作品タイトル不明
第1223話 ガゴチの花嫁❽知らない解釈
え?
飛んだ!
そして貴賓席に降り立つ。
ロサが魔法を放ち、兄さまが剣で挑む。
その後ろからアダムが魔法で……。
それが当たりうずくまったけれど、ギギギと音をさせそうなほどぎこちない動きで起き上がる。そしてアダムと対峙した。
ロサと兄さまがわたしたちの前に並ぶ。
「邪魔ヲスルトイウコトハ、ヤハリコッチガオ前ノ花嫁ナノダナ?」
「リディア・シュタインが女王でないのは確か。
けれど堕ちつ元神が世界を手にするなど、聞き捨てならぬ言葉を聞いた。
興味が湧くのも無理はなかろう」
アダムは不敵に笑う。
「オ主ノ邪魔ハセヌ。精霊ヲ増ヤスガヨロシイ」
「ハッ」
怒りを含んだ笑い声をあげ、アダムは言い募る。
「遥か昔、子を地上に降ろすのを邪魔されたも同じ。
私がここで其方の邪魔をするも道理」
美形のキレのある嗤いは凄みがある。
目の赤い公爵は少したじろいだ。
「堕ちつ元神がリディア・シュタインを得ようとするなら、私が邪魔してやろう」
と、わたしに向かって手を伸ばす。
「リディア・シュタインに尋ねる。堕ちつ元神のために世界を手にするか? お前の涙がどれほど価値のあるものなのか? お前は何者ぞ?」
え、え、ええええええ??
わ、わたしにアドリブを求めないで!
「わ、わたしは人族のただの娘。なんの力もありません。
世界を手にするとか、涙に価値があるとか、本当になんのことをおっしゃっているのか意味がわかりません」
と、とりあえず、そんなところでいい?
「お前が女王だと思い込んでいるものたちがいるな? お前は女王か?」
「いいえ。わたしはただの人族の娘でございます」
「ではなぜ女王を立てるこの場所にお前は舞い降りた?」
「それはガゴチの将軍から招待をいただいたからです」
「ガゴチの若き将軍に尋ねる。なぜリディア・シュタインをここに呼んだ?」
アダムはわたしから目を逸らさず、フィールドにいるガインに尋ねる。
ガインがこちらに体を向けた。
「ユオブリアとガゴチ、共にセインにしてやられそうになり手を組むのはわかる。
王太子を呼び、力のある貴族を呼ぶのもわかる。
が、リディア・シュタインに何を求めた?」
ガインは手を胸にやる。
「聖霊王さまに申し上げます。自分はリディア・シュタイン嬢には幾度も結婚を申し込んでおりますが、その度に断られています」
え。いや、え。結婚を申し込まれたのも断ったのも事実だけど、言う必要ある??
「今日、ここに女王がたち、ガゴチはいっそう強国となるでしょう。ゆえにシュタイン嬢を招待したのです。その瞬間を見ていて欲しくて。
自分は知っております。シュタイン嬢はいつかガゴチに嫁いでくる。なぜならシュタイン嬢はガゴチの花嫁となることが決まっているから」
「ガゴチの花嫁となると決まっている、とはどういう意味だ?」
「ヤハリ、リディア・シュタインガ世界ヲ得ルノダナ!」
「それは違う。シュタイン嬢はいずれ奴隷解放をやり遂げることになる。そのために自分のもとへとやってくるのです」
何を言ってるの?
周りがざわざわしだす。
「ガゴチ、正気か!?」
兄さまの怒りの声に思わずビクッとなる。
「ああ、正気だ。フランツには悪いがこの未来は決まっていることだ」
どこまでが演技? シナリオなんだよね?
でもわたし初耳なんだけど。
周りに大勢人がいる。
ねぇ、パフォーマンスなんだよね?
わたしのことで、わたしが知らされてないって問題あると思うんだけど。
「ヨクワカラヌガ、リディア・シュタインハ要」
「ここで白状したのだからそこまで悪質でないものの、やはり魂胆があったのだな」
え? アダムがそう言うってことは、ガインの言ってることは……シナリオではない?
ガインを見ると、ガインもこちらを見上げていた。
「君がフランツを想っていることは知ってる。でも、現実はそんな思いだけじゃやっていけない。いずれ君は奴隷解放を掲げ私を頼るしかなくなる……」
何を知ってるんだか、何を信じているんだか知らないけど、ここに来たのは騙されたことのように感じられて、モヤッとした苛立ちが生まれる。
「奴隷解放……イカニモリディア・シュタインガ好キソウダ。ドコカノ大陸デ奴隷ヲ助ケタト聞ク。奴隷タチノ救世主トイウワケダナ。ヤハリオモシロイ、リディア・シュタイン。オ前ヲ世界ニ捧げヨウゾ」
口を大きく開けて奥が明るくなる。さっきと違って至近距離。
こんなところからぶっ放されたら、わたしもお陀仏なんですけどっ。
「フランツ、この者を斬れ!」
アダムの叫びに呼応して、兄さまが走っていき公爵を斬りつけた!
赤い血が吹き出す! 盛大に。
もふさまの真っ白な毛並みに鮮やかな赤色が描かれる。
傾きながら口を開ける。奥が明るくなり……。
ここは?
森の中という感じだ。
わたしは着物の上に寝かされていたっぽい。
ゆっくり起き上がる。
この着物はアダムが着てたやつだ。
周りに誰もいない。のどかに鳥の声が聞こえる。
もふさまもいないの?
兄さまは? ロサは?
ドラゴンちゃんたち、もふもふ軍団もいない。
「もふさま。兄さま?」
返事はない。わたしの声に驚いたのか鳥が鳴くのをやめた。
「ロサ? アダム?」
微かに音がして、そちらを見ると木に身を隠していた人がおずおずという感じに姿を現した。
わたしは彼を見て、口を開けていた。