作品タイトル不明
第1293話 13番目を探せ⑦エリンの強さ
『リー倒したよ!』
「ありがとう」
わたしは恐る恐る魔物に近寄る。
そして聖力を当ててみた。
みんな息をのむ。
目の前の魔物はサイズダウンをし、近くで見ると深緑の体に毒々しい赤い斑点があった。それがなくなっていったのだ。
「姉さま、何したの?」
「聖力を込めてみたの」
「「「聖力!?」」」
いい反応。
「あの赤いのは聖力で消える何かだったってこと?」
「そうだと思う。でも検証したいから、あと2頭ぐらい魔物を倒してもらえる?」
『では、一頭は我が倒そう』
もふさまはうずうずしていたみたいだ。
「お願い。その時に、普通の魔物と違いがないか気にしてもらえたら嬉しい!」
『あい、わかった』
それを聞いたアリとクイが早速真似をする。
『あい、わかったー』
『わかった、あいー』
と元気に言って、もふさまともふもふ軍団は走って行った。
クイ、それは違うから……。
双子は眠そうだ。
「テントに戻る?」
尋ねると首を横に振った。
「姉さまを守る」
もふさまともふもふ軍団が不在だからね。
「それにしても夜になると瘴気が薄れるとはどういうことだろうね?」
兄さまの疑問はもっともだとうなずく。
第一大陸の瘴気の圧迫感はすごくて、それは夜も同じだろうと思った。
だからそんなところで眠る気にはなれず、わたしはルームで眠っている。
明け方帰った時は、瘴気がきつかったのを覚えている。
だからてっきり瘴気量はいつも同じだと思っていたのだ。
「そういえば姉さま、瘴気の研究結果は読んだの?」
エリンに聞かれて、少しためらう。
「途中までね。書き込まれていることが難しいし。瘴気のというより、赤い石のことを研究しているみたいだった」
それで難しかったものだから、ノートを閉じてしまって……忘れてた。
「そういえば、私たちが行った方向には赤い木はなかったな」
と兄さまがいえば、エリンの眉間にシワがよる。記憶をたぐり寄せているのだろう。
「赤い木はなかったけど、赤い花は咲いてた」
「そうだった?」
エリンは兄さまにうなずく。
「こっちは朱色のイガイガが来たよ」
「朱色のイガイガ?」
「うん。これくらいのまあるい朱色の生き物で。ところどころツンツンとんがってるの。ね?」
ノエルに話を振ればノエルもうなずく。
「もふさまにくっつくから、それをとって放り投げたら、遊んでもらってると思ったみたいで、やってくれってばかりに手に登ってきてね」
「へー。生き物なの?」
「うん、魔物だと思うけど。敵意はなかった」
「昼の森の中と一緒だな」
兄さまが腕を組む。
「夜行性の魔物が凶暴、だけじゃなさそうだよね?」
「あ!」
エリンが大きな声をあげる。
「どうしたの?」
「危険な森があって住みにくいのに、教会の人は長くそこに住んでたんでしょ? 街に入れば安全なのかな?」
「神官って案外強かったよ。それで厳しい地でも住めるのかもよ」
と言いながら、あのでっぷりとしたトップを思い出して、ウヘぇと思う。
あれで強いの? なんか納得したくないわー。自分で言っておいてなんだけど。
音が聞こえた気がした。
みんなもそうみたいで、顔を上げて緊張している。
その音はやがて大地を揺らし。つまり、大地が揺れるほど大きなものが近づいてきてる? と。シーンと静けさが舞い降りた。
兄さまに引き寄せられ、口を手で塞がれた。わたしと兄さまの前に双子が出た。
わたしは自分が見たものを信じられない。
だって、それはまるで〝影〟だ。実体のない影。
闇と同じ色の真っ黒の触手みたいのがわたしたちに向かって伸びてきていた。
エリンとノエルは動かなかった。剣を使わない。
そう、だってそれには実体がないってことは見てわかるのだから。
真っ黒のそれはぶっとい伸ばした触手を振り回して、わたしたちをすり抜ける。
何かの影がすり抜けるだけだから、何も感じはしない。
ただ、シンプルに気味が悪い。
散々触手が動き回ったけれど、木々もわたしたちにも実際触れることなく、唐突に消え。そして恐ろしい大地を揺らすほどの何かが遠のいていく。
わたしたちは顔を見合わせて息を吐き出した。
「な、なんだったんだろう?」
「あれが悠だったりして」
兄さまの一言にわたしたちは固まった。
確かに大きい→当てはまる。
すり抜ける→精霊の一部も実体のない子もいた。
「あれと話をするの?」
エリンが困惑顔だ。
「そうだ。精霊たちは探してどうしろって? 悠を連れていくの?」
わたしは兄さまに首を振る。
「探して伝えるつもりだし、探してとしか言われてないよ」
兄さまはちょっとほっとしてる。
「とにかく悠だとわかったら、そこからは精霊の仕事になるわけだね」
「ええ」
「キエーーーーーーーー」
え? 音のした方に目をやれば。
い、いやーーーー。ワニサイズのオレンジ色のカメレオンみたなやつ!
「あ、おじさま、これ昼間の……」
「私も似てると思っていたところだ」
そんな悠長な会話をしてるところじゃないんじゃない?
と思ったけど。
ノエルが風魔法で上にあげ、魔法を止める。
重力に従って魔物はすごい音をたて地面に落ちた。
喉元狙ってエリンがレイピアを放ったけど、スンデのところで避けられた。
兄さまが剣を振い片手を切り落とし、エリンが息の根を……。
エリンはレイピアについた血を横にあった葉っぱをブチっととって拭きながらいう。
「昼間ひとまわり小さなこの子にあった。とても人懐っこかったのに……」
そう思っても危険を感じたら容赦無く剣を振るえる。それがエリンの強さだ。