軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1133話 暴く⑩黒幕の失態

第六夫人の呟きで、第四夫人が追い詰められていく。

「黒幕もバカなことをしました」

アダムは嘲笑う。

え?

「すべては第四夫人を指すように、積み上げられている。けれどやりすぎましたね。

ばら撒きや集会で使った危険物も第四夫人が用意していたとしたかったようですが。第四夫人が黒幕なら、自分の部屋ならともかく、一日置きに訪れる王女の遊び部屋にそんなものは置きませんよ。

これは策に溺れた馬鹿な黒幕がおかした失態です」

! そうだ、その通りだ。

王女殿下の遊び場となったのだから、そこに置いておいたら見つけてと言ってるようなものだ。

ノックがあって驚いた。

入ってきた執事さんが陛下に耳打ち。

「入れ」

陛下が大きな声を出した。

兄さま、エリン、ノエル、ブライ、ジェイお兄さんが部屋に入ってきた。

騎士たちに捕縛されているのは、金髪の目の小さな人だ。顔色が悪い。

彼がキリロフ伯だろう。

「キリロフさま?」

からかさちゃんが小さく呟いた。アダムがチラリとからかさちゃんを見る。

「陛下、第二王子殿下、キリロフ伯を捕まえて参りました」

ブライは胸に手をやり頭を下げる。

なんの容疑なのかは言わなかった。

「ミープ・ロイター嬢、彼のことを知っているみたいだね?」

「は、はい。家に来られたことがありますから……」

「それだけ、かい? 栞はこちらの御仁に納めたのでは?」

さるぐつわをされたキリロフ伯は、鋭い眼差しでからかさちゃんを見ている。それは「何も言うな」のアイコンタクトだったと思うけど、陛下や王族たちの前、それから「家」の悪事をちらつかされて、萎縮している。とても気づけるような状態ではない。

「わ、私は寮で過ごしているから詳しいことはわかりません。納期をおじさまのところにしたのかは知りません。けれど依頼があったのは」

顔をあげ第六夫人と目があった瞬間、からかさちゃんはショックを受けたように押し黙る。

足の力が抜けたようにストンと椅子におさまって、蝋人形のように動かなくなった。

「家が何をしていたとしても、少女を追い詰めるのはいかがかと思いますわ」

第六夫人は冷たい目でアダムを見据えた。

お前がいうか?

「それに、この者は何の容疑で? 陛下の御前に連れてきましたの?」

「嫌だなぁ、部屋に入れることを許可されたのは、他でもない陛下ですよ」

第六夫人とアダムの視線が衝突して、バチっと音を立てそうなただならぬ雰囲気だ。

からかさちゃんだけでなく、2年生、それから落ち着いてはいるけれど、アイボリーさまもマーヤさまも顔色が青いを通り越して白い。

「……そうでしたわね。陛下、この者をどうして部屋の中に入れたんですの? 容疑は何ですか?」

「わからなくても想像はできるだろう。学園生である子どもたちがいるところに連れてきたのだ」

冷静に陛下はおっしゃる。

「集会の関係者ですのね……?」

本当は違うけどね。

首を横に振りそうになったキリロフ伯は、後ろ手に縛られたロープをブライにキツく持ち上げられ、動けなくなる。

その様子に、子どもたちはまた震えあがった。

「第四夫人、彼を知っていますか?」

今度はロサが第四夫人に尋ねた。

「存じあげませんわ」

第四夫人は目を細めて、否定する。

「第六夫人、いかがですか?」

「私も存じあげません」

「ブライ!」

ロサがブライに声をかけると、ブライは胸に手をやり、振り返ってドアから出ていく、そうしてまた誰かを連れてきた。初老の小柄な、けれどガッチリした人が背を丸めている。両手首を縛られ、連行されてきた。

「な、どういうことです?」

第六夫人は立ち上がり、憎々しげにロサを睨んだ。

「お尋ねしたいことがありご足労願ったのですが、そこである罪を告白してくださりましてね。このような扱いになっております」

第六夫人の仮面が剥がれる。

してやられたと苦いものを噛んだような表情は一瞬。それからロサとアダムを睨みつけ、その視線を陛下に移した。

「これはリディア・シュタインが王族入りする発端となる演奏会ではなく、私を陥れるための罠だったのですね?」

第六夫人は陛下に確める。

「10年も陛下と国に尽くしてきた私に、あんまりですわ」

「10年一緒にいたレベッカだから、温情を持って尋ねる」

陛下の言葉になぜか泣けそうになった。あ、いつもよりずっと感情の入った声だったから……。

「余に言うことはないか?」

「何をです? すべては私を陥れるための罠でございましょう? 睦言(むつごと) を交わすように〝愛している〟とでもいえば信じてくださるのですか?」

第六夫人は本気で怒っていた。陥れられた人の怒りだ。

わたしたちは間違えた? そう思えるほどに。

「ああ、信じているぞ。お前は賢く、誇り高い淑女だ。余を愛したことも、国への想いも嘘ではないはずだ。今、それを凌ぐ思いがあるだけなのだろう」

「陛下、ご説明を。レベッカ夫人が陥れられると言うのはどうしてですか? レベッカのお父上に何の罪があったというのです?」

後から連れられてきた人は第六夫人のお父上のようだ。ということはメルヴィル侯爵さま。メルヴィル家が立太子妨害を考えたの?

いや、国を潰すことを踏まえているのだから、外国が絡んでいるはず。

「レベッカ、余にいうことはないか?」

「女性を侮るのは、いい加減にやめていただきたいですわ」

第六夫人はそう陛下を睨んだ。

「余がいつ侮った?」

「こんな不十分な誰かの告発だけで、集会、ひいては王宮に持ち込んだ危険物を、すべて私のしたこととしようとしていること、それ自体、侮っているではありませんか。取り調べに子供を使っているところも!」

「余は誰も侮ってはいない。だからこそ、次代を担う者たちに今起きている騒動をおさめるよう示唆したに過ぎない。

不十分な調べを鵜呑みにすると思うか?

いくつもの角度から検証して、証拠がこうして続々と集まっている。

お前がセインの間者だということは」

え? 断定?