軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1270話 歪みゆく世界⓱伝染

「おいらの言ったこと、思い出してほしいでち」

アオの言ったこと?

えっと。魔力がなくてもわたしはわたしって言ってくれたよね。

ーーリディア、おいらたちリディアが穢れに蝕まれてリディアが辛いほうが嫌でち

そう言ってくれて。蝙蝠に確かめてた。

ーーリディアが無意識に魔力を使わなければ、穢れはしないんでちね?

って。そしてさらに確認した。

ーー魔力を垂れ流さなければ、見習い神さまは起きることもなく、これ以上リディアに害する者を増やしたりしないでちね?

見習い神はわたしの魔力に反応して意識が浮上した。

意識が浮上してはわたしへの悪意を広めていた。

でもわたしのその魔力が閉ざされれば彼女の意識が浮上することはなく、悪意を広めることもない。彼女が自分の意思で起きようとすることはあり得ないみたいだった。

アオはそれらを確認してから、わたしを振り返った。

そして信じているかを聞いてきた。無垢な瞳でわたしをじっと見た。

アオはわたしに何かあったら嫌だと言った。そして

ーーリディア約束を覚えているでちか? リディアがいなくなるとき、おいらも二度と目覚めないようにしてくれって言ったでち

と過去の話を持ち出した。

唐突で、ちょっとあれ?と思った気がする。

あれ、そういえば……。アオとの約束。

気持ちが変わらなかったら、わたしが命を落とす時、アオも二度と目覚めないようにすると約束した。あの時はわたしの魔法でできると思ったから。

でも今魔力を手放してしまった。

約束守れないじゃん。わたしはアオに天寿を全うしてもらいたいと思ってる。

人生……じゃなくてラッキーバード生は天寿を全うしてこそ味わい尽くせるようになっているものだと思うから。だからわたしだってなるべく一緒にいたいけど、人族の方が寿命は短いだろうから。わたしがいなくなった後も、アオにもみんなにも楽しく過ごしてほしい。そう思っているから、約束を反故にするのは申し訳ないけれど、魔力がなくなったわけだから仕方ないわけで……。

ん? でも魔力を取り除いてくれたのはアオで。アオはわたしに約束を守れって、それ無理だし。あれ、矛盾してる?

そういえば、アオが魔力を取り除けるなんてそんな魔法を使えるの知らなかったな。あれ? なんか引っかかる。

あれ、アオが魔力が膨大になったのって……前の主人である魔使いさんが魔力が多いのがバレると、囚われたとき亡き者にされるってことでアオに魔力を預けたんだよね。けどそれをかいくぐった後もアオに魔力を託したままにしたって……。

わたしはゆっくりとアオの方を見た。

「思い出したでちか?」

アオがクリクリの目を輝かせる。

「そうでち、おいら、前のマスターから魔力を受け取ったでち。返すはずだったでち。おいらが魔力の受け渡しをできるように、マスターがしたんでち」

そうだ、そうだった! アオは魔力を保管したことがあった。託されたことがあった。

レオやみんなに小突かれて、アオは嬉しそうにした。

「そうでちよ。おいら、いつでも必要なだけ、リディアに魔力を渡せるでち!」

なんてことだ!

「あ、アオ。ごめん、もう一度言ってくれるかな」

アダムが理解が追いつかないというようにアオに頼んだ。

「何度でもいうでち。おいら、リディアの魔力預かっただけでち。いつでも必要なだけ魔力を渡せるでち!」

もふさまをみると、もふさまがうなずく。ほら、みろ、とでも言いたげに。

「それはすごい。リディア嬢は魔力をもらしていた。器が多い魔力に耐えられるほど丈夫ではなかったから。でも調節しての供給が可能なら、身体の負担にもならないだろうし、漏れてその魔力が見習い神を起こすこともない。余分になければ自然の痛みを引き受けることもないだろうし、いいことしかないじゃないか!」

「すごいよ、アオ!」

イザークがまとめると、ルシオが感嘆の声を上げた。

兄さまがアオを掬い上げ、ギュッとする。

「アオ、ありがとう!」

「照れるでち」

みんながアオにお礼を言った。

多分、もふもふ軍団も。ドラゴンちゃんたちも仕切りに鳴き声を上げた。

わたしも兄さまに抱かれたアオに手を伸ばす。

アオがわたしの手におさまる。

「アオ、……ありがとう」

「おいら、クッキーの家と角煮が食べたいでち!」

わたしの頬に頬を寄せ、溢れてくる雫を拭ってくれる。

「お安いご用だよ」

もふもふ軍団が何か言ってる。

きっとリクエストだね。

うん、全部叶えるよ。

「アオ、早速、ほんの少し、300ぐらい魔力をくれる?」

アオは飛び上がって、わたしの額に翼の先を置いた。

温かい何かが流れてくる。ほんのちょっとだ。ほんのちょっとだけど。

音が増えた。感覚が研ぎ澄まされる。

アオがいつもの青い色に戻っていた。

『やはり、一人で悩まず、すぐに相談するべきだったな。そうしたらこんな簡単に解決できた』

もふさまの言葉に納得する。ほんとだね。

すぐに解決できちゃったね。

「ありがとう、アオ。聞こえる。もふさまの声がちゃんと聞こえたよ」

『聞こえるか? 私は分厚いお肉がいい!』

『チョコのお菓子がいい』

『アマジョッパイのがいい!』

『わたくしは蜜いっぱいのケーキがいいです』

ふふ、やっぱりリクエストだ。

「了解! もふさまは? もふさまは何がいい?」

『熱い湯に浸かりたい。その後にぐるーみんぐとやらを受けてもいいぞ』

グルーミングたっぷり、承りました!

深くもふさまにうなずいて、わたしの手におさまっているアオに尋ねる。

「魔力の受け渡しでアオに被害っていうか、アオの魔力が取られるとか、辛いとかそういうことないの?」

「今、リディアの莫大な魔力を預かっているから、ちょっとわからないでちね。これ全部使うようなことはないとは思うでちけど、少なくなったときに渡しづらいとかはあるかもしれないでち。こればっかりはその時にならないとわからないでちね。

それと触れないと魔力は渡せないでち」

「痛いとか辛いとか何かあったら必ず言ってね」

わたしはアオの額にわたしの額を合わせた。

「リディアもそうするでち。ひとりで悩むの禁止でち!」

アオの後ろに見えるみんなが揃ってうなずいた。

その通りだ。ひとりひとりはたとえちっぽけでも、集まればより大きな〝ちっぽけ〟になれる。

みんなに告げる。

「……ごめんなさい。それから、ありがとう!」

みんなに笑顔が伝染していった。