作品タイトル不明
第1329話 精霊と会議④本心
協力はありがたい。
それに……あそこをあのままにしておいていいのかとも、思っているのは事実だ。
けど、あれなー。
第一大陸、おへそ周辺。かなり 歪(いびつ) なことになってる気がするんだよなー。
それになんだか怖いし。哀しいことに行き着くような気がヒシヒシと。
「ねぇリディー。リディーはあの集落やあの森で、何が起こっているかわかったの?」
「……わかっているわけじゃない。でも…………もう生きてない何かって気がしてる」
そう告白すれば、精霊さまたちも推し黙る。
「どうしてそう思ったんだい?」
ロサの首が傾いでる。
レオたちもわたしの周りに集まってきた。
「生活臭がしなかったのと……。夜だけ強くなる魔物。昼間は人懐っこい魔物。いつからそうだったと思う?」
「高齢の方はいなかったけれど、親の世代はいたんだよな? 親の世代が子供の頃にはもうそうで、見回りとかしてたんじゃないか?」
ブライは腰のところに手をやりながら言う。
「ベクリーヌと物々交換してたみたいだけど、ベクリーヌではそんな話聞かなかった」
「そりゃ全部聞いたわけじゃないから」
ダニエルが軽く受け流す。
「腰蓑の集団だよ? グレナン語を話すんだよ? ベクリーヌは祖先がグレナンだと隠してきたんだよ?」
そう言うと思い出したみたいで、ハッとしている。
ベクリーヌは閉ざされた地だったため、他の大陸がグレナン民のことをどれくらい知っているとわからずにいた。だから現在もグレナン民が祖先だとは秘匿するべきことと思っていた。
そんな人たちがグレナン語を話す瘴気の森に住む人たちと取り引きをしただろうか? 昔ならあったかもしれないけど……。
「ノエルが見つけたんだけど、集落の灯りの魔具はひと昔前のものだった。あまり明るくないの。ベクリーヌの人が彼らは何も知らないからって、そんなものを渡しているのかと嫌な気持ちにもなったけど。改めて考えれば、そんな骨董品残っているかの方が疑問」
「……それってみんな実は死んでるってこと?」
ルシオが恐る恐る、でも的確なことを言った。
「亡くなった方が蘇ってるとかじゃなくて……。幻影みたいなものなんじゃないかと思う。悠さまの力が強いから、話すことも触ることも意思を持ってるようにも見えるけど、本当は悠さまの過去に見たことのある風景なのかもしれないし、夢なのかもしれない」
「……そんな。だってそれはかなり広い範囲なんだろう?」
イザークは信じがたいみたいだ。
「あのね、収納袋の中を見たの」
それが?という感じにみんな不思議そうな顔だ。
「わたしたち、森の中で倒した魔物を収納したの。でもそれが無くなってるの。兄さま、兄さまの収納袋の中も見て?」
「……ない」
兄さまは取り出した収納袋のリストアップを見て、ショックを受けている。
『本当にないのか? そんなぁ。確かに倒して入れたのに!』
「なんでないでちか!?」
『魔物もなの?』
『でもエリン怪我した!』
レオもアオもアリもクイも騒ぎ出す。
「あの周辺のおかしな魔物はそうだと思う。無意識に悠さまが動かしてる。だから怪我を与えられもする。倒されもする。
怪我したエリンに光魔法はきかなかった。もとは瘴気、だから聖力で癒すことができたんじゃないかと思う」
静けさが舞い降りた。
「第一大陸、全部ではない?」
兄さまが紡ぎ出した言葉にわたしはうなずく。
「おへそ周辺だと思う」
『おへそとは?』
精霊さまに言っていいか迷う。大陸の形を言ったらわかっちゃうと思ったけど、第一大陸とかベクリーヌとか思いきり言ってたわ、わたしたち。
「居場所がわかったと思いますが、条件を達成できるまで行かないでくださいね」
思わず念押ししてしまう。
『? 何を言っておる? 我らは悠の意見を尊重するし、そううぬらと約束している。約束を違えることはない』
『リディアよ。神、聖霊、神獣、聖獣、そして精霊。我らは本心しか語る必要はない。魔物も然り』
もふさまにそう言われて納得する。そうだ、嘘をついたり、出し抜こうとする、そういう意識があるのは人族だけなんだ。
神も聖霊も神獣も聖獣も、そして精霊と魔物。彼らの言うことは《《すべて》》本心なんだ。
そういえば精霊はわたしたちの問いかけに、それは言えないとか、はっきり教えてくれてた。濁したり誤魔化したりすることはせずに。
何か思いかけたけれど、今はそのことについて考える時じゃないと思い、軽く目をつむる。頭の中で軌道修正。
「第一大陸は人族の胎児が母親のお腹の中にいるときの形とよく似ています。
そのおへそのあたり、そこは瘴気の森と呼ばれるところで、その中に集落はありました。
悠さまの力が大きく出ているのは、そのおへそ周辺だと思われます」
悠さまがコンタクトを取れるのはへそ周辺。そこが瘴気の森と集落にあたる。瘴気が濃くなるのはそこだから、ベクリーヌのある南は免れていたんだと思う。
わたしはそれをつけ足した。
『どうして……そんなことになっているのだ……』
「わたしは絶望を通り過ぎていると思われている悠さまは、絶望の中にいるように思ました」
だからこそ、絶望から抜け出せると信じたいのだけど。
『人族の娘よ。そなたが推測していることを、包み隠さず、教えてくれないだろうか?』
みんなの視線が集まり、わたしはあくまで感じたことからの推測だと前置きしてから、話し始めた。