軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1278話 見慣れない馬車

わたしが好きなわたし、か……。

どんなわたしなら、わたしは自分を好きでいられるだろう?

鏡の中のわたしはいささかどんよりした目をしていた。

ドライヤーで髪を乾かしていく。みんなはお風呂後のドリンクを飲みに行った。

ん? なんか急に明るくなった?

何がどうとは言えないんだけど、なんとなく周りが明るくなったような……。

あれ、戻った。

鏡の中のわたしが首を傾げている。

なんだったんだろう?

髪をしっかり乾かし終えたので廊下に出るとロビ兄とバッタリ。

魔力ゼロにすると、気配により疎くなってしまった。

なんだかんだ魔力に助けられていたんだと毎日何度も思わされる。

「お帰りなさい。先にお風呂もらったよ」

ロビ兄はわたしの頬に触れる。

「みんな旅だったんだな」

《《少し》》泣いたのがバレたみたい。

わたしは答えずに笑い返した。

「ロビ兄、ロビ兄も春になったら家から出るの?」

ロビ兄は頭の後ろをかいた。

「受かったら、魔導騎士になる」

わたしは息をのんだ。

「夢、叶ったんだ……」

「まだわからない。試験はこれからだし。でもクラブでやっていたことが評価されて、声かけてもらったんだ」

「すごいじゃん!」

魔導騎士はなりたいと言ってホイホイなれるものではない。

魔導騎士になるための試験も現役魔導騎士の推薦がないと受けられない。

一般的には騎士の中から魔法力の高い人か魔法士の中から身体能力の高い人をスカウトすると聞いた。

「兄さまやアダムに比べると頼りないかもしれないけど、オレも強くなる。魔道騎士になれたら、国の魔道騎士として国を守るのに尽力する」

ああ、すごいな。わたしの兄さまたちは。

しっかり未来を見据えている。

わたしみたいに情報に弄ばれて、何がどうしたらいいのかわからなくなったりしないんだ。

「どうした、暗い顔して」

「あ、ううん。ロビ兄も家を出て、アラ兄も役人に受かったら最初は寮暮らしでしょ」

「アランから聞いたのか?」

「うん。領主になると思ってたから驚いた」

「学園の寮暮らしと似たようなものだ。それにおれたちはフォンで話ができるし、ルームで移動もできて、普通の人たちより簡単に会うことができる」

「それはそうなんだけどね」

離れて暮らすことは、どんなに祝福するべきことでも、淋しくなっちゃう。贅沢なのかな。

「……リーは何になりたいの?」

ロビ兄は廊下の壁に背中を預け、腕を組む。

「……考え中」

「兄さまのお嫁さん、ではないんだね?」

ロビ兄の眉は八の字だ。

「え? それはなりたいものに含まれるの?」

「え?」

「だって、兄さまに嫁ぐのは当然だからカウントしてなかった」

そういうとロビ兄は何がツボに入ったんだか、お腹を抱えて笑い出した。

あまりの抱腹絶倒ぶりに、父さまや母さまが出てきたほどだ。

みんなに何がそんなに面白かったんだと言われたけどロビ兄は笑っているだけで。

後から涙を拭きながら「安心した」とわたしにいう。

安心して笑ってたの?

何が? どこで?

ロビ兄はお腹が空いたと言って、みんなを食堂に駆り立てた。

ハンナが用意してくれた献立が、テーブルの上に並んでいる。

あ、わたしの好きなものばかり。

いつの間にか、もふさまやもふもふ軍団もしっかり席についていた。素早い!

兄さまにも優しくしてもらって、ドラゴンちゃんたちのいない淋しさを癒してもらってる。みんな盛んにわたしに料理を取り分けてくれる。

この頃は食べてる分だけ成長していく気がしているので(主に体重)。そろそろ気をつけないとだ。

魔力ゼロだから、もふさまやもふもふ軍団の言葉はわからないけど、だいたい何を言ってるか想像はつくから、そこは予想外だった。

夜着に着替えてベッドに入る。

もふさまともふもふ軍団が一斉に窓の方を見た。

「どうしたの?」

「なんか気配がしたでち」

アオが教えてくれた。

「気配?」

「でももうどっかいったでち。……メインさまの守りがあるのに、変でち」

もふさまももふもふ軍団も興味を失ったように寝る準備をする。

わたしも、もふさまに抱きつく。

アオが灯りを消してくれた。そして急いで戻ってくる。

わたしともふさまの間に入りこんできた。そのビロードみたいな肌触りを撫でて楽しんでいるうちに眠ったみたいだった。

たっぷり眠っているからだろう、目覚めも爽やか。

体を伸ばして伸びをする。

レオ以外はモゾモゾと起き出した。

「おはよう」

みんなが鳴き声で答えてくれる。

「リディーは今日、何をして過ごすんだい?」

朝食の時に父さまに聞かれた。

「特に予定はないの。家でのんびりしようと」

ご飯の作りだめでもしよう。

そう思いながら答える。

ハンナが手伝ってくれるというので家のキッチンで作りだめを始めた。

もふもふ軍団もキッチンの椅子にみんなで座り込んでいる。

母さまも時々覗きに来てくれた。

アラ兄とロビ兄は辺境に行った。ミラーダンジョンを経由して。

バトンタッチして下の双子が帰ってくるはずだ。

だからエリンとノエルの好物を作っておこう。

アオが急にわたしのエプロンを引っ張った。

「メインさまが、見慣れない馬車が2台向かってきてると言ってるでち」

見慣れない馬車?

「アオ、わたしに1500だけ魔力をちょうだい」

「合点承知でち」

アオがパタパタとヒレのような羽で飛んで、わたしのおでこと自分のおでこをくっつける。

おでこがピリッとして、慣れ親しんだ何かが流れこんでくる。

おでこを離してお礼を言う。

「アオ、ありがとう」

「どういたしましてでち」

わたしはマップを呼び出して探索をかける。

魔力を抑えているからか、色が薄い。赤ではないけど微妙な色だな。

敵と思っていた方がいいかも。

「ハウスさん、母さまに誰かが来たと、味方ではなさそうなことを伝えて。それから領地の町の家にいる父さまと兄さまにも伝えて、指示をあおいでちょうだい」

『YES、マスター』

母さまが部屋からキッチンへと出てきた。

「リディー」

心配そうに伸ばす手を握る。

「リディーはサブハウスに行っていなさい」

「母さまとハンナだけにするのは心配だよ」

オーブンを使っていたから、煙突の煙も見えただろう。

今から人がいないのを装うこともできない。