軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1328話 精霊と会議③神憑き

『我の一部が捕えられたときのことを話そう。

だが、話せることは少ない。その一部はとても恐ろしく怖かったようで、記憶がとんでいたからだ。我の中に戻ってきたとき、ところどころのことしか覚えてなかった』

「では辛い記憶も覚えてなかったのですね」

少しホッとしたように、ルシオが優しくいう。

『……そのようだ。うぬらが一部を助けてくれた。

順序が逆かも知れぬが、その時の話をしてもらえぬだろうか?』

わたしたちは顔を見合わせた。

「バッカスという組織を探っていました」

『バッカス?』

精霊たちは聞いたことのある名という顔をした。

わたしたちが言っていたからかもしれないけど。

「その組織が持っていた厄介な〝玉〟や魔石のことを知りたくて、その施設に忍び込みました」

わたしと兄さま、ロサとイザークで概要を説明した。

探っているうちに〝現象〟を入れ込む〝玉〟を作るための施設ではないかと思えた。

その玉を作るためにドラゴンが〝使用〟されていたこと。

そして聖力と神力をこめるために水の精霊さまを捕えて、その水源に浸かっていたことを。

そこまで話して気づく。ドラゴンで瘴気を補っていたけれど、……これなんで悠から取らなかったんだろう?

悠とはコンタクトをとっていたんだから。ん? 一部ではないから連れてこられなかったとかなのかな?

水の精霊以外は、またここでの非道な扱いに怒りが爆発しそうだ。

『我らはオードゥースのことも探したが、見つけることは叶わなかった。特別な結界があったのだろうか?』

「そうですね、もふさまでも探れないぐらいに遮断する扉を使っていたから」

そういえば、ホルクが教えてくれた。あの弁護士もどきには高位の何かが憑いていると。今思えばあれが疫病神だという気がする。

神さまなら、世界の理を知っている分、有利に働くはずだし、精霊にも気づかれないような何か細工もできそうだ。

『そうだったのだな。改めて礼を申し上げる。感謝する。うぬらに救い出されなければ、聖力も神力も枯れていたかもしれない』

オードゥースさまはわたしたちに微笑んだ。

恐らく100年以上だもんね。水の精霊を見つけてよかった。そして元気になられて本当によかった。

『我は明け方の雫が好きだ。我の一部も朝露を求め世界中を飛びまわっている』

草や花、葉っぱに溜まる雫を食べたり、水浴びしたり、集めたり。

一部である水の精霊の一体がそうやって遊んでいると、急に声をかけられた。

人族に見えたそうだ。

たまに精霊が見える人族はいる。崇めたりなんなりしてくるけれど、基本的に人族は欲深い。最初は崇めていても、気を許すと捕えて見せ物にしようとしたり、そういう輩もいた。だから返事をしなかった。返事をしなければ、人族と精霊は繋がらない。たとえ見ることができたとしても、触れることができないそうだ。

水の精霊は気にせず朝露で遊んでいると、男は言った。

「悠と会いたくないかい?」

『悠を知ってるの?』

思わず問いかけてしまい、その男と繋がってしまった。

男は笑って水の精霊をむんずとつかんだ。

そこから、時々意識が浮上したものの、よくわからなくなり、弱っていった。

オードゥースさまはそう静かに話して、大した情報にならなくてすまないとわたしたちに謝った。

疫病神がついた誰かに捕えられたんだね。

悠と会いたくないかとエサを撒いた。

そっか。精霊を見ることができても精霊が応えないと、繋がらないんだ。

そうか、だから水玉の中にいた精霊は話さなかったのかな?

ん? いや、話しかけたけど、わたしたちが言葉をわからなかったと言ってた。

あの子はわたしたちと繋がろうとしてくれたのかな?

「この空間には呼ばれなければ人族は来れませんよね?」

ダニエルが切り込む。

光と闇のおふたりが顔を合わせて、そのはずだと答えてくれた。

けれど、神であるなら、神の力で入ってくることは可能だろうと思うようだ。

「神さまとも精霊さまが答えなければ繋がらないですか?」

ルシオも尋ねる。

『いや、我らは神と聖霊の子ゆえ、神とは元から繋がっている』

「それなら水の精霊さまを捕えたのは、疫病神が憑いていたとしてもやはり人族ですね」

イザークがため息をついた。

「でも、悠さまに話しかけているのは疫病神なんだよな?」

ブライに聞かれて、わたしはうなずく。多分だけど。

なんかそこに鍵がありそうな気がするんだけど、思いつけない。

『ねぇ、悠は絶望するふりをしているだけで、元気なのよね?』

星の精霊エトワーさまは胸の前で祈るように手を組んでいた。

わたしは兄さまと顔を合わせる。

「……危ない状態だと思います」

皆さまが息をのむ。

『ど、どういうことだ?』

「悠さまはわたしたちに助けを求めてきました。もうそれが危ういと思います。

今の状態は、悠さまにとってギリギリだと、わたしは思っています」

『うぬらと約束した瘴気をなんとかすることだが、悠が自我を無くしたらどうにもできなくなる……』

光のレイヨンさまが焦ったように声を上げた。

『どういう状態なのだ? 悠の条件を達成することを考えるが、すぐには思いつきそうもない。その間に悠の状態が悪くなってしまったら最悪のこととなる』

闇のオンブルさまもたたみかけてくる。

『我らは達成できる何かを考える。うぬらは悠の危機を救ってもらえないだろうか?』

再びレイヨンさま。

『都合のいいことばかり言っているのはわかっている。けれど、我らは助けに行くことも叶わない。……でもなんでも協力する』

『協力する!』

他の精霊さまたちも口々にそう言って、祈るように手を組み、わたしたちに望みを託すように見た。