作品タイトル不明
第1284話 精霊からの招待④空と鉱
『傷ついた大地は時間をかけ、癒していった』
何もかもが倒れた地はガスが噴き出ているだけで、簡単には修復されなかった。
そりゃそうか。地面の温度だって何度だかわからない。生き物が生息できる温度になるまでに何年もかかるのかも。
同じ映像が続いた。時折、聖霊らしきものが映り込み。さっきよりも早送りされているんだと気づいたのは、その映り込みがあったからだ。早送りをしても、長く同じものが続くと思える映像。やっとガスが晴れてきて、太陽の光が差し込むのと、暗くなるのがわかるようになった。おそらく1日を2秒ほどで映像は早送りされていた。
大地が6つに割れた話を聞いたとき、ダイナミックとしか思わなかったけど。そうだよね、大ごとだ。だって地は割れ、動き衝突もしたのだから。
海で波が巻き起こり、その余波が大地を襲い。火山もあるんだ、誘発して噴火したところもあるだろう。ガスが発生し、温度はどこまで上がりどこまで下がったか想像もつかない。
この中を生き延びられた生き物はいたんだろうか?
これは厳しすぎる。
これさ、ここからまた命が新たに誕生していったんじゃない?
だってこれは流石に生きられないよ。
最初の生命の誕生のように。ある日、海の中でアミノ酸に異変が起こる。それはやがてバクテリアとなり光合成をして酸素を出す。植物が海から陸に上がり、昆虫や両生類も陸へと。哺乳類なども生まれ、やがて人族も誕生する。
そこまでにどれだけ時を費やしたかわからない……。
教会があるのは……神の声が聞こえる人が現れ、大地にどんなことが起こって今があるのかを知らされたのは、恐れ知らずの人族への警告だったのかもしれない。
神というのはありがたくも恐ろしいものであると。大地を割ってしまうような、決して歯の立たない相手なのだと。だから恐れ敬えと。
カメラワークは天から映し出されたものになった。
大地が6つに割れた形がわかる。ガスがなんとか晴れていき、長い時間をかけ、土地の色が少しずつ変わっていった。やがて緑がちらほら見えるようになった……。
第六大陸は真っ白だったけど。
『これは貴重なものぞ』
時の精霊は誇っているみたい。
レオたちがすごいな、これはと言ったので、喜んでいる気配。
『戒めの女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、時に祝福する』
戒めの女神……なんていうパワーワードだ。
『我は空・シエル。何もかも包み込む寛大さを望まれておる』
軽やかな女性の声だ。
『空を見せよう』
ほえっ?
上昇してる?
空間が違う? っていうか、普通の空? 飛んでる?
特に何もしてないし、周りの景色は、何もなく変わらない……いや、これ雲?
雲をすり抜ける。そっか雲は水蒸気。
と、急にバビューンと横に向かってどこまでも。
ろ、ロケットの気持ちがわかる気がする! 答え合わせは一生できないだろうけど。
危険はないはずなのに、怖いと思うのはどうしてなのか。
ビュンビュンとどこまでも空を飛びまくる。
雨の中を飛んだり、虹が見えたり。雹やら霰やら。
雷が見えて、流石に迂回してたけど。
紛れもなく空だった!
そして空はどこまでも空。
ノイズだ。耳を押さえる。
「きっとあのお嬢ちゃんが何か考えついたんだわ。罠よ」
耳に聞き覚えのある声。
知っている、と思うのに、それ以上思いがまとまらない。
思いが滑っていって、過去の記憶を探れない。
「油断させて一網打尽にするつもりなんだわ、浅はかな!」
「では、もうひとつの方はどうなんだ?」
それは知らない声。耳に心地いいテノール。
「あちらは真実でも驚かないわ。
だって普通なら今まで我慢していたことの方が疑える。
もっと前に謀反を起こしていたっておかしくない」
『どうしたリディア、耳がどうかしたのか?』
もふさまは飛ぶのに慣れているのか動じてないね。
わたしを気にする余裕さえある。
やっぱりみんなには聞こえてないか。
「ちょっと耳鳴り」
後で確めがてらきちんと話そう。
みんなはぬいぐるみのまんまるお目目をキラキラと輝かせて周りを見ている。
レオやアオは飛べるだろうに。
『寛容の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、空に祝福する』
寛容の女神、か。
急に落下が始まる。
お腹の下がひゅっとなる。景色は空で何も変わらないのに落ちていく感じがするのはなんでなんだろう。
ふと止まる。わたしたちは車座になっていて。気がつくと背にはブリキでできたような可愛らしい椅子があった。
座ってみるとなかなかに心地いい。
『我は鉱のミネラル。創造の楽しさを受け継ぐ者』
目の前でテーブルが作られていく。
花瓶やお花、ブリキで作られていく。
ティーセットもお菓子も、全部ブリキ。
クイがブリキとは信じがたいみたいで、齧ってみたら違うかもとガリっとやってる。
『菓子じゃない!』
だ、だろうねー。
おおおおお、いきなり横にブランコが出現。すべり台もだ!
途端に椅子から飛び降りて、遊具に突進していくみんな。なんて可愛いの!
「リディア、次変わってでちー」
「あと10だけ、漕がせて!」
ブランコは死守した。一番乗り。だってブランコなんていつぶり!?
みんなだって、遊び方わからないでしょ?
ギッタンバッコン……シーソーはわたし対みんなとなる。
別にわたしが特に重たいからじゃないよ。みんながぬいぐるみサイズで軽いからだよ!
『形成の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、鉱に祝福する』
空から降ってくる声。
その祝福はブリキの遊具で遊んでいるわたしたちみんなにも降り注いだように感じた。