作品タイトル不明
第1290話 13番目を探せ④繊細
第一大陸。やはり、ゾワゾワする。
とりあえず森に入る前のところでテントを立てた。
そこで新しく作った魔具を発動させる。
「どう、姉さま?」
息がしやすくなっていく。
「成功しているみたい!」
「うわー、やったね!」
とノエルが喜んでくれた。
「でも顔色が良くないよ。リディー、やっぱり……」
「うん、わたしは森の中は無理かもしれない。
でもこのテントの中なら大丈夫だし。
エリンとノエルの言ってたことを検証することができるわ」
「それはそうだけど……」
新しい魔具。原理は掃除機だ。
瘴気を吸い取り、玉の中に入れる。玉に入れる時に1000分の1になるようにしているけど、ここにいる間、何個の玉を作るかが見ものだ。
悠と交信できるその場所は、見習い神と同じ頭のところか、胎児の姿勢だけにおへそのところかと思っている。どちらもちょうど瘴気の森だ。
赤い石の育つ、瘴気の森。怖いもの見たさなのか、一度は森の中を見てみたいと思うのに、胸に迫ってくる何かがあって、これ以上森に近づくのは無理そうだ。
絶対わたしが行かなくちゃだったのが和らいだのは、エリンたちの何気ない話からだった。
「瘴気が溢れる世界になると6分の1しか生き残らないって変だよね?
瘴気を抱える魔物も6分の1しか生き残れないの?」
そういえば……。瘴気を身に宿し、屠ることで瘴気をなくしてく。瘴気に強そうなのに、瘴気に覆われた世界になった時、生き物は全体の6分の1になるという。
魔物も瘴気にやられちゃうわけ?
っていうことは……。
わたしは瘴気が特別苦手だから鼻が効く。
魔物は鼻が効くけど、瘴気は特別に苦手ではない。
でもここは第一大陸、その元祖大元が眠る地であり、相当の瘴気量があるとしたら? 苦手ではなくても、人族より敏感だと思うんだよね。
だから瘴気がより強くなっているところとかは流石にわかるんじゃないかって思ったわけよ。行ってみてもらって、ダメだったらまた考えるけど。
もふさまとノエルはわたしのそばに残ってくれる。
もふさまは強いし、ノエルはいざという時、家に転移できるからだ。
兄さまと一緒にってちょっと浮かれたけど、まったく別のことになっちゃった。
まぁ、一番の読み間違いは、瘴気にわたしが耐えられなさそうだから、なんだけど。
いくら強いもふもふ軍団がいるからといっても、瘴気の森にエリンとノエルもふもふ軍団に行かせるわけもいかないので、兄さまは探索班でわたしは待機だ。
みんなを送り出して、テントの中で一服。
ご、ごめんね、みんな。みんなには働かせて、わたしはこんなのんびりしててさ。言い出しっぺなのに。
「姉さま、辛い?」
「え、そんなことないよ?」
「浮かない顔してる」
「ああ。言い出しっぺなのに、みんなに動いてもらって、わたしはここでのんびりしているんだもん、悪くって」
「なんだ、そんなこと?」
そんなことじゃないんだよ、ノエルくん。
「姉さまは指示してくれればいいんだよ。指示だけして待っていてくれれば。
それでこそ女王さまだよ」
「じょ、女王さま、目指してないから……」
ノエルは首をかしげる。
「えー、目指さないの?」
「あのねーノエル……」
「僕、姉さまは女王さま、向いているよ思うよ」
もふさまが「わふっ」と吹き出した。
「女王さまっていうのはね、なろうと思ってなるものでもないのよ?」
ジトっと見ても、ノエルはきょとんとしている。
「なりたいなら、僕がならせてあげるよ」
いや、そうじゃなくてね……。
「姉さまはいつも優しいよね?」
その目がなんか気になった。
「わたしは特に優しくなんかはないけど。どうしたの? 何かあった?」
「僕は家族が酷い目にあったとしたら、許さないよ。
みんな許さないといっても、すぐ許しちゃうでしょ?
でも僕は……昨日もみんな変な顔するから強くは言わなかったけど。
エリンか誰かが追放になったら、そんなこと言った人たちをどうにかしてもいいし。
他の国を落としてもいいと言ったのは本気だよ?」
ノエルはわたしの目を覗き込む。
「僕は本気だけど、姉さまがそういう顔をするから。
よくないって思ってるってことだよね?
僕が姉さまたちと考えが違うのは、僕の核が魔物だったからかな?」
ノエルは淋しそうな目をしていた。
わたしはノエルをふわりと抱き込む。
「そっか、ノエルはそういうふうに考えていたのね」
なんて伝えればいいのかなーと考える。
「あのね、考えることってみんな違うの。本当に驚くぐらいみんな思うことって違うのよ」
「そうかな?」
「うん。だからね、みんな同じだったとき嬉しいの」
「……それはちょっとわかる」
「ノエルはノエルの気持ちを大切にしていいの。
そしてノエルが感じたのは〝違い〟ではなくて、経験の差ね」
「経験の差?」
「わたしも小さい頃、家族しか大切じゃなかった。家族が全てだった。でもね、いろんなことに出会ううちに、大切なものが増えたし、広がっていった。
最初はこの国のことも信じられなかったし、恐ろしいだけだった。王族なんて特にね。でも出会いがそれを変えていった。
そうやって出会ってきたことで、わたしが排除したいと思うものも誰かの大事なものだと知った。
均衡をとることで大きな格差をうまないようにする考えを知った。
たったひとり。そのひとりの後ろに何人も何十人もかかわっている関係というのがあって、そのたったひとりとあった何かで、何十人ともの関係が変わってくることも知った。
そうやって経験するうちに、身動きが取れなくなることもある。
だからね、ノエルはノエルの思いを大切にしていいの。
その思いは、きっと〝今〟だけのものだから。
ノエルもいっぱいの人と会って、いっぱいの経験をして。
そうしたら大事なものが増えてくるわ。大切なものが。
わたしが言いたいのはね。ノエルの気持ちをいつも大切にしていいってこと。
そして変わることを恐れないで。気持ちは変わっていくものだから。
それから、誰かにも必ず大切な誰かがいるし、その人も大切に思われている誰かだということを忘れないで」
「……姉さま」
「魔物の核か……。もしそれがノエルの強さの理由なのだとしたら、わたしはありがとうってそんな命運をわけてくださった方にお礼が言いたいわ。
それに魔物は強さに敏感だけど、とても純粋で優しいわ。わたしは大好き。
どんなノエルでもわたしは大好きよ」
「……姉さま」
ノエルは繊細だ。わたしが国を殲滅やめてねとちゃんと告げず、冗談じゃなかったらどうしようと思っていたことを感じ取って、自分を責めてたんだ。
これからは理由とどうして欲しいとか、そういうのをはっきりいうことにしよう。反省だ。