軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1224話 ガゴチの花嫁❾アダムの仲間

「こんにちは」

「……こんにちは」

わたしはとても驚いていて、挨拶を返すのに一拍遅れた。

そう、わたしは驚いていた。

人懐っこい笑みを浮かべ、彼はゆっくりと歩いてきた。

茶色の癖っ毛に優しい茶色の瞳。背が高く痩せ型で気品がある。

どこかアダムに似ている。彼が……。

「アダムの仲間の方、ですね?」

名前は知らなくていいとアダムは言った。アダムと呼べば現れると。

彼は元影のひとりで、いずれアダムと一緒に働く仲間だと言っていた。

「その通り。アダムは今、偵察に行ってる」

「あの、他の人は?」

「ああ。アダムが連れてきたのは君だけ。

ガゴチは君が自らやってくると思ってるみたいだけど、捕らえられたらあそこ傭兵集団だから逃げるのに骨が折れる。だから君だけまず外に逃したんだよ」

話し方の調子はなんとなくアダムと似ている。というか、第一王子に似せたのか。

「あ」

そうだ、公爵が火を吹きそうになっていたところから記憶がない。

「あの、みんな無事ですか?」

「恐らくね。アダムは君だけを逃したから、他はわからないけど。

無事だと思うよ。みんななんだかんだいって強いからね。

アダムが君はフォンという手段で連絡取れるって言ってたし。

お遣いさまは魔力をたどってくるだろうって言ってたよ」

あ、なるほど。

ドレスにポッケはないけれど、ポッケから取るふりをしてフォンを呼び出す。

耳飾りのボタンを震える手で押した。

「リディー」

兄さまの声。

「兄さま!」

「無事だね?」

「わたしは無事。兄さまは? みんなは?」

「ああ、こっちは大丈夫だよ。アダムと一緒だね?」

「アダムは今偵察に行ってる。わたしは森の中」

「森か。アダムが戻ってきたら離れるな。お遣いさまたちが向かうとガゴチを連れて行ってしまうかもしれないから、振り切れたとわかるまで別行動になる」

そうか、ガゴチには諜報部隊がいる。どんな獣に変化しているかわからない。人はついて来ていないとわかっても、ものすごく小さくて魔力もわかりにくいものに変化している可能性もある。

「今は状況が安定していない。誰が味方か見極められないところがある。その間リディーは隠れている方がいいかもしれない」

「兄さま、ガインが言っていた奴隷解放、あれもシナリオにあったこと?」

兄さまのためらいが伝わってくる。

「……いいや。ガゴチとは敵が同じことで手を組んだ。けれど、それとリディーを得ようとしていることは話が別だ。

あ。気をつけるんだよ。誰の言葉も鵜呑みにしないこと。アダムと離れないように」

「……うん」

切ってからも、なんとなく耳飾りを見つめていた。

「それがフォンか。離れたところにいる人と話ができる魔具、かな? すごいね」

「え、あ、はい」

「皆無事だったろう?」

「あ、はい。みんな無事のようです」

よかったけど、あの後何がどうなったのか知りたい。

この人は離れたところにいて後から合流したみたいだから、よくは知らないだろうし。

まずはドレスを着替えたい。アダムに似ているといっても、この人に着替えを手伝ってもらうのは流石に気が引ける。

早く身体中を締め付ける戒めを取り除きたい。

アダム早く帰ってきて!

それから1時間ぐらいして、アダムが戻ってきた。町民のような格好だ。金髪の長い髪のウィッグをつけて、後ろで一つで結んでいた。目の色は見知った茶色だ。

馬を一頭連れてきている。

「気分は?」

「悪くない。助けてくれてありがとう。ねー、あの後どうなったの?」

「話は後で。まずこれに着替えてくれ」

横を見ると、さっきまでいたアダムの仲間はいなくなっていた。

差し出されたものを受け取る。町娘のような服。

「アダム、悪いんだけど、後ろのホック、お願いします」

「………………………………………………はぁ」

アダムはためて、ためて、ためてからため息を落とす。

仕方ないでしょ。ここにはアダムとわたししかいないんだもん。

正装に近い衣装はひとりでは絶対に脱げない。

「後ろ向いて」

「はい」

下におろしていた髪を左右に分けて前に持ってきて、首を下に向ける。

上からホックが外されていくのがわかる。

腰のところのホックが取れるとドレスが下に落ちる。

「アダム、悪いんだけど、コルセットの紐のとこゆるめて」

後ろにあるから、自分ではどうにもできない。

「君はもう少し恥じらいを持つべきだ」

「わたしだって恥ずかしいわよ。でもアダムしかいないんだもん、しょうがないじゃん」

「はいはい。一瞬締めるよ」

うっ。締めて緩める隙ができたところで戒めを解き、下に続くホックも見事に外してくれた。わたしを締めつけていたものが音を立てて下に落ちた。

といっても下着のシュミーズはもちろん着ている状態だ。

はー、生き返る。

上から何か被される。

あ、町娘の服だ。早く着ろということらしい。

「ありがと」

お礼を言って、手早く着替える。

服を着ると後ろでアダムはドレスを整えてくれていた。シワとかも上手く伸ばすようにしてくれている。

ありがとうと受け取り、収納ポケットにしまっていく。

後ろを向かされた。頭の飾りが取られていって軽くなる。

櫛で丁寧に髪をとかしてくれて、そして簡単なハーフアップにしてくれた。

「街に入る。フォルガードの南だ。お腹空いたろ」

そう言われると、お腹が急に空腹だと主張を始めた。

馬に二人乗り。わたしが前だ。

怖かったら目をつむってと言われ、アダムはかなり早く馬を走らせた。

恐らく誰もついてきていないかをチェックするためでもあったんだろう。

だからひとつ目の街は飛ばして、さらにその先の街まで走った。

お尻が痛くてたまらなかったけど、お荷物なのは自覚していたので黙っていた。

降りた時、足がガクッとしてしまい、変な歩き方になってかなり笑われた。

宿をとった。防犯上の理由からひとつの部屋と言われたけど、今までもそんなことは何度もあったので気にしなかった。

実際ベッドに入ってから今までとの違いに気づくんだけど、この時は全く思いついてなくて。

夕飯を食べようと言われて、待ってましたと万歳をした。