軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1162話 提案②セインの次の手

久しぶりに見るガインは背が高くなっていた。

顔も精悍になったかも。

それぞれに挨拶した。

特にアラ兄とロビ兄には去年の学園祭でのことを詫び、そして感謝を告げた。

あの後、ガゴチから正式に謝罪の「謝りに行きたい」という文書が届いたんだけど、父さまがふたりに気持ちを確かめて、気持ちは届いているからこちらへの移動時間などを立て直しに使って欲しいと返したのだと聞いた。

トップが変わる、正式に引き継いだことには変わりないけど、上のふたりは牢の中。体制を変えていくのは、並大抵のことでなく大変なのは想像がついていたからね。

兄さまは不機嫌さは出していないけど、とても冷たい表情だ。わたしでさえ、話しかけるのをためらうくらいに。

「お疲れのところ、ありがとうございます」

ガインは挨拶を済ませると、そう切り出した。後ろには赤髪と青髪が立っている。ロサは護衛を連れていなかった。ブライがそうなのかな? ブライはロサの後ろに立っている。

ちなみにガーシとシモーネには扉の外で守ってもらっている。

メイドさんたちがお茶を淹れて出ていくと「本題に入りましょう」とダニエルが促した。

「第二王子殿下に簡単な話をさせていただきましたが。

セインが、ユオブリアに仕掛けたのはガゴチだと決定づけるよう画策しております。

セインはあの地を捨て、ガゴチを乗っ取るつもりです。そしてその次の標的はユオブリアとなります」

「そう情報を掴んだのですか?」

「そうです。事実をねじ曲げ、我らがドラゴンを盗ってきたとしたいようです」

「……ガゴチにはドラゴンを盗んでこれる実力があると?」

「それにはまず、我らはどうやって情報を得ているか、話さなくてはなるまい」

ガインはわたしに視線を送ってからまたロサへと戻す。

諜報活動のこと、わたしたちが話してると思っていたのかな? 秘密って言われたから言ってないよ。ロサはアダムから聞いたと思うけど。

「我が国には諜報部隊がいる。獣憑きと迫害されたり、奴隷に落ちて死にそうになっていたり、逃げてきたものたちを受け入れていったからだ。鼻がいいものがいるから、リディア嬢が変化をしたと見抜けたわけだ」

と、あの時の種明かしをした。

「では、変化した姿で各国に諜報員を忍ばせているわけか」

「そこは言質を取られたく無いから、言葉を濁しておこう」

言ったも同然だけど、確かに言葉にしたら、何がどうなるかわからないものね。

「ユオブリアには恩がある」

そういうから、みんな驚く。

「驚くってひどいな」

とガインは笑った。

「だからユオブリアを狙ったヤツを炙り出して、今度こそ 恩(・) を(・) 売(・) ろ(・) う(・) と思ったんだ。商会に忍び込ませてな。そこから何人かを通して黒幕がセインだとわかった」

ガインは長い足を組み替えて、カップに口をつける。

「セインまではそちらも行き着くだろうから、もうひとつ土産話を持っていこうと思ってセインを探った。そしたらとんでもない話が聞こえてきたわけだ」

「それがガゴチに罪をなすり付け、ガゴチを乗っ取る計画だったというわけですね?」

そうまとめたダニエルに、ガインはうなずく。彼は湯気のたつカップをテーブルの上に置いた。

「ああ、なるほど。セインに諜報部隊の正体がバレていたんだな。それでドラゴンを盗ったのはガゴチだとなすりつけられそうなのか」

納得いったようにアダムがうなずくと、みんなも頷いてる。

え? ブライとロビ兄と目があう。

寝てないはずなのに、会話が飛んだ気がするんだけど。

ノエルを見る。ノエルは何、姉さま?というように小首を傾げた。

ノエルも今の会話わかったの?

「ちょっと待って。今の話、わからない」

ロビ兄、勇者!

「第六大陸の報告を思い出して欲しいんだけど、彼らは 変化(へんげ) できるものはドラゴンのような魔物と通じ合えると思っているようだった。ユオブリアは獣憑きや奴隷の扱いが他国とは違うからピンとはこないけど、恐らく変化できるものは高位の魔物と通じ合えることもあるんだろう。これは報告前だけど、第五大陸でも聞いたから確かとなる。変化できる人は、精霊と話すことができる者もいる、と。精霊や高位魔物とも会話ができる、それが変化できるものなんだと思うんだ」

兄さまのまとめに、なるほどとうなずいてしまう。

そっか、そうなのか。変化できるから、わたしはもふさまやもふもふ軍団の言葉がわかるのかな? いや、小さい頃は変化できなかった。

ん? 変化できそうな遺伝子があるから、そんなスキルが生えたということ??

「そう、獣憑きと呼ばれる存在は、精霊や高位魔物と話せた実績があるのだろう。だから他大陸では常識になるんだ、獣憑きがいればドラゴンと話すことができて、卵を盗んでくることも可能だと」

な、なんて巧妙な。自分たちでやっておきながら、獣憑きと迫害を受けた人たちの受け皿になっているガゴチに罪をなすりつけようとしているなんて。

そっか。それで諜報部隊のことを明かさないと話にならなかったのね。納得。

アダムがチラリとわたしを見ながら続ける。

「で、ガゴチに罪をなすりつけ、ガゴチを乗っ取るというのはよくわからないけど、次に狙うのはユオブリアというのは同感だよ。再び攻撃してくるだろう。気に入らないみたいだからね、セインはユオブリアを」

「乗っ取りたいのは、諜報部隊をそのまま自分たちのものにしたいからだろうな。それにガゴチには小さいながらも〝聖域〟があるし、神聖国の〝証〟があると思っているから旨みがあるんだよ、セインには」

私たちはそれこそ固まった。

は? 聖域と神聖国の証があるですって?

「あ、正しくは〝聖域〟と神聖国の〝証〟があると思われているから、な」

「本当はないということか?」

ルシオが確かめる。

「聖域はただの過去の遺物。昔の神聖国のあった場所でもあるから、そこの神殿にしていたところが残っている。まあ、ちょっと他とは気が違うって気がしないでもないけど、聖域かどうかは正しくはわからない。調べようもないしな。

だけど、自分たちが神聖国の末裔と思っているセインの奴らは、現ガゴチの領域に、〝聖域〟と〝証〟があると思っていて、それが必要なんだろう」