軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1135話 暴く⑫やり返す

占星術関連では、もうひとつわかったことがある。

占星術者を多く輩出する家系であるガラットーニくん。彼から面白いことを聞いたそうだ。からかさちゃん、ミープ・ロイター嬢も占星術に強いそう。

教室で課題のホロスコープを見ていたガラットーニくん。そのノートを落としてしまった。拾ってくれたからかさちゃんが、「3度の金星、吉兆とのトラインが見事。30代で花開きそうですね」とパッと見ただけでつぶやいたそうだ。

そのホロスコープは過去に生きたある人のネイタルチャートで、星回りを読み解く課題だった。ガラットーニくんが半日眺めて検証していったものを、からかさちゃんは一瞬見ただけで言い当てた。

それはよほど学んでいないとわからないレベルだという。それでからかさちゃんも占星術繋がりで第四夫人と関わりがあるのかなと思ったんだけど、そういうわけでもないようだ。

「第四夫人はご存じないようですね。ロクスバーク商会は吹聴していました。

エリンに婚約を持ちかけたけれど、姉妹の争いになるからと断られた、と。

姉妹の争いとはエリンが第三王子のパートナーとなり、わたしが第二王子殿下の側室を望んでいるそうです。

セローリア家にも同じように吹き込まれていました。

セローリア家の荷になるはずだった違法物を用意したのもロクスバーク商会。

市井でばら撒かれた術具、こちらはセレクタ商会。

その術具は集会でも使われていました。

その術具が、第四夫人の部屋に置かれているはずだったんです、おわかりですか?」

ざわざわが大きくなる。

「話が長いわ。どこで、それが私のしたことになりますの?」

第六夫人だ。

「王家とシュタイン家に恨みを持つものたちを集めたのは、そこにいるキリロフ伯です。第六夫人もキリロフ伯をご存じですよね?」

「存じております。キリロフさまが何をおっしゃったかは知りませんが、私は関係ありません」

「船舶権、酒造権、手にしたかったようですけど、押さえましたよ」

教えてあげても、第六夫人は表情を崩さなかった。何を言ってるの?という感じだ。

「それにしても、セインにはがっかりです」

さっき、第四夫人の意味深の言葉は占星術に傾倒していただけというのがわかりガックリきたからか、思ったよりがっかりの言い方に気合いが入ってしまった。

「とても中途半端でした。先ほどアダムが言ってたけど、頭が悪いのに欲張りすぎましたね。全部のことに繋がりを持たせた。成功したらきれいなシナリオですよね。

第二王子殿下は婚約者を失い、王太子候補から外れる。

第三王子殿下と第五王子殿下は夫人のしたことでとばっちりを受けてこれまた候補から外れる。……あとは幼いフローリア王女だけ。陛下は王女がもう少し大きくなるまで、立太子は諦める……」

「第四王子殿下は? ああ、継承権を破棄したからですか? 聡明なアガサ王女をお忘れではなくて?」

第六夫人がまた元気になって発言し始めたので、仕掛けるのは今かなと思った。

わたしは唐突に尋ねる。

「お菓子、おいしかったですか?」

「え?」

お皿が空になっているのは一番最初に確認したけどさ。

「焼き菓子です。いかがでした?」

面食らっている。

「ええ、おいしかったですわ」

夫人は優等生の答えをした。

「それはよかったです。みなさまも喉が渇かれたでしょう? ひと息入れましょう。みなさまに配ってちょうだい」

わたしはメイドさんに合図を送った。お願いしておいたのだ。

温かい紅茶。

「わたし、やられたことはやり返すことにしておりますの」

第六夫人に睨まれる。

「成人以上の方にはお酒を入れさせていただいてます」

「まぁ、これは南のハビカスのお酒では?」

匂いだけでわかるとは。ハイレベル淑女の嗜みってやつ?

