作品タイトル不明
第1283話 精霊からの招待③地と時
『我は地のテール。大地は礎となるところ』
今度は地の精霊。
第四大陸で聞いた声とはまた違う。風の精霊が軽ーい感じだったからか余計に重たい感じに聞こえる。
『水の姉が眠り、我も半分眠ったような状態だった。
そなたらに助けられた。感謝申し上げる』
いえいえ、ミネルバ大陸で発現してくれたから、わたしたちはミネルバの人から信じてもらえたからね。とてもありがたかったわけで。
画面には種が発芽していく様子が映し出された。
土の中にいてさ、自分の咲く時を知ってるってすごいことだよね。
芽が出て、葉が開き、茎が伸びて葉を増やす。
そして花を咲かせる。派手なインパクトはないけれど、何かを訴えかけてくる映像だ。
また一瞬ノイズ。
「これでやっと仇を討つことができる!」
「ああ、トト。今更そんなことをして何になる?」
「私だってあんな手紙をもらわなきゃ、何もしようとは思わなかった!
20年前何もしなかったのと同じようにね!
でも、だからずっと辛かった。あの子はあれから子もできず病んで早くに亡くなった。
私があの時何もしなかったから!」
「それは違う……違うんだよ」
足しか見えない。年配の男女?
畑の真ん中で女性が取り乱すのを、旦那さんが宥めている。
唐突にその映像は終わった。
チラッとみんなの方を見たけれど、変な顔はしていない。
わたしだけ見えてる映像??
『春の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、地に祝福する』
そうか、大地は春の女神さまが……。
女神さまはたったひとりを残して封印されたんだよね。
この春の女神さまも……。でもそれからもずっと春は訪れてる。
もし春の女神さまがいらっしゃったら、春はもっと華々しいものなのかな?
また心に響く声。
『我は時をつかさどる、トン。我は記憶するしか能がない。時を飛べるような力はない。ゆえに我が末の弟を助けること叶わず……』
ああ、この〝時〟の精霊は自分を責めているんだ。時をつかさどるのに、権限がないから。末の弟、〝悠〟が瘴気に変わってしまった、それをただ記録するしかできなかった自分を悔いている。恐ろしい時間をかけて永遠に。
なんていうか、かけていい言葉は見つからない……。
他の精霊たちもうなだれてるのだろう。姿は見えないけど、そんな気配がする。
『トン……』
水のオードゥースさまが労わるように声をかけた。
『ああ、すまぬ。我が生まれる前のことになるが、この大地が割れた瞬間をお見せしよう』
え? なんかすごく軽く言ったけど、大ごとじゃない?
大地が割れた瞬間、それって。神と聖なる方がケンカして大地を6つに割ったあれだよね?
『それまで世界はひとつだった。神も聖も、他の生き物も同じ聖地に住んでいた。けれど、新しく生まれた人族は想定外のことをする。他の生き物たちも持て余していた。対して強くもないその種族は、種族で徒党を組みひとつとなり他の種族を凌駕した。そして神や聖にも平気で逆らった。
どんなに言い聞かせてもそれは変わらない。
神や聖が拵えてきた世界を平気で壊そうとする。神は怒りのままに人族を根絶やしにしようとした。
聖はそれを止めた。神と聖の揉め事となり……』
映像は美しい森だった。
豊かな緑が永遠に続き、湖は青く澄み、真っ白のユニコーンや海の護り手さまのような龍が空を飛んでいく。妖精と呼びたくなる、羽の生えた小人。聖霊なのかな?も飛びまくっていた。
その穏やかな森に雑に乱入してくるのが人族。
手製の武器や魔法を使い、森を荒らす。人族が来ると、他の生き物たちは身を隠した。魔法の攻撃を受けた地から黒い液体があふれる。それが流れ出るとその液体の通った後は花や草が倒れ枯れていく。緑の美しい森に黒い魔が入り病んでいく……。
ガゴチでアダムが扮装していた衣装ままの姿があった。
アダムよりずっと年上だけど、美しいところは同じだ。
こちらが聖さま。聖なる方……。
もふさまに目を走らせると、もふさまは少しだけ口を開け画面を見上げていた。もふさまも聖なる方を映像で見て驚いている。
もうひとりのつかみ合いをする相手。おそらく箱庭神さまのトップ。
こちらも流石に美しい。薄い金色の髪をポニーテールにしている。
服装は……派手な、御奉行様が着るような着物、裃、袴。これ間違いなく日本人が作ったね。派手にアレンジしてあるけど。
へー、箱庭の神さまたちってこういうイメージなのか!?
なんか神話的な神さまを思い描いていたよ。
アダムの白髪の長い髪、着物を着崩したような格好も、あってたんだね。そういう文献があったのかしら?
と、バリバリバリとすごい音がした。
神さまが手をあげている。
それに対抗して聖なる方も手を出す。
神力と聖力がぶつかりあう。
その衝撃で生き物が、隠れていたものたちがパタパタと倒れていく、苦しそうにしているものもいる。一気に地獄図へと移り変わり。
ぶつかりあった光はどんどん大きくなり。
映像を見ているだけなのにそれは眩しすぎて、わたしは手で遮った。
恐ろしい音と光の量。
一瞬の静けさの後、また音が再開される。
大地が流氷が当たりあった時みたいにぶつかりあい、地が割れた。
ガスが発生して周りが何も見えない。
水蒸気なのか湯気なのかわからないけれど、とても大変なことになっていて、そこで生き物が生きるのは難しいことだけは、どんどん事切れていく生物を見て、受け取れた。