軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1277話 いってらっしゃい!

笑え!

わたしは自分に言い聞かせる。

これは〝別れ〟じゃない。

これから生きていくための通過儀礼。生きていくために必要なこと。

ドラゴンちゃんたちが不安にならないように、笑っていなくちゃ。

ちゃんとそれぞれの種族が迎えにきてくれた。

大きなドラゴンたちに比べると、爪ほどの大きさのドラゴンちゃんたち。

どんな世界でも生き抜ける強さを。

どんな状況も楽しめる強さを。

弱さに寄り添える強さを。

みんながわたしの肩に留まり、頬ずりしてきた。

ブラックドラゴンちゃん。

一番成長が早くて、ちびドラのリーダー的存在。ダンジョンではしんがりを守って皆を助けてくれてた。

わたしの目を見て喉を鳴らし、それから飛び立った。大きなブラックドラゴンとともに。

クリスタルドラゴンちゃん。察知能力があるみたい。その影響か引っ込み思案なところはあるけれど、魔法を器用に使う子だ。

わたしに頬をすりつけて、くりゅくりゅと耳元で言って飛び立つ。

グロウィングドラゴンちゃん。何もかもがスマートな女の子。慎重に行動し線からはみ出さないようにする子。でもそうできる能力がある、高いってことだ。

わたしの頬に顔をすりつけて、なんか喋ってる。

わからないけど、わたしも頬を強くあてる。わたしの目を見てから飛び立つ。

稲妻ドラゴンちゃん。好奇心旺盛で、弾けては稲妻をぶっ放してた楽しい子。

世の中はきっと君のことをもっと成長させてくれるだろう。

輝く目をわたしに向けて飛び立つ。

銀龍ちゃん。一番怖がりな子。ほぼわたしの髪の中に隠れているけれど、戦うこともちゃんとできるようになった。

大丈夫、世界は君を優しく受け入れてくれてるよ。

頬ずりして飛び立つ。

わたしは大きく手を振った。

「いってらっしゃーーーーーーーい!」

大きな声でエールを送る。

もふさまは空を見上げ、もふもふ軍団は飛び上がって頑張れを伝えている。

空へまっすぐ飛び上がり、同じ色のドラゴンについて、そして四方に散る。

空にあった点がなくなるまで見ていた。

いなくなってからも見上げていると、アリとクイがわたしに登ってきて、涙を拭きとってくれた。

『リディア、いくぞ』

うん。何があるかわからないから、最低限のことだけということで許しをもらっている。約束を守るよ。

わたしはもう一度だけ何もない空を見上げ、願いを込めた。

すぐに小屋に入る。

バッカスのアカがいたアジトは同じ第六大陸。こちら側とは離れているけれど、気をつけないとね。

小屋からルームを経由して、すぐにミラーハウスに戻った。

それからも出かける予定のないときは、魔力をゼロにしてみんなと直接話せないのも慣れるようにしていた。

みんなはわたしと話せないとお昼寝することが多い。もふさまもだ。

っていうか、ダンジョンに行かなければ、ご飯とお風呂と遊ぶとき以外よく眠ってる。わたしは一緒に眠るときもあるけど、勉強をしていることが多いかな。

アラ兄が帰ってきたら教科書のわからなかったことを聞いたり、過去の試験問題をやらせてもらって、理解を深めたりしている。

アラ兄に教えてもらっているときに、聞きたくて口元まで出かかってはやめていることがある。それはアラ兄の就職先のこと。

アラ兄は長男だ。就活でいろんなところに行っていたのは知っていたけれど、それでもシュタイン領の領主につくと思っていた。だけど、どうも王宮の役人の試験を受けたっぽい。

試験問題を終え、アラ兄に渡したタイミングで尋ねる。

「アラ兄、聞いていい?」

「もちろん」

「あ、勉強のことじゃないんだけど」

アラ兄はクスッと笑った。

「それはこの頃、オレに尋ねようとしては、別のことを聞いてまた聞けなかったって顔してた件?」

カッと顔が熱くなった。バレてたんだ。

「なんだ、わかってたの?」

「これでもリーの兄だからね」

アラ兄は幸せそうに笑う。

「就職のこと?」

わたしはうなずいた。

「本当に、ただ知りたいだけなんだけど。

アラ兄はシュタイン領の領主になるんだと思ってた。

でも王宮の役人の試験を受けたって聞いたよ?」

「オレ、なりたいものがいっぱいあるんだ」

わたしはアラ兄のまっすぐの瞳を見上げる。

「父さまともいっぱい話した。ロビンとも」

アラ兄はわたしの頭を撫でた。

「小さい頃言ってたこと覚えてる?」

「魔道具を作ってくれるって言ったこと?」

アラ兄はうなずく。

「それもだね。オレはみんなが魔法や魔具をもっともっと自由に使えるといいと思うんだ。自由に窮屈な思いをせずに思いっきり。

魔法士になりたいとも思ったし、魔具づくりは楽しくて、魔具技師になりたいとも思った。

でも過去の人たちの作った戒めは現代でも驚くぐらい生きていて、なかなか自由にならない。

オレはその扉を開きたいんだ。

それにはまず、国の法を変える必要がある」

揺るがない瞳。真っ直ぐ前を見つめてる。

……アラ兄……。本当にいつも驚くぐらい正攻法だ。

だからアラ兄を見ていると背筋が伸びる。

「それで役人になるんだね」

「うん。父さまも母さまも頑張れって言ってくれた。10年の間にステップアップして、法を変えてみせるよ。

そしたら役人は辞めて魔具作りを心ゆくまでしようと思う」

「10年って決めてるの?」

「そうだよ。魔具づくりもやりたいからね」

アラ兄はしっかり未来が見えてるんだ。

「リー、終焉、ガゴチのこと、いろいろあるだろうけど、自分が何をしたいのかも考えるんだよ。

リーのやりたいこと、なりたい自分。言わなくてもいいけど……」

アラ兄はそう言って自分の胸を叩く。

「ここに持つんだ。どんどん変えていってもいい。

こうなりたい、こうしたいっていう強い思いは自分を強くして引っ張ってくれる。

伯爵令嬢だとか、スキルが変わってるとか、そんなことは取っ払っていい。

リーが好きなリーになるんだよ」

アラ兄はそう言ってから、わたしの答案を採点しだした。