「妃殿下、ご名答です。このために 伝手(つて) を使って特別に取り寄せました」

成人した夫人たちにはお願いしてある。このお茶会でお菓子に絶対手をつけないでくれと。第五夫人にはフローリア王女さまと同じクッキーを出したので、フィナンシェのような焼き菓子を食べたのは第六夫人だけだ。

第四王子とアガサさまのことを聞かれ、お菓子を食べたか確認して。やり返すと公言し。そしてお酒入りのお茶を出す。

ここまであからさまにすれば、いくらなんでも意図に気づくだろう。

他の成人した夫人たちはフィナンシェのような〝お菓子〟は食べていない。砕いたドライフルーツを練り込んだ焼き菓子はね。

皆さま、おいしそうにお茶を飲まれた。

香りでお酒が入っているのはわかるはず。

「第六夫人、ぜひお召し上がりください。第六夫人のために、わざわざ取り寄せたんです」

わたしはにっこりと笑う。これは犯人にだけグッとくるメッセージなのだから。

目がこの娘、本気か!?と言っている。

本気ですよ。犯人はあなたですね? 心の中で問いかける。

さて、ここで飲むか、飲まないか。飲まなかったら、わたしは追求するよ。逃げ道はいくらでもあるだろうけど、ここまで疑われる要素が集まったら逃げるのも難しくなるよね。

ドライフルーツの練り込まれた焼き菓子。そしてお酒。

このふたつのつながりにピンとくることこそが、犯人の証明となるのだから。

さて、仕上げにいこう。

「あ、第四王子殿下とアガサさま、でしたね。夫人がこの手を使って、わたし共々亡き者にするつもりだったじゃありませんか」

「はっ」

第六夫人は笑い出した。体をくの字に曲げて。

王子と王女を亡き者にというワードがでて、その犯人と言われた夫人は狂ったように笑う。

子供たちは立ち上がって部屋の隅に固まる。怖かったのだろう。正気でないのは見てとれるから。なるべく距離を取ろうとしている。それがいい。

もし大立ち回りでもされたら……魔法の使い手がいっぱいいるから変なことにはならないと思うけど、念のため、ね。

笑い終わった第六夫人は。カップを持ち上げて、中身を床に捨てた。

「そう」

第六夫人は理解したというように頷く。

「あの時、お酒の匂いに酔ったのではなく、気づいていたのね。もう、あの時から……。でも全部の説明がついてないわ。

そうやって王位継承上位者を退けさせ、立太子を妨害する。そこまで? あなたたちが掴めたのは?」

「まさか! それを全部第四夫人に被せる気でしたね?」

「ふふ、どんなふうに?」

「部屋が譲られていなければ、集会や市井で使われた術具が第四夫人の部屋から出てきます。ロクスバーク商会も証言するのではないでしょうか? 第四夫人から荷をセローリア家の積荷に忍ばせるよう言われたと」

第六夫人の目は笑っていないけど、口元だけは歪んで笑っているように見えないこともない。

「そこでびっくり、違法物が牙を向きます。ユオブリアは半壊か全壊か。全てが終わった後に、噂が流れるのでしょう。

全てはリディア・シュタインが目論んだことだと。側室、いいえ、セローリア令嬢を亡き者にして王妃になりたかった令嬢が。第四夫人にを隠れ蓑にして、指示を出し起こしたことだと。

集会で何にでもわたしを絡め悪評を立ててましたからね。わたしの名前と悪い心証だけが人の心に残り、ああ、相当悪どかったみたいだものね、いかにもやりそうだと話が大きくなっていく。一国を滅ぼす悪女の出来上がりです」

違法物が引き起こす悲劇のことは詳しく言わずに 端折(はしょ) っておく。向こうからの発言を取りたいからだ。

第六夫人はゆっくりと手を叩いた。拍手のつもりのようだ。

わたしは爪を噛むふりをする。少しだけ悔しそうに。

「ひとつだけわからないんですよね。あの違法物はどうやって集めたのかなって」

第六夫人の目に一筋の光が差し込んだ。