軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1250話 シナリオ❿蓋

アイリスがふらついて膝をつきそうになったその時、手を差し伸べたのは……アダムだった。

アダム!?

北の辺境から戻ったの?

皆が息をのむ。

「負傷者は後ろに下がれ」

王者感のある威厳を持たせた声でアダムは告げた。

そして片手をあげ、その手のひらを赤いドラゴンに向ける。

ドラゴンが首をもたげたその時、アダムの手のひらから光が放出された。

眩しくて誰もが目を覆い、その一瞬後、爆音と共にドラゴンがひっくり返った。

「攻撃!」

アダムと共に帰還した魔導騎士たちが一斉に赤いドラゴンに攻撃を仕掛ける。

物理攻撃をするもの、魔法で攻撃するもの、息もつかせぬ攻め方で、赤いドラゴンの翼が片方地についた。

戦いの最中、鐘がなった。

くぐもった音。長い時間をかけて何度も。

ロサが膝をつく。

「父上……」

え?

攻撃をしていた人たちも一瞬目をつむり絶望の色を滲ませる。

黒い霧。城から黒い霧が漂ってくる。

瘴気? ということは陛下が崩御!?

また動き出そうとしたドラゴンに霧がかかり、霧に閉じ込められたようになる。

赤いドラゴンが真っ黒に見えた。

アダムがアイリスの腕を引っ張る。

「……君だけの力を使う時が来た」

アイリスはうなずく。

「けれどそれだけでは足りない。だから君に贈り物だ。結婚して初めての贈り物になるね」

と、アダムは天に向けた手のひらの人差し指を手前に折る。

え? 兄さま? みすぼらしい馬車から降りた兄さまはぐったりした誰か……わたしを抱えている。

「……フランツ?」

虚ろな目の兄さまを呼んだのはイザーク。

反応なし。

「ど、どういうことだ? フランツが抱えているのは婚約者のシュタイン嬢では?」

ロサがアダムに尋ねる。

「ブレド、聖女にかんする書を読んだか?」

「はい、もちろん」

「なら、わかっただろう。歴代の聖女が得意とした浄化。それがなぜ、目先の表面上のことだけしか浄化できていないのか」

「それは……。兄上はわかったのですか? みんながどうしてもわからかったことが?」

「私にはなぜ、皆わからないかの方が不思議だった」

アダムが抱えられているわたしに向かって手を突き出す。

「な、何をするつもりです?」

イザークが声をあげる。

「奇跡を見せてやる。聖女の完成された力を」

ちょ、ちょっと。なんか嫌な予感しかしないんだけど。

「ちょっと待って、シュタイン嬢に何をするつもり?」

今度はアイリスが声をあげた。

「加減が難しいんだ。死んでしまうと吸収できないらしいし、意識があると力を得られない」

それって……。

「あたしにシュタイン嬢の力を吸収しろっていうこと?」

「アイリスにしては理解が早い」

アダムは軽く答える。

「バカ言わないで。それに力を受け取ったらシュタイン嬢はどうなるの?」

「もちろん命も残らない」

「そんなことできるわけない!」

「綺麗事を言っている場合か? 陛下が身罷れた今、残された者で国内からも国外からの脅威をなくし、そしてドラゴンも倒すしかない。何より溢れ出した瘴気を浄化しなければ世界は破滅する。

だとしたら何をするべきかわかるってものじゃないか? ひとりの命と世界、どうはかりにかける?」

「……フランツはどうして?」

こんな状態なのだとロサは聞きたいのだろう。

「あ? ……思考がほぼ働いていないだろう。私の指示通りに動いている」

これで、というようにアダムは赤い石をチラッと見せた。

この世界では前情報がないからだろう。皆が眉根を寄せるだけ。

「アンドレ殿下、あなたのしていることは間違っている。たとえシュタイン嬢に何かするのだとしても、それにフランツの手を使うべきではない!」

イザークは臆さず第一王子殿下に意見する。それを軽くいなすアダム。

「君こそわかってない。温情だよ。きっとこの者は盾になり彼女を守ろうとするだろう。そして結局守れなくて絶望するしかない。けれど私が彼を操っている。この者は私に罪をなすりつけることができる。

シュタイン嬢の力を得なければ、陛下が抑えていた瘴気は蔓延して、この世界は死の世界となる。それを望むか? 今だって戦って、どう命が繋がるかわからない状態だ。シュタイン嬢だってここで役に立たねば犬死にするだけ」

アダムは淡々と言い募る。

心に蓋をする。わたしは観客。ただこのストーリーを見届けるだけ。

たとえ、自分がそのストーリーでは搾取され亡くなる運命だとしても。

「辛いやつは眠らせてやる。

死の世界となるとわかって、それでもシュタイン嬢を守りたいものは出てこい。

骨があると褒めてやる」

「……なぜシュタイン嬢なんです?」

アダムは軽く息を吐き出す。

「アイリス。今そんな話をしている悠長な時間はない」

そう言い切ってから、イライラしつつ頭の後ろを掻く。

「……気持ちの整理をするのに、仕方ないことか」

とひとりごちた。

ドラゴンは瘴気にまとわりつかれ苦しんでいるように見える。黒い塊はただその場所でのたうち回っている。

黒い霧は城から漂ってきて、少しずつこちらに向かってきている。

リディアの力が必要らしいのはわかった。

けど、あまりにもこのストーリーでわたしの扱い雑すぎない!?