軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1161話 提案①情報提供

転移でユオブリアに戻ってきて、キメリア大陸での終結を報告した。

そこにはロサもいて、わたしたちを待っていたという。

いくらショールやコートを着ても、夏のドレスでは冷える。ここからは非公式だというので普通のドレスに着替えさせてもらった。

部屋にはダニエルやブライ、ルシオ、アラ兄、ロビ兄もいた。

わたしたちが使節団として動いている間、残ったロサたちは騎士たちの中にいるスパイを探していた。けれど、どうしても絞り込めなくて、アリとクイの力を借りれないかとのことだった。鼻の効くふたりをね。

ふたりもリュックから飛び出てきて「やるー」と元気に叫んだ。前はね、わたしや家族に頼られるのは嬉しいみたいだけど、他の人たちはそうでもなかった。それがこの頃、みんなの役に立ちたいという思いが強くなってきたみたい。早速見て回ってくるという。ロサは案内するつもりだったようだけど、2匹だけで動く方が早いとドアの隙間から出て行ってしまった。

わたしたちを待ち構えていたのは、てっきりアリやクイへの力を借りるためだと思ったのだけど、それは違った。

ロサが王太子としてフォルガードに赴いた際、見知った者が近づいてきた。

それはガゴチの年若い将軍、ガインだった。

「ガイン!?」

「君に手を貸して欲しいと。誰に話を通すべきか迷った末、会談のためフォルガードを訪れた私を選んだようだ」

それは人知れず頼みたいことらしく、ユオブリアには秘密裏に来ているそうだ。

わたしが学園を休んだり、王宮にくると目を引くかも知れないので、この帰ってくるタイミングを選んだらしい。わたしたちが帰ってきて、ロサがわたしたちに軽く話をし、ガインと会うはずだった。けれど、魔物の溢れがあったためわたしたちの帰りが遅くなったので、ガインをすでに待たせているという。

「会うか?」

と尋ねられる。

わたしはガインに恩がある。アリの巣から脱出した時手伝ってもらったからだ。

まぁ、あの時脱出していなくても、すぐ後にみんなに助け出されていただろうとは思うけれど。記憶を失くしていたわたしが、ただ助けられていたら自信までは持てなかったと思うんだよね。記憶が戻ったとしても、あの時植え付けられた劣等感っていうのかな、自己否定の感情はずっと残ったと思う。

手伝ってもらったから達成できたことだけど、あの時行動し、そして仲間と脱出できたという経験則がなかったら、記憶が戻ってもわたしは「自信」を持てなくなっていたかもしれない。

だから。ガゴチの前将軍に言われなくてもガインを助けると言ったのは、その場しのぎではない。一回とか条件をつけたのは……。

ガインのことは嫌いではない。ガインはそういうところ見抜くのが上手い気がする。だからこっちに好意があるとわかれば、結構割に合わない頼まれごとをされる気がしている。失礼だけど。そして口がうまいっていうか、いつの間にかのせられている未来が想像できるので一線を引いているのだ。

わたしに 直(じか) に言ってくる事もできたはずなのに、ロサを間に入れることで、筋を通している。多分、国同士とすると大ごとになるし秘密裏には難しいから陛下でなく、ロサに頼んだんだろうし。そういうことを考えに入れられる人を、わたしは嫌いじゃない。

筋を通してくれたんだもん、こっちだって応えるべきだろう。

「あちらは何を提案してきたんですか?」

兄さまが鋭い声で尋ねた。

提案?

ロサは咳払い。

「今から言うところだった」

兄さまの目が疑っている。そんな物騒な目で見るのは、友達でもひどいよ。

深刻にならずにすむのは、そんな会話をしていても、チビドラゴンたちがパタパタと飛び交い、テーブルの上ではもふもふ軍団たちがお菓子を取り合っているからだろう。

もふさまは少しだけ上品に、わたしの膝の上で取り分けたお菓子を食べている。

「ガゴチは情報持ちだ。今ガゴチはある国から罪を着せられそうになっているそうだ。その国はセインで、ユオブリアを狙ったのもセインではなくガゴチだとなすりつけるよう動いているらしい」

「その話を信じたのか?」

兄さまの冷たい声。

「9割信じている。話していないことはありそうだけどな」

「なぜ、信じたのです?」

「ガゴチはガインが将軍になってから、先代たちの悪どい者たちとは全て手を切った。ガゴチは悪い評判だけが生きている。そんな中新しく関係を作っていくのは大変なのに、ガイン将軍はそちらを選び達成してきた。本当に自分の国がガゴチって胸を張って言える国にするために奮闘している。それはずっと見てきたから知っている」

そうか、ロサはガインにも目を配っていたんだ。

「ガゴチと共同戦線を張りたいと思ったんだ。

くれた情報だ。あの奴隷の子供の中に一人セインから潜り込まされた潜入者がいるそうだ」

えっとわたしたちは揃ってロサを見上げた。奴隷の子供って、あの紫龍の幼体やドラゴンの卵と一緒にいた、あの子たちのことだよね?

「策があるようで、みんな揃ったら話すことになっている」

「私は反対です」

兄さまは意思が固い。

「リディア嬢は?」

「ガインにはアリの巣から逃げ出す時に手を貸してもらったから、できることはしようと思う」

みんな揃って兄さまを見つめる。

「リディーは絶対そういうと思った」

深ーいため息をつく。

「アイツは私が反対することも、リディーの意見が通ることもわかっているんだ。だからこのタイミングでリディーもいる時を狙っている。だから嫌なんだ、アイツは」

苦笑いしてしまう。

あっちの策士、恐らくお付きの赤髪の方。あの人が見抜いているんだと思う。

「じゃあ、いいんだな?」

ロサがもう一度確認をとり、わたしたちはガインの待つ部屋へと移動した。