作品タイトル不明
第1292話 13番目を探せ⑥夜の森
日が暮れて食事の用意をしていると、みんなが帰ってきた。
ハンナが作ってくれた特製弁当に、スープを拵えたところだった。
怪我もしていないし、疲れもそこまで見えない。
ほっとする。
みんなにクリーンをかけてから、ご飯だ。
食べながら森の様子を話してもらう。
危険と聞いていたから最初は慎重にしていたけれど、魔物が襲いかかってくることはないので、かなりのスピードで移動できたそう。
頭の方まで行けたそうだけど、別に何も変化があるところはなかった。
胸への圧迫感はあるけれど、森のどこでもそれは同じ。
ただ危険な森と呼ばれているところなので、夜は絶対に森から出るよう約束していたのだ。向かう先もちょうど2ヶ所。反対方向なので、一旦森から出たところを拠点とした。
ノエルの第一大陸転移場は街の外れ。
そこから人に会わないように森の方へやってきてテントを張った。
夜はここで休み、明日またおへその方へチャレンジするとのことだ。
わたしは眠る時はルームを作りそこで眠ることにした。ルーム作りなどはそこまで魔力は使わないけれど、戻してもらっているのは1000のみ。だからみんなはテントで、わたしはもふさまとルームに行き、虫をテイムして、何かあったら知らせてもらうようにした。
掃除機が有能だったことは分かったけれど、やはり瘴気あふれるところで眠るのは怖かったから。
ちなみにアオの力を借りて魔力玉も作ってある。わたしの魔力を込めたのと同じだけど、アオにわたしの魔力を込めてもらったもの。
アオと離れているときに、魔力が緊急でいるときはこの玉を使う。
みんなにごめんなさいをして、ベッドがあるだけのルームにもふさまと。
もふさまに埋もれて目を閉じれば、どこでも安心して眠れる。
ふと、髪が引っ張られている気がして目が覚めた。もふさまも同時に目を開けた。
あ、虫がわたしの髪を引っ張っていた。
「何かあった?」
歯だか口をカタカタと鳴らす。伝えたいことがあるみたいだけど、何を言ってるかはわからない。
わたしは虫にお礼を言って、もふさまとうなずきあう。そしてテントの中に戻った。
みんな起きていて、窓のところに張りついていた。
「どうしたの、何かあった?」
「魔物が歩き回ってる」
え?
窓を覗き込む。
子供ぐらいの大きさの鳥型の魔物がテントの方を見ていた。
テントには路傍の石→路地裏の猫→夜道の鷹と進化した認知されにくくなる魔法をかけてあるから、気がつかれないとは思うけど……。夜道の鷹まで進化したら魔物にも効いた。だから平気だと思ったんだけど。
いや、魔物の鳥は明らかにテントを窺っていた。
皆が一斉に武器を持つ。
するとその人の子供サイズの鳥の魔物を、もっと大きな鳥の足がガシッとつかんでブワッと上に連れ去られたと思ったら、恐竜みたいな何かが、大きな鳥を横からパクッとして、ギャーーーーという鳴き声とともに赤い血飛沫が!
ひっ。悲鳴をあげそうになったのを後ろから手が伸びてきて、兄さまに口を塞がれる。恐竜みたいのはその場で鳥っぽい何かを食い散らかし、目をギョロギョロさせ次の獲物を狙っている。防音してあるはずだけどっ。これは怖い。
あ、走ってった。地が揺れる。
「これが暮らせないと言われた危険だという理由か」
兄さまがしみじみと言った。
「夜は危険な森ってこと?」
エリンは眠そうだ。
「危険な魔物は夜行性なのかな?」
ノエルも大あくび。
「ちょっと外の様子を見てくる」
「兄さま、危険よ」
「無理はしないよ。昼と様子が違いすぎる。少し見てくるだけだ」
『私も行く!』
『行く!』
もふもふ軍団が名乗りを上げる。
窓から近くに何もいないのを確かめて、テントを開ける。
その時気づいた。
「あれ、瘴気がそうでもない」
「え?」
わたしは思わずテントから出た。
ほら、大丈夫。
「なんで? 瘴気が普通レベルになってるよ」
「……何か理由がありそうだね」
「わたしも一緒に行く」
「何言ってるんだ?」
「瘴気がないなら、わたしは大丈夫よ」
いい、ダメを繰り返し、みんなで森の中に入ってみることにした。
照明の達人のわたしがいるから、夜でもみんなに不自由なく歩けるぐらいの灯りを提供できる。
魔物が寄ってきたら灯りを消すつもりだけど。
「姉さま、本当に大丈夫?」
「うん、普通レベルよ、この瘴気なら」
森の中は静かだった。
さっきだけだったのかな、魔物が活性化していたのは?
「リディー、灯りを緩めて」
わたしは彩度を落とす。
四つ足の魔物だ。恐ろしい咆哮をあげた。
「音で距離を測ってるでち」
アオが小さな声で教えてくれる。
じゃあ、よく見えてないってことね。
『倒す?』
クイに聞かれる。
「無理なく倒せるならお願いしていい?」
もふもふ軍団たちの目が輝く。
何やらみんなで相談してフォーメーションを決めたみたいだ。四方に散る。
もふさまの毛並みはいつもスベスベ。緊張してくるのをそんないつもの仕草でやり過ごす。
ベアが魔物の足元に何かを投げた。木の枝かなんかかな?
魔物は咆哮を上げる。
その声に驚いたように、クイが「ギャっギャっ」と何かの鳴き声を真似た。
魔物はそちらに一目散。
クイを見つけると前足を上にあげて二本足で立ち上がる。
で、でかい!
クイの雷がその二本足に当てられる。
ギャーーーーと恐ろしい声をあげた。
『うるさい!』
アリがそう言ったかと思ったら、氷をその魔物の口の中にお見舞いしてる。
あ、あれも辛いかも。
レオが息が詰まっている魔物の背中を飛び蹴りして、ベアはその顔に蹴りを入れた。
見事なチームプレー。
静かな森で派手な音をたて、魔物は倒れた。