作品タイトル不明
第1339話 創ったものと創られたもの⑥優しい終わらせ方
子供たちにお花をあげた。
お花を見ることもあまりなかったみたいで、はしゃぐこと。
それで慌てて、ロサたちがもっとお花をとりに集落の外に探しに行ったりした。
「今日はいい日だったなぁ」
誰かの言った言葉に泣きそうになる。
「結婚式、素敵だった!」
簡素なものだったけど女の子たちの胸を打つものだったようで、ちょっと嬉しい。
ノエルや兄さまに通訳すると、ノエルが女の子たちの肩を叩く。
そして……。
さっきの結婚式の映像をノエルは見せた。
驚き、そして感動して……。
自分を見つけて喜んでいる。鏡を見たことはあるけれど、動いてるって。
大人たちも集まってきて、映像に歓声を上げた。
フクロウがわたしたちのそばにやってきた。
悠から寄ってきたのは初めて。
『あんなに喜んでいる……。我は何もしてきてやらなんだ……』
沸き立ってる人々を見る。
「よく見てください。あんなに嬉しそうで、幸せそうじゃないですか。
そういう今までを導いたのは、間違いなくあなたです」
女の子たちが「ジョギさま〜!」と駆け寄ってくる。
後ろに隠していたものをジョギさまに差し出した。
小さな花冠だ。向こうでルシオがこちらを見ている。
ルシオが作り方を教えてあげたんだね。
女の子たちは許しを得てから、冠をフクロウの頭に被せた。
「ジョギさま、いつもありがとうございます!
私たちが穏やかに過ごせるのはジョギさまのおかげです」
フクロウは子供たちの言い方を真似た。
『……ありがとう』
ジョギさまがそう言えば、女の子たちは大喜び。
ルシオにもらってもらえたと報告するためか、また走っていく。
『感謝するのは我の方なのに……』
「命は寿命を終えると輪廻の川を流れ、また新たな生を始めます。
きっとこの子たちの元の魂は、どこかで生を始めているでしょう」
『そうなの、か……?』
「第一大陸、足元にはもう何百年も前からベクリーヌという国が建ち、多くの人が暮らしています。もう共存しています」
フクロウが顔を上げた。
「ここで足踏みして止まっているのは、悠さまだけです」
『転生している、か……』
「ええ、きっと。思いの一部である彼らも還しましょう、ちゃんと」
フクロウがうなずいたとき、ひと雫が目から落ちる。雫は撥水加工されたような羽の上を滑って落ちた。
わたしたちはそれからも人々と遊んだ。みんなも言葉がわからないながらも身振りでなんとかコンタクトを取っている。日が暮れて夕方になる。
集落の人たちがジョギさまに再び感謝した。
「今日はジョギさまの近くにいられて嬉しかったです」
「いい日でした」
「あのねー、ジョギさま。自分が動いているのを初めて見た!」
報告と感謝をしては、みんな自分の家へと帰っていった。家族で肩を寄せ、仲良く。最後に繋ぎ役の人が残った。
「ジョギさま、私はジョギさまと皆を繋ぐ役目を任され、とても光栄で、そしてずっと見守ってくださるジョギさまに心から感謝をしております。
ジョギさま、私は役目を果たせておりましたでしょうか?」
『あたりまえだ。繋ぎ役はお前以外にあり得ん。
いつもご苦労。だが、初めてだな、お前からそんなことを聞かれたのは』
繋ぎの人はまっすぐ、ジョギさまをみつめる。
「年なのか、覚えていようと思っていても、それが何のことだったのか覚えておらんのです。ああ、でもだからといって生活するのに不都合なことがあるわけではありません。ですから、まだまだお役目は果たせます!
一度おうかがいしたかったのです。私が役目を果たせているか。
ああ、今日のことは忘れたくないなー。ジョギさまから思いもよらない言葉をいただき、そしてこんなにいっぱい話すことができた。
外からの客人と言葉が通じなくても、楽しく過ごした。
何より、私たちがどんなに感謝しているか、少しでも伝えることができた!
ジョギさま、いつもありがとうございます。どんなに感謝してもしきれません。
不安しかなかった我らに、安全な住処を作ってくださった。そして毎日聞いてくださる。困ったことはないか、と。
ジョギさまにお会いすることができて、本当によかった。何度生まれ変わってもジョギさまのおそばにいたいです」
それではと深々と頭を下げて、そして大股で急いだ。少し先で待っていた奥さんと子供に追いつき、子供を抱き上げる。そして奥さんと一緒に歩き出した。
ジョギさまは黙ってその後ろ姿を見ていた。
優しく終わらせて。ジョギさまはその願いを叶えつつ、看取っていった。
煙のあがった家々は夕闇とともに静かになっていく。
ひとつ、ひとつと、家の中のほのかな灯りが消える。
悠はその灯りひとつひとつに「ありがとう」とか「また会おう」と言葉をかけながら、家ごと消していった。
やがて最後の家の灯りが消えて、悠は最後の家を消した。
きっと今日はいい日だったと思いながら眠りにつき、そのまま消えたのだと思う。
集落にはご神木しかなくなった。
『ジョギよ、今までありがとう』
子供の声が聞こえる。
『悠さまにお仕えできてよかったです。私は使い魔。この地に眠り、全てが終わり悠さまがこちらにいらっしゃるまでここを守ります』
フクロウはいつもの声でそう言ってから、わたしたちにぺこりとした。
そして……ウロに帰るのではなく、そのまま土の中に沈んでいった。
フクロウの姿は使い魔の一面だったようだ。
「悠さま、こちらにお入りいただけますか? 精霊さまたちの棲み家にお連れします」
『うむ』
子供の声で返答がある。
使い魔はもういないからか、頭の中に声が響いてきた。
希望の小箱を開ける。
洋風な服を着て、天女の羽衣のようなものを羽織った小さな男の子は、スッと小箱に入った。透けて見える。
『入ったぞ、頼む』
「では、閉めます」
小箱を閉めた。
暴走することなく悠を小箱に移すことができた。
ん? 空気が……。
「これでひと安心だな」
『気をつけろ!』
もふさまが吠えた瞬間、土の中からとんでもない大きな魔物。
へ、へび系〜。
あ。瘴気が……。そうだ。悠を小箱に入れたってことは、悠の結界がなくなるわけで……。
「ノエル、リディアを連れて転移しろ!」
兄さまが叫んだ時、上から鳥系の魔物がひゅんと飛んできて、避けたらノエルから遠くなってしまった。