作品タイトル不明
第1227話 ガゴチの花嫁⓬満ちる
また少しの間、学園に行けないかもしれない。
セインのユオブリアとガゴチへの攻撃。そして奴隷解放のワードは、世間をどれくらい騒がせるかわからない。それが落ち着くまで、わたしは学園に行かない方がいいだろう。誰かを危険な目に合わせるのは嫌だから、淋しいけど我慢するしかない。
わたしが表に出ていると、誰かを盾に取られて要求をのめなど脅すことを考える人がいるかもしれない。だから落ち着くまで、学園だけでなく、わたしがどこにいるかわからないぐらいの方が、誰もが安全なのかもしれない。
ラッキーなことに国内、国外でもわたしは隠れていられる場所があるし、移動できる手段がある。もふもふたちとゆっくりダンジョンにこもってもいいのかもしれない。
最初は兄さまの別荘からルーム経由でユオブリアに戻ろうかと言っていたのだけど、兄さまの別荘は見張られている可能性がある。
それでフォルガードのどこかで、ノエルのわかる場所に飛んできてもらって帰るという方法を取ることにした。
その連絡方法もウチ以外はどこにガゴチの諜報部隊が潜んでいるかわからないからナシ。ガインはウチの結界は強固で入れないと言っていたから。
フォルガードのノエルが行ったことのある場所まで、こちらも地道に移動だ。
フォルガードか……と思っていると。
「ミミたちに会いたい?」
と聞かれる。
「うん! ……姿隠してるのに、何言ってるのかね?」
脊髄反射でうなずいたことが恥ずかしくなり、思っただけだと言い訳をする。
「いや、会いたくて当然だ。ミミのいる施設に行ってみようか」
「え、いいの?」
「君も休みなく頑張っていたから、ご褒美にちょうどいいんじゃない?」
「ありがとう!」
お尻の痛さもミミに会えると思えば我慢できた。
ついたのはちょっと広めのお屋敷みたいな感じだった。
警備はすごかったけど。
人の出入りは殊更気を使っているようだ。
アダムがユオブリアの王子代行の印を持っていたので、ミミに会えるみたい。
一室でミミを待つ。
ふたりで楽しんでと言われ、アダムは出て行った。
なんだかちょっとドキドキする。
ノックがあり、ドアが開いた。
ミミだ。少し背が伸びた。けれど、そこまで変わってない。
ミミの目がわたしを捕らえ、じんわりと濡れていく。
顔をぐしゃっとさせ、泣きながら走ってきて、わたしに抱きついた。
「トスカ!」
「ミミ……」
ふたりしてぎゅーっと抱きつき合う。
ミミは泣き続けた。
やっと収まって。ソファーに座る。
「髪、伸びたね。きれいな髪」
「ありがとう」
そうだ。ミミと出会ったばかりの時はベリーショートだった。
「あのね、会いに来てくれてありがとう。私頑張ってるの。憑依というのをされないように。でも、いつまでここにいればいいんだろうって? 私ひとりぼっちな気がして挫けそうになってた。
トスカもジンも、きっとみんな私のことなんか忘れちゃってるって思った」
「忘れるわけないよ」
そう言いながら、忙しいを言い訳に、思い出すことは少なかったことを反省する。
ミミは毎日自分の精神的な何かを鍛えることに重きが置かれ、みんな優しいけどとても短調で変わり映えのない生活をしているといい、わたしの話を聞きたがった。
わたしの日常はなかなかハードで、極秘事項も多いからそのまま話すことはできない。
だからゆるーく外枠を話した。
それでも面白かったみたいで、茶色の瞳をキラキラさせて、時にはどういうこと?と聞き返しながら聞いてくれた。
「そっか、トスカにシューチャクしている人がいるのか。淋しいのかもね」
「淋しい!?」
間髪入れず問い返してしまった。
「え? そうだよ。満たされてたらシューチャクしないもん」
それは思いもしなかったことで。
わたしがわたしであるという理由で執着され、それだけならまだしも、それはわたしの大切な周りの人たちを巻き込んでいる。それが我慢ならない。
なぜわたし? わたしの何が? 何かいけないの? 自分の非を思ってきたけれど、まあ相手からすればきっとそうなんだろうけど。
でも相手が満たされれば、そういう根本的なことを変えるっていう手もあるというのは新鮮な考えで。
手札はいくつも持っていた方がいいと思うから、その考えは気づかせてくれてありがたかった。
面会時間は2時間で、その時間はすぐに過ぎた。
施設は子供が利用することが多く、面会時間をそれ以上取ると一気に里心が膨れ上がる傾向があるそうだ。
ミミとまた会おうと約束をした。今度は外で。ユオブリアも案内するからと指切りげんまんをして、泣き笑いの顔でさよならをした。
わたしがミミと面会している間、アダムは職員さんと話していたそうだ。
ミミが頑張っているのは事実で、あとは気を抜いていたとき、乗っ取られたけれど自我があるときの対処法を学ぶ段階にいて、それが身につけば施設から出られるそうだ。
元々この保護施設は、自分のスキルが自分を攻撃してしまう、もしくは攻撃となってしまい自分を壊しかねない人のために作られた。
創設者が自分のスキルが自分を蝕むもので、そのために自分の力を封印した。そのやり方を伝え、少なくはないそういった人たちのために作られたそうだ。
創設者は光魔法の使い手だったらしい。
呪術相手でなくても、何かを浄化すると魔力や生命を削るそうだ。
光魔法を使おうと思って使う、その場合魔力を使うことが多い。けれど創設者さんは無意識にも光魔法を発動してしまう子供だった。
痛そう、辛そう、誰かの痛みに敏感で、それを自分に移してしまう。そうして自分の生命を削り無意識に浄化していた。体が弱いと思われていたけれど、実はそうだったと後からわかる。そしてそれは自分だけでなく、無意識にスキルを使い生命を削るタイプの人がいることを知った。それでそういう子たちのために施設を作ったんだって。