軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1248話 シナリオ❽シンデレラ

学園でアイリスはとても楽しく過ごしている。

出会う人ほぼ全員がアイリスに好意を抱き、接する。

たまにぶつかる人も出てくるけど、時間をかければ手を取り合う優しい世界。

アイリスは誰にでも懐くからか、ロサの婚約者を目指す子からはそこまでいい顔されなかものの、男爵という身分が聖女候補で底上げされていて、衝突と呼ぶようなものにはならなかった。

ロサとの付き合い方もさらっとしたもの。

2年生になったとき、アイリスは成績があまり良くないので生徒会には入れず、そこでちょっと隔たりができた。クラスは違っても顔見知りということで会えばおしゃべりをする仲だったんだけど、生徒会メンバーが忙しくなったからだろう。

兄さまはアイリスを特別視しない、数少ないうちのひとりだ。

兄さまはイザークと仲が良く、その関係で生徒会メンバーとも話したりしている。

兄さまの婚約者であるリディアのことは、禁句になっているのかと思うほど全く会話にのぼらなかった。

アイリスを特別視しないもうひとりはアダム。

アンドレ殿下の時はラブラブになるので、みんな不思議そうにしている。

同じ第一王子さまなのに、ある時は冷たい視線での会話。ある時は春の午後のような穏やかなふたり。

第一王子さまの婚約者はメロディー嬢。そこはわたしの世界と同じだった。

アイリスが第一王子さまと仲良くしてもしてなくても、メロディー嬢にはあまり響いてないみたいだった。

アラ兄とロビ兄は学園に入ったけれど、次の年、リディアが入ってくることはなかった。

わたしはドーン女子寮が気になり見に行った。

あの意地悪なミス・スコッティーが君臨し、やはりみんな痩せ細っていた。

ガネット先輩もアベックス寮にはヤーガン令嬢もいた。最初に会ったときのような張り詰めた顔で、心が痛んだ。この世界ではみんなが背を向けた状態のまま、ここを卒業したんだろう。

その年、世界子供教育支援団体の視察があった。即席音楽隊が結成され、団体をもてなした。それは成功に終わり、聖女候補が誘拐されることもなかった。

学園祭も無事に終わる。

わたしから見て、アンドレ殿下は幸せそうだった。

時折、学園に来てアイリスと談笑する。その時間は優しく過ぎる。ふたりが幸せそうで。あまりにも美少年と美少女でお似合いで。目に焼き付けておきたくなる神々しいもので。辛いアンドレ殿下の生き方を知っているせいか、このままふたりで幸せになってほしいと心から思っていた。

殿下が卒業する年、メロディー嬢との婚約が破棄された。メロディー嬢はといえば、するりとロサの婚約者におさまった。

みんなロサの婚約者が聖女候補のアイリスだと思っていたから、その番狂せに驚いた。

概ね第一王子殿下は体が弱いから王位を継ぐことはない、第二王子のロサが王位を継ぐだろうと思われている。けれど第一王子殿下の母である王妃と王妃の実家の勢力が強いので、第一王子が継ぐワンチャンは残っているかもしれない。どちらにつくのがいいかとハラハラ見守っている感じだ。

ただ今回の婚約者がスライドされた件で、ロサとメロディー嬢は実はずっと恋心を温めていて、第一王子がそれを応援したのではないか。ロサとメロディー嬢のために婚約を破棄したのではないかと憶測が飛び交った。

アンドレ殿下はアイリスをとても大事にした。

アイリスのことしか見えてなく、アイリスもまたアンドレ殿下を慕っていた。

アンドレ殿下は現在婚約者はいない。

殿下は母である王妃にアイリスを紹介した。

わたしは王妃を初めてみた。

美しく気高く生まれながらにして全てを持っているような女性だった。

たとえそれが何かを蹴落として、自分が上りつめるという矜持を持っていた人であったとしても。

わたしの生きる世界でこの人は生きる屍。

そう唱えても。そう、何かしてやりたいと思っても何もできないとわかっていているのに、わたしの中で憎悪が暴れまくった。わたしの世界では母さまは生きている。そう思っても、この世界で亡くなった母さま、失意のどん底にいる父さま。哀しみを持て余す兄さま、アラ兄、ロビ兄、そしてリディアのことを思うと、胸が張り裂けそうで、実態があったらわたしはこの人をどうにかしているんじゃないかと思えた。

自分の中にこんなに憎む気持ちがあったことに驚き、また見たくない感情だと思った。

王妃はアイリスに優しかった。

この世界でも第一子である王の第一子が狂う説は有効で、いずれアンドレ殿下は地下で暮らすという噂があった。王妃はそんなことはさせない。自分はアンドレを王にするつもりで、聖女のあなたもアンドレを支えて欲しいとアイリスの手を握った。

それが予言だったかのように、後日アイリスは女神からの神託を受け取り、そして世界中の神官たちに聖女アイリスが誕生した神託が下った。

アイリスはすぐに聖女の力を使えるようになり、聖女として認められた。

聖女になったアイリスは、歴代の聖女たちがそうだったように王族に嫁ぐことが決まり、第一王子の婚約者となった。

まさに孤児から王子さまの婚約者におさまる、シンデレラストーリーだった。