軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1291話 13番目を探せ⑤イガイガ

ギュッとしていると、少しずつノエルの気持ちが上向きになってきたのを感じる。

赤ちゃんの時から見てるからねー。

二人はほんと赤ちゃんの時からわたしを慕ってくれてた。

わたしも小さかったから、もっと力もなかった。

わたしが何かするより、大人や兄さまたちがお世話する方が赤ちゃんとしても断然居心地がいいだろうに、わたしに懐いてくれて。

わたしは抱きつかれると動けなくなっちゃうから、ほんとそのまま3人でお昼寝してしまうことも多かった。お世話したというより、ただ一緒にいたっていう方が正しいね。

ふたりは赤ちゃんでも魔法をすでに使っていた。オシメとか飛んできた。だから世話といってもして欲しいことがわかるから、とても楽だった。

そうそう、5歳で魔を通す儀式をしないと魔力が通らないと言われているけど、あれも眉唾かなーと思っている。

エリンとノエルはちょっと破格だけど、でも人族なことには変わりないと思う。けれど0歳の時から魔法を身体を動かすように使っていた。

わたしもさ、儀式を通して魔力を理解したけど、祝印したこととか 鑑(かんが) みるに、5歳前から魔力は漏れていたと思うんだよね。

それに5歳の儀式前から魔法を使える子はちらほらいるって聞くし。現に兄さまもそうだったみたいだ。

儀式は魔力をより実感するための何かであることは間違いないけど、後出しの何かでないかと考える。身体がしっかりしないうちに魔力を使うとよくないから、そういう風習にしてきた、とかね。だって身体の中には最初から魔力があるんだから、それをさ、5歳で区切って神父さんが身体の外からコンコンとノックして、魔力が目覚めるってのも……。納得してきたけど、身体の中には最初からあるのよね。

瘴気のこと、精霊との話でもっとわかればよかったんだけどなー。

人は瘴気を生まれ持つ。これは玉を作り出したときに導き出した結論。

聖力、神力、魔力、瘴気、これが同量のとき原子は動かず安定し、ゆえに中になんでも包み込める膜となる。そう理解していたんだけど。

悠が地上に降りてきて瘴気になり、瘴気が生まれたのなら。それより前から人族は存在しているから、理論が破綻しちゃう。

「姉さま、ありがとう」

「ん? どういたしまして」

と、フォンから着信。

「あ、兄さまからだ」

わたしはノエルともふさまに告げて、フォンをスピーカーにする。

「リディー、そっちは変わりないかい?」

「テントの中だもの、何もないわ。こっちは大丈夫?

そっちは? 大丈夫?」

「姉さま、ここは魔物が面白いわ!」

「魔物が面白い?」

「初めて見るものばかりだし。人懐っこいわ」

人懐っこい魔物?

「森の中に入れば次々と魔物に遭遇したけれど、みな興味深そうにこちらを見て、匂いを嗅がれたりしたよ。でも攻撃はしてこないんだ」

「瘴気の量はわからないけれど、森の中に入ってしまえば穏やかな森に感じたわ」

「地図でいうところの頭の方にまず向かってみるつもりだ」

「わかった。気をつけてね」

「そっちも」

へー、不思議なもんだね。

「無事でよかったね」

ノエルが笑う。

「ええ、本当に」

もふさまがいきなり顔を上げた。

「どしたの?」

『気配がする』

気配?

トンとテントに何か当たったような音がした。

わたしたちは顔を見合わせ、テントの窓からそっと外を見た。

ん? 視線をずっと下にしていく。

な、なんか蠢いている。下の方で。

朱色っぽい……イガイガの形。なんていうの、金平糖みたいにところどころツノが立ってるんだけど本体はまあるい。それがバレーボールサイズ。それがわらわら。

「な、な、なんだろう?」

『魔物の気配だが、少し違う何かも混ざっているな』

もふさまの尻尾が揺れる。

『よし、我が出よう。リディアとノエルは中にいろ』

もふさまが出入り口にしているところを潜って出ていく。

わたしとノエルは窓から外を見ようとした。

『リディア、助けてくれ』

え?

もふさまがわたしに助けを?

わたしが出て行こうとすると、その服の裾をノエルが掴む。

「待って、僕が行く」

気持ちは嬉しいけど、強いとわかっていても弟をひとりで送り出す気にもなれず。

ノエルの手をつかむ。

「一緒に行こう」

ノエルはうなずいて、わたしの手を後ろ手でつかみ直し、先にテントをくぐる。

と。

ライオンサイズもふさまが、朱色のイガイガに張りつかれていた。

草はらを歩いて服とかにつく草の実のように。

『リディア、取ってくれ』

もふさまが情けない顔をする。

生き物だ。近づいたわたしに目を向ける。

「イガイガ」

「イガガ」

この子たちの鳴き声なのかな?

そっともふさまから外す。ペタペタしているわけではなさそう。

ノエルも反対側に回る。足元にめっちゃいるイガイガを踏まないようにして。

そして取っては後ろに投げる。

わたしも倣って軽く放った。

すると、楽しかったようで、今度はわたしたちめがけてやってきて、手の中に入ってくる。

捨てると大喜びで戻ってくる……。

それもわらわらと。

第一大陸は厳しい地。

相変わらず空は今にも雨が降り出しそうにどんよりして見えるし、瘴気が多い。湿気もすごくてムアッとしている。

危険な森には人は住めない……そう聞いて納得してたんだけど、森の中も、ここも、そこまで危険ではないような? 気のせい?

だってこのイガイガ明らかに懐いて遊んでいる。

魔物なのか疑っちゃうくらい。

何がどう危険な地なのか、ちゃんと聞いておくんだった。

このときわたしは、そのことをのんびり後悔していたんだけど。

もっと後から、本気で後悔することになる。