作品タイトル不明
第1282話 精霊からの招待②火と水と風
なんだろう、この安心感。
闇は怖くない。
そう思えば思うほど、心が安らいでいく。
穏やかになっていく。
『冬の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、闇に祝福する』
凍てつく冬は暖かい春の喜びを知っている。冬はその時を喜ぶとともにより発展するための時間。じっと身を縮こまらせ、耐え忍ぶ。自分が咲く時を知る。英知を蓄える期間。
ビリッとノイズが入る。
誰? 暗くて顔はわからないけど、恰幅のいい年配の方が憂いでいるのがわかる。
ーー我らが王は我らを捨てた
あんなに尽くしてきたのに、我らを打ち捨てた
誰? 誰の思い?
ーー我らには切り札がいる
何だろう? これも闇の精霊が見せていること?
短い時間だったに違いないのに、疲れみたいなのが吹っ飛んでいた。
なんだか踊りたくなるぐらい元気、運動の苦手なわたしがだよ?
『我は火・フラム。其方らの好奇心に火をつけようぞ!』
火? レオは大丈夫か?
チラッと目を走らせる。
本当の火の手があるわけではないからか、レオはなんともなさそうに見えた。
目の前に広がっていたモニターがいくつもいくつもの小さな画面になる。
あ、あれは父さまに抱っこされている小さなわたし。
砦のわたしもいる。下を向き、虚な瞳で歩いている。
こっちはダンジョンで魔法をぶっ放している。比較的最近。
……今までのわたしの映像?
『好奇心は己を知ることから始まる。まずは己と、とことん向き合え』
みんなも自分の過去の映像を見てるんだろうか?
薬草学を一生懸命自分のものにしようとしているわたし。
ダンスの授業でヘロヘロになってるわたし。
みんなでご飯を作って楽しそうなわたし。
物語を書きながらニマニマしてるわたし。
もふさまの毛に埋もれて眠っているわたし。
夢でも見たのかビクッとなったわたしの頬をもふさまが舐める。するとわたしは穏やかな寝顔になった。
いつでもどこでもどんな風景にも、もふさまともふもふ軍団が映り込んでる。
わたし、すっごく、楽しそう。
ダンジョンは緊張感もあるし戦うのは大変とか思ってたのに。
わたしはずいぶん楽しそうだ。
家にいる時も、学園でも、友達といる時も、兄さまといる時も、家族といる時も、挑戦している時も、和んでいるときも、わたし本当に楽しそう。
ああ、わたし楽しいんだな。楽しかったんだな。
そしてそれは一人では決して味わえなかったこと。
誰かがいるから、あなたがいてくれたから、だから楽しかったことたち。
『自分を知ればそこから疑問が生まれ世界が広がる。火は最初の叡智』
火は確かに生活を変える最初の叡智。
それに身体を温めてくれるし、火を見ると熱くて危険なものなのにホッとしたりするもんね。
『焔の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、炎に祝福する』
女神さまの祝福だ。
炎の祝福は焔の女神さまが祝福したんだね。
『次は我の番。水の精霊・オードゥース。我を解放してくれたこと、感謝する。そして回復してくれたことも』
噴水! いろんな形で美しい曲線を描く。
きれい……。
こっちの水の精霊さまが本体で、あのちびっこい捕まっていた精霊さまは一部なんだろう。そんなようなことを地の精霊さまが言ってたもんね。
『捕まり生命力を奪われ続けた。そして何も信じられなくなっていた。一部のその想いが我を支配し、我も病み、眠りにつくしかなかった。
こうして回復したのは、そなたらのおかげ。
救い出してくれたことを感謝する』
「はい。お元気になられてよかったです」
第五大陸で別れた精霊ちゃんは元気になったんだね。それで本体さまも元気になった。
『波の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、水に祝福する』
水のトルネード。すごい威力のトルネードも水の精霊には命の源。
精霊さまたちはこうやって女神さまから祝福を受けて、旅立ってこられたんだね。
『我は風・ルヴォン。ひとところに留まらない自由こそが 性(さが) 』
水を吹き飛ばし、強風を吹かしたかと思えば、優しい風が頬をくすぐる。
葉っぱが現れる。葉っぱがくるくる回る。
楽しくて仕方ないというように、葉っぱたちがくるくる踊る。
物言わぬ風に励まされたことがあったな。
ただわたしがそう思えただけなんだろうけど、背中を押してもらったことがある。
光、闇、火、水、風。
精霊たちはわたしたちの生活に馴染んでいて。
切り離せるものでもなく。
物言わぬと思っていたけれど、感じた〝助け〟は精霊だったのかもしれないな。
『融和の女神が新たに生まれし精霊が 一(いち) 、風に祝福する』
融和? そういう女神さまもいたんだ。なぜ風の精霊の祝福が融和の女神さまなんだろう? 今まではなんとなくかかわりが見えた気がしたからか、どうして?と思ってしまった。
風を司るのは精霊さまなんだね。風の神さまもいそうだけど、いらっしゃらない?? 神さまはもう少し大きな範囲なのかな? それで精霊さまがピンポイント。
だとしたら身近な風、水、火、闇、光……わたしたちが今まで関わってきたのは精霊さまなんだ。
今まで魔法のカテゴリ分けがすっきりしない気持ちでいたんだけど、生活魔法はさ、実は精霊魔法なんじゃない? あ、でもこれだと光魔法は当てはまらないか? 光は浄化とは違うものね。