軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1163話 提案③却下

「そこまでわかっているなら、場所を譲ってやったらどうです? そうしたら絡んでくることもないかもしれませんよ」

ガインが不愉快だというように兄さまを見た。

「で、ガゴチはどうしてユオブリアを巻き込みたいんです?」

イザークが話をつめる。

「本音を言うと、ユオブリアはどうでもいいんだ。借りたいのはリディア嬢だけ。でもそう言ってもナイトの皆さんが許してくれそうもないから、一緒くたに巻き込んでいる」

はい? わたし?

みんなの頭脳や能力じゃなく、わたしの助けがいる? ってことは……。

「自分で言うのも虚しいけど、変化したわたしは特に役に立たないよ?」

弱っちぃし、魔法は使えない。精霊ちゃんと話せる利点はあるけど、精霊ちゃんは第五大陸だし。たとえ話せても今度はわたしの言葉は人に届かないんだから。

ぷっ。

ガインが吹いた。

吹いた?

後ろに立つ二人の護衛も、横に顔を背けて肩を揺らしている。

それに、ノエルと兄さま以外、みんな笑いを堪えているんですけどっ。

「リディア嬢は場を和ませる天才だな」

? どういう意味?

「心理戦に持ち込み、それよりはマシと思わせたかったのかもしれませんが、リディア嬢にはそんな駆け引き通じませんよ」

「俺も彼女にそんなことは望んでいない」

よくわからない会話だ。

「ちょっとみんなもはっきりわかるように言ってくれない? 結局、ガインはわたしに何をさせたいの?」

みんなの視線がガインに集まる。

「俺の花嫁になってくれ」

「却下」

「断るの早すぎだろ」

「当たり前でしょ。わたしは兄さまと婚約しているし、結婚するの」

「本物の花嫁ってわけじゃない、ふりをして欲しいんだ」

「それも却下。わたしに何度嘘の婚約をさせる気よ」

兄さまと婚約破棄して、第一王子と嘘っこ婚約して、そのまま第二王子といい感じってことにして、謀反のためにふりをしただけでーす、ってもう経験済みなのよ?

そんなの一回で十分でしょ。またやったら、嘘婚約ばかりになる。

「バイエルン公からはダメだと言われると思っていたけど、君から却下されるとは、傷つくな」

「他の方法を考えてちょうだい」

「……協力はしてくれるのか?」

「花嫁以外ならね」

ガインはニッと笑った。

「花嫁を演じてくれるなら、リディア嬢が喉から手が出るほど欲しい情報をくれてやるんだが」

「あら、わたしがガインから欲しがる情報なんて、あるとは思えないけど」

「人型に戻る時、何か困ってるんじゃないか?」

え? 人型に戻る時?

体を休める時間は必要だけど、少しずつ少なくて済むようになってるし……困ること?

ガインの後ろのお付きの二人がわたしを見てニッと笑う。

あ。あれか。服のこと、か。

「一度コツをつかめば簡単ですよ?」

そう言ったのは赤髪。

コツをつかめば簡単なの!? それはめっちゃそそられるんだけど!

「リディー、大丈夫だ。私は気にしないから」

兄さまが気にならなくても、わたしは気にする!

「それに、そうだ、キュア、キュアに聞いてみたらどうだろう? ね、ガゴチに頼らずとも誰かが知っていることかもしれないよ?」

キュア、か。うーーん、確かにキュアに聞いてみるのも手だね。

でもその前に。

「あんた、ウチに諜報員を忍ばせたの?」

言ってからガインは一国の将軍になったんだって思い出して不敬かと思ったけど、ウチを探ったのなら、国のトップでも「あんた」呼びされても仕方ないと思う。

わたしが困っているって知ってるってことは、ウチにも諜報員を忍ばしたんじゃないかと思えるもの。

「それはない」

それならどうやって知ったわけ?

訝しんでいると、ガインは言った。

「よくリディア嬢は体調を崩したとか、いなくなったとか聞こえてくるからな。諜報員を忍ばせようとしたことはある。けれど君の家の結界は強固だ。認めた者しか入れない。小さな獣であっても。どの家も、だ」

ああ、仮想補佐綱も強まっているから、遠く離れた地の家でもハウスさんの「網」は張り巡らされる。そうかそれぞれの家も領地の家のように育っていたのね。

「近くまでは行って様子は確かめさせてもらった。君に何かあったのだったら、各家があんなに静かで普段通りなはずはないからな」

家の中に入れないなら、外から見るってことか。

何か変わることがあったのなら、人々の行動を見ればいい。そういうこと。

っていうか、わたしの「無事」を気にしてたわけ?

「変化するようになった時の最初の難関らしいからな、元の姿に戻った時に困ることってのは。きっとリディア嬢もまだできないと思っただけだ」

一応筋は通っている。

ガインはわたしたちに友好的だと知らしめるためか、いくつか手の内を暴露する。

ウチの結界は本当に強力。

ついで城の中なども相当なものだそうだ。

魔物の入れない結界は当たり前だけど、その他「魔」の観点から排除、「神官力」の観点から排除と、組み合わされているものらしい。いくつもの違うアプローチの結界が張られているようだ。

セイン自体を探れたのは、セインの「神殿」方面が制裁を下されたため機能していない。ゆえにそこに「隙間」ができたからだという。

ウチの諜報員は優秀なんだなぁと思う。お城の中でも自由にできるし。

あ、彼らは小さくなっている。というか時を遡った姿になっているんだよね。だから魔力とかも少ない。だからかな? それで結界の網目を潜り抜けているのかもしれない。

ふと思い出す。アオがもっと小さな「虫」をテイムしたことがある。

知能が高いわけではないので、お願い事は1点だけ、簡単なものしかできないそうだけど、他の諜報員たちができないことなのでは? 臨機応変さは求められないけど、どこにでも忍べるし気にされない存在。

これは強みになるのでは?

たとえば虫に録画録音の魔具を持たせ、指示通りに動くことをお願いできたとしたら?

「機嫌は治ったかな?」

思わずニヤけていたようだ。

わたしは慌てて表情を引き締めた。