軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1134話 暴く⑪スパイ

その場にいたほとんどの人がわたしと同じ反応だ。

第六夫人が黒幕だろうとは思っていたけど、そこまでだったはずだ。

いきなり、セインのスパイで、立太子妨害していたことまで一足飛びに断定していいわけ? えええええ??

知らされてなかったのはメルヴィル侯爵のことだけだから、そこからわかったのかな?

第六夫人は鼻で笑った。

「私が間者ですって?」

夫人は父上であるメルヴィル侯爵も睨みつけた。

「教えてくださいます? どう私を陥れるつもりなのか?

話の流れから集会の関係者、もしくは王宮に危険物を持ち込んだとして言いがかりをつけられるのかと思いましたが、間者? 父上は外国に寝返るつもりでしたの?」

メルヴィル侯爵がセインの間者だと吐いて、娘であるレベッカ夫人もそう思われたのかと思ったようだ。

「いいえ、メルヴィル侯爵は外国の手先でも、間者でもありません。ユオブリアに固執もしていませんが、外国にも固執していない。ただ興味あることを研究さえできればいい人の集まりだ、メルヴィル家というのは」

え、じゃあなんの罪を告げたの? メルヴィル侯爵は?

「あら、それではなぜ私が間者ということになるのかしら、不思議ね?」

扇で口元を隠し、アダムのことを睨め付ける。

「消去法ですよ。側室の中で立太子を妨害したい者、それはあなたしかあり得ない。たとえば特定の王子を王太子にしたくない、これだったら犯人を絞り込むのは難しくなりますが、あなたは欲張りすぎた。どれもこれも一気にまとめ、 誰(・) も(・) 王太子にならぬよう紡ぎあげ、〝犯人〟も作り上げた。

自分が賢いと思っている人の陥りやすいミスですね。欲張りすぎたんです。挙げ句の果てには国を潰そうとして、それをまた誰かの罪になすりつけようとするなんて。

多少の賢さがあれば、王太子ひとりの妨害ぐらいはできたでしょうけど、それ以上の賢さがない人がやると破綻します」

アダム煽るなぁ。陛下と第六夫人の会話で、彼女のアイデンティティーに気づいたからだろうけど。傷口に塩を塗っている。

第六夫人はキリロフ伯を視線だけで傷つけることができそうなほど、睨みつけた。

キリロフ伯は首を横に振る。自分は何も話してない、と。

下請けたちは限られたことしか伝えられてないはずだから、最終目的をわかってない。知っていたのは恐らく第六夫人とキリロフ伯のみ。

キリロフ伯はこうして捕まっていて、いくつものことが陛下たちにバレている。キリロフ伯が話したんだと、彼女はそう思っただろう。

ただ、メルヴィル侯爵が連れてこられているのは何故だかわからない。

侯爵が入ってきたところで、第六夫人は態度を変えていったので、何か第六夫人の打撃となりうることなのだろうけど。

第六夫人の視線が、アダムに戻る。

「黙りなさい! 廃妃の犬が!」

なっ。

「なんにも知らないのに、適当なこと言わないで!」

思わず席をたち口にしていた。考えてみればわたしだって多くを知ってるわけではないけど。

わたしの膝の上にいたモフさまは、地面に着地していた。

アダムが驚いたようにわたしを見る。そして第六夫人に向き直った。

「あいにく私は人間で、あなたと違い、犬に成り下がったことはありません」

「な、何ですって!?」

「国を潰そうとは、どういうことですか?」

バンプー殿下が声を上げた。

「レベッカ夫人、もしくはその後ろにいるセインのそのまた後ろの誰かが考えたんだ。

ユオブリアを消そうとね。現在ユオブリアと争っている国はない。何もないところから火種を作れば、それは強奪。世界から非難を浴びるだけ。

だから自滅したように見せたかった。王位継承権争いなんか格好の理由になる」

ロサの後をダニエルが続けた。

「王位継承権の一桁のものから翼をもいでいきたかったんですよね。

第二王子殿下は婚約者が狙われました。婚約者のいることは王太子の条件ですから」

その後をイザークが続ける。

「第三王子、バンプー殿下と第五王子ハイド殿下は母上である第四夫人がロサ殿下の婚約者を狙ったことで、罰せられる予定だった」

「リノ嬢が式典の時に狙われた……ああ、確かにあの時捕まえたものたちはセインの者であったな」

ルシオはそう口にした第二夫人にうなずく。

「その通りです。けれど、リノ嬢だけを狙ったのではなかった。あの場から転げ落ちて命を落とす危険もありましたが、怪我をするだけかもしれない。ですから敵はセローリア家に罪を被せる気でした」

「どういうことですの?」

笑顔は絶やさず、けれどあまり感情を見せない第三夫人が、目を大きくしている。

「オレたちはある情報筋から仕入れた情報で、セローリア家が陥れられそうになっているのを知りました。オレたちが、セローリア家の荷として暴かれるはずだった違法物を、ロクスバーク商会の船に返却したんです」

ブライが告げれば、2年生たちもざわざわしだした。

大人から違法物の荷について、耳にしたことがあるのだろう。

「そのロクスバーク商会もそのうち言い始めることでしょう、第四夫人から指示されたことだと」

兄さまの言葉に第四夫人が反応する。

「そ、そんな違法物だなんて、それもセローリア家に、私は何もしておりません!」

「第四夫人、第三王子殿下とウチのエリンの婚約話。それも断られるとわかっていると、ロクスバーク商会に話しましたか?」

わたしは尋ねた。

第四夫人は少し眉根を寄せる。

「一度は断られたと言ったと思いますが、断られるとわかっているなんて言っておりませんわ」

ちょっとムッとしている。

「ロクスバーク商会はほうぼうで、シュタイン家はエリンの婚約話を断る。なぜなら、姉のわたしが第二王子殿下に嫁ぐからと言っていたそうです」

第四夫人は開いた口が閉じないようだ。

「ど、ど、どういうことです。そうだったんですか? だからエトワール嬢からは断られ、私のみが知らなかったということですか?」

リノさまと目を合わす。

リノさまが第四夫人と話して感じたこと。第四夫人は例の噂にはかかわっていなかったのかもしれない、と。どうもね、話がズレるんだそうだ。話を聞いていくと。

それでリノさまは思い当たった。第四夫人と懇意のロクスバーク商会から聞いたことだから、第四夫人の意思だと思い込んでいた。でも、直接第四夫人から聞いたことはなかった。

まさかいっかいの商会が、王族がさも言っていたかのように偽るなんて、危険なことをするとは思っていなかった。

「ロクスバーク商会が勝手に吹聴していたのです。だからこのことは捕らえているロクスバーク商会に尋ねてもらいましょう。

でも第四夫人もわたしは王家に嫁ぐべきだというようなことをおっしゃられていましたよね?」

だからややこしくなったのだ。

「それはそうですわ。リディア嬢の出生図は王族と一番相性がいいのです。

リディア嬢はいい方ですけれど、よく厄介なことに巻き込まれていらっしゃいますでしょう? それは星回りで決まっていることなのです。そこから抜け出すには強い星回りに頼ることが重要なのです!」

第四夫人は力説した。

……ネイタルチャートか。

なんだかガックリする。力が抜けた。

占星術。すごい学問だとは思うけど、それに傾倒しすぎて、他のことが見えてなくて、あなた、全ての罪を被されそうになっていたんですよ!

って、人に何かを言える立場じゃないか。

またそれを後ろで操っていたのが、わたしになるはずだったみたいだから。