軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1160話 キメリア滞在⑥増幅

ユオブリア組を含んだわたしたちの部隊は、ハオン側を選びそちらへと軌道修正し馬を走らせた。

どれくらい走った時だったか、警鐘の音が聞こえた。

魔物はこっちに来ているようだ。

街を囲む壁を目視できた。門を閉めている。

その門に体当たりしているのは魔物たち。

見たことのある〝マヌケ〟は見当たらなかったけど、結構な数の魔物がいた。

「リディア嬢、街に被害が行かないよう防御のカーテンを」

並走してきたアダムに言われる。

「わかった!」

みんなが攻撃しても街に被害が及ばないようにだね。

わたしは胸の前で手をくみ、祈るように魔法を発動させる。

兄さまがしっかり後ろから抱えてくれるからできる芸当だ。

防御のカーテンを街を囲む塀に合わせて展開する。

近づいていくと、壁は高く聳えていて、そこに群がっている魔物も十分大きかった。アダムは馬に乗ったまま、片手を突き出して魔法攻撃を仕掛けた。

群がっていた魔物たちに光があたり、家一軒はありそうな大きさの魔物5体が吹っ飛ばされて宙に舞う。

怖っ。

「続けーっ」

王太子殿下が片手をあげ、突っ込んでいく。

え? 何しているの?

わたしたちと同じぐらいの位置で馬を止めたのは、恐らく魔法で攻撃する後方部隊だろう。馬の上で何やら紙を出し始めた。

そしてその紙を投げ、そこに向かい水魔法を繰り出すと……その紙を通ってから水の威力が倍以上になって魔物にぶち当たった。

あの紙、魔法陣が書いてある!

トルマリンさんに教えてもらった編む魔法。魔法を編むことで発動させる魔法陣。恐らくこちらの王族の方々はそこまで魔力が高くない。だからそれぞれ攻撃用に応対する魔法陣を描いておいて、魔法を増幅させるのに使ってるんだ。

こんな使い方もできるのか!

と思ったのはわたしだけでなく、イザークが一番ウキウキしている。新しく知った方法を自分でも使ってみたいに違いない。

イザークは増幅の魔法陣を手元に描くのではなく、魔物に向けて魔法陣を描いた。そしてその中央に攻撃を加える……アダムの攻撃みたいに、その周りの魔物3体がとばっちりを受け宙に浮いた。

イザークの頬が上気している。

すごっ。ダフラの戦い方をマスターし、自分用に組み込む。一発で。

それを見たアダムも同じように……。

わたしはルシオから会得した、聖力を通してからの魔法攻撃を試してみようと思っていたんだけど。アダムとイザークがはっちゃけたもんだから、魔物をあっという間に倒していき。ノエルも戦うことなく、赤ちゃんたちももふさまも稼働せず、魔物たちは屍の山となった。もう動ける魔物はいない。

「こ、こんな短時間で。被害もなく……」

誰も怪我することなく、溢れた魔物は殲滅された。

門も開かれ、街の人たちが膝をつき、額をつけて王族にお礼を言った。

王太子殿下は今日の活躍は、ユオブリアの友人たちだとわたしたちを紹介した。

あっという間に解決され、とりわけイザークがご機嫌だ。

王都へと戻ると、王太子からの報告で王さまからまた感謝された。

アダムは「もしよければ定期的にダンジョンに挑みましょうか?」と言った。

多分どんな贈り物よりも、その方が喜ばれるんじゃないかと思えた。でも他国への干渉と思われるかもしれないか。と思いもしたんだけど……。

王さまが立ち上がった。そしてアダムに向かって膝を折った。

え? 王太子殿下たちもそれに倣う。

ええ?

「あのダンジョンは冒険者ギルドから嫌われたダンジョン。魔物が強いわりに実入が少ないようで、冒険者たちが嫌がる。それでも頼んではいるが、こうして頻繁に溢れが起こってしまう。そのダンジョンにユオブリアは手を差し伸べてくれるのか?」

「お立ちください。我らは友好国ではありませんか」

「感謝する。ダフラはユオブリアに友好を誓う」

実際の強さを見たら、軍事的な意味でダフラはユオブリアを毛嫌いしてもいいはずだ。だってわたしたちはただの使節団。その台頭であるアダムとイザークの垣間見えた強さで思うことがあったはずだ。こんな魔法の使い手がうじゃうじゃいるのがユオブリアなのだと。本当はアダムたちの強さは稀ではあるけど、ほとんどの人が多少なりとも魔法を使えるから、「強い」と思う。

わたしだったら助けてもらいたいことがあっても、何を要求されるかわからないと思いがちだ。この国は潤ってる。恐らく金がどこかで出るんだと思う。水が多いことも潤う理由ではあるけれど、至る所にゴールドの意匠が施され、アクセサリーもゴールドオンリー。とにかく湯水のようにゴールドが使われている。

ゴールドを要求されたり、国を乗っ取られたり。そんなことを心配しちゃうけど。

信じてくれたのか、さらなる奥の手があるのか。

後から、わたしたちが水の精霊に祝福を受けた者だから、問答無用に信頼しているってわかるんだけど。

とにかく、第五大陸への使節団の役目は200%という形で達成できた。

ユオブリアの陛下が、他国から攻められるはずはないと自信があったのが、初めてわかった気がした。武力だけならわからないけど、魔力の多い人が生まれやすく魔法を使える人が多いってことは、防衛値が高い。

ユオブリアは脅威となるはず。

それなのにセインはユオブリアに仕掛けてくる。

同じ第三大陸のフォルガードは魔法大国と呼ばれている。魔力の多い人がいるというより、少ない魔力でも効果的に魔法を使う方法を研究する人が多くて、そう呼ばれてきたんだと思う。フォルガードも平民でも魔法を使える人たちがいる。

セインも多いのかな? だからユオブリアに向かってくるわけ?

だってさ、武力でいくつかの辺境を同時に攻撃することも、魔力量の凄まじく高い陛下をなんとかするつもりで、それを成し得る未来が示唆されているわけだから、それができるってことなのよね?

第五大陸だけが、魔力が少ないのかしら?

そうだとしても、第二大陸、とりわけユオブリアに魔力の多い人が集まっているのは間違いないと思う。油断、それから敵の数の多さ、それも負ける要因にはなるだろうけど。数の多さだって、世界中からユオブリア以外の国からユオブリアが狙われるならともかく……やっぱり、人以外の介入が関わってくるだろうな。

それこそ、ドラゴンを操れるなら。ドラゴンをユオブリアで操ることができるなら、壊滅はすぐできそうだ。でも「すぐ」にはしない。それは、どうして?

ベルゼの手紙を書かれた通りに受け取り、信じるわけではない。

今は北の山脈をつぶさにハウスさんに調べてもらっている。魔力を這わせることで、ね。

聖域に行くにしても山脈だから絞り込まないとだ。北にある聖域は、もふさまの聖域とはまた違う。シュシュ族にも調べてもらおうかと思ったけど、あの素直な狐たちに話を通すことで、逆に敵に情報を与えたり、敵の駒にされちゃう危険性を考えて、ハウスさんの情報収集のみに頼っている。

……セイン周辺の人々の魔力量を調べておいた方が良さそうだ。

ノエルと手を繋いでの帰りの転移中、わたしはそんなことを考えていた。