることはなくなるんですか?」
イザークが肝心なことを聞いてくれた。
『今視ると悠がとても不安定なことがわかる。悠の自我がしっかりとすれば、いたずらに瘴気が増えたりもしないだろう。
もし名を刻み、それでも瘴気がおかしくなるようなことがあれば、我ら精霊が対処する。どうしたらいいかはまだわかっていないが、我ら全員で必ず被害が出ないようにする』
精霊の皆さまが胸に手を当てた。
『リディアよ、名前をつけてやったらどうだ』
もふさまの声が聞こえたみんなもうなずいてわたしを見ている。
本当にわたしでいいの?
悠の名前……。
彼の役割は見通すこと。
……12を巡り命は進化する。全てを見通すのは悠。挑戦し命はまた巡る、だっけ?
目をつむる。
悠久という言葉が過ぎる。Eternal。
エターナル。
「悠さまの役目。果てしなく永遠とも思えるような時を見守ること。
悠久という言葉を思い浮かべました。
わたしの前の生では、他国の言葉で悠久をEternalとも言いました。
悠さまのお名前、エターナル、でいかがでしょう?」
『エターナル……。我の名。精霊が一、悠の我が名はエターナル』
光った。
小さな子供の悠が光る。眩しくて手で顔を隠すようにしていた。
そして小さな子供は……わたしと同じぐらいの子供へと成長していた。
おおう!?
ファンタジー。
いや、精霊いるってだけで。魔法もあるしファンタジーなんだけど。
姿、一瞬で成長って、一目瞭然すぎるからかびっくりよ。
『やはり、エターナルの核の輝きが増している』
『本当だ。これなら、付随してできた瘴気に振り回されることはないだろう』
え、本当?
ってことは、本当にこれでもって、瘴気問題解決!?
わたしたちは仲間と目を合わせる。
やったーーーーーーーーー!!!!!