軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1271話 歪みゆく世界⓲すり合わせ

「リディア嬢の件も解決したし、早いところ帰りたいところだけど、外は吹雪いてる」

イザークがテントの窓から外を見て声をあげる。

「それじゃあ、吹雪がマシになるまで話をすり合わせないか?

それぞれが離れてから知り得たことを共有しておこう。

特にリディア嬢とアダムは見習い神といっぱい話したんだろうから」

「見習い神は元凶ではあるけれど、現在立ちはだかっているのは元凶が声をかけた疫病神みたいだね」

ルシオの言葉にみんなが重たくうなずく。

間違いなく元凶は見習い神だった。

因果律を組み立てる時から、わたしとアダムはフォロー要員。

もうそこでわたしにとっては元凶だ。

意識が浮上してからは、物語が思ったように進んでいないと、わたしへの悪意をばら撒いてきた。そこでも元凶。

あたりが強かったり、わたしへの悪意がこれまでも繰り返されてきたのは、元凶と波長があった人がやってきたことかもしれないことが含まれているだろう。

でも見習い神ができたのはそこまで。精神攻撃まで。

本体は封印されたままだから。逆にいえば腐っても見習い神という存在だからか、封印されているのに意識が浮上した時にそんなことができたのだろう。

起きてはきっと癇癪を起こし、わたしへの悪意を振り撒いてきた。

そのひとつが疫病神へと届き、わたしたちが敵対しているのはその疫病神がトップの勢力ではないかと推測できる。

元凶が現在は疫病神へと移り変わっているのをみんなで確認してから、わたしは本来のシナリオのことを話すことにした。なんていうか見習い神を〝過去の元凶〟とわたしが捉えていないと、何があったかを話すのもなぜか辛かったから。

過去の元凶と思えるようになったのは、多分曲がりなりにも見習い神もこの世界を愛していたことがわかったからだと思う。

創世記を知ったとき、ちょっとショックだった。

だって見習い神さまが課題で作った箱庭に出来心で生命力を与えてしまった。それで世界が芽吹いてしまった。それはいけないことだからと真の創造神は封印された。なんかもうそこからナンセンスじゃん。

出来心から生まれ、生まれたから見守るしかなかった〝世界〟。それもお使いで行ったことのある世界で見た箱庭を模したもの。しかも乙女ゲー。

そんな世界に生まれてしまったわたしたち。

なんかすっごく適当に生まれてしまったみたいで。ミソッカスみたいで。しかもそれをその世界の者に知らせておくって嫌がらせか?まで思えた。

でも、創られた世界は創造主に愛されていた。えらく偏った愛であることは否めないけど、アンドレ殿下が大好きで、悲し過ぎる生き様となるアンドレ殿下のためだけを思い、その境遇から〝 聖女(じぶん) 〟との出会いによりアンドレ殿下の生涯を昇華するために生まれた世界だった。

その世界はわたしとアダムには悲惨なものでしかなかったけれど。でも創造主に愛された世界と知ることができたのは、よかったことだと思う。

そんなことを考えていると、兄さまがボソッと言った。

「私たちはほぼ同じだ。みんな暗闇の中にいた。

見えないのに闇雲に歩いたら危険だと思って動かなかった。

そのとき、それぞれに、なんていうか精神攻撃を受けていたのかもしれない」

「精神攻撃?」

「っていうと大袈裟かもしれないけど、私はね、ちょっと夢のようなものを見ていた」

兄さまは指で頬をかく。

「俺は魔法がうまく使えない夢を見てイライラしてた」

イザークが不満を隠さずに言う。

「僕は聖書を朗読していて、ページをめくってもめくっても全然減らない悪夢を見ていたよ」

ルシオも悪夢系だったみたい。

「で、フランツだけいい夢だったみたいだな、どんな夢だよ?」

「え?」

と驚きながら顔がニヤけてるよ、兄さま。

「言わなくていい!」

アダムが制する。

「なんでだよ、アダム」

「フランツのいい夢っていったらひとつしかないだろ?」

それぐらい察しろと言わんばかりのアダム。

「そうなのか?」

イザークは兄さまに尋ねた。

「ああ、もちろんリディーとのことに決まってるじゃないか」

……兄さま。

嬉しいけど、アダムの意見が正解かもね。なんか違う話になってしまいそうだ。

「夢の中のことしか考えてなかった気がする。そうやって何をしようとしていたか忘れさせる気だったのかもしれないね」

ルシオがまとめた。

「そう、夢に囚われていたときお遣いさまが私の手に触れた。

それで急に夢のようなものに囚われていたと気づいたんだ。真っ暗で見えないだけで、先ほどと何も変わってないことを知った」

『我らもそうだ。暗闇となったが、リディアと小童以外の匂いはそのままだった』

わたしはもふさまの言葉をみんなに訳した。

もふもふ軍団もうなずいている。

みんなは手で確かめた。アダムとわたし以外いないことを。

そして存在していると認識すると声も聞こえるようになった。

わたしとアダムもそう離れたところにはいないと判断。

もふさまともふもふ軍団が鼻を使って他と違うところを探ったそうだ。

そして1箇所、わたしがその先にいるような気がしたともふさまともふもふ軍団。

みんなそちらの方向に攻撃を入れた。

びくともしなかった。

そのときにふとルシオが、堕神の何かを斬れた剣だけど、もしかしたらここでも有効なのでは?と思いついた。

それでやってみたらパリーンとガラスが砕けたようになり、その向こうにアダムとわたしがいたそうだ。