軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27-29 少女たちの帰郷

和やかに終えた宴会の翌日、つまり26日。

フェナ、ラルゥ、ジュニら3人がラリオ村に帰る日である。

「フェナ、元気でな」

「ラルゥ、元気でね」

「ジュニ、またいつか会おうね」

村人や、カイナ村に残る少女たちとの後ろ髪引かれる別れを済ませ、『コンロン3』は大空へ舞い上がった。

「……名残惜しいわね」

「うん、いい人たちばかりだったし」

「でも、やっぱり家が恋しいわ」

3人は、カイナ村を懐かしんだり、故郷を恋しがったり。

そんな中、『コンロン3』は30分ほどでラリオ村に到着した。

敢えて高速を出したのは、2つの村が思ったほど離れていはいないと印象づける目的がある。意外と近ければ、またすぐ会えると希望を持てるからだ。

先日、帰郷させてから一旦カイナ村へ連れ帰り、1日おいて正式に帰郷させるのも、同じく気軽さのアピールである。

こうした印象付けは、全て老君からの提案であった。

前回と同じ村外れに着陸した『コンロン3』。

今度は、村人も驚いたりはせず、すぐに集まってきた。その中に村長もいる。

「村長さん、今日は、フェナ、ラルゥ、ジュニを送ってきました」

「ジン様、でしたね。ありがとうございます」

「それじゃあ、フェナ、ラルゥ、ジュニ、またな」

あくまでも軽い調子で別れを告げる仁。これも、『会おうと思えばいつでも会える』雰囲気の演出である。

「ジン様、ありがとうございました!」

『コンロン3』は、手を振るフェナ、ラルゥ、ジュニやラリオ村の人々の視界からすぐに消えた。

* * *

3人を迎えたそれぞれの家族には、税が払えないためにやむなく売らざるを得なかった娘が、無事に帰ってきたという喜びが溢れていた。

娘たちも、売られた理由に対しては理解しており、愚痴や恨み言は口にしなかった。もっとも、恨みに思っていたなら帰郷しなかっただろう。

「おかえり、フェナ」

フェナは6人兄妹の末っ子で、4人の兄と1人の姉がいる。一番上の兄は既に一家を構えており、姉も同じ村内に嫁いでいたが、フェナが帰ってきたというので実家にやって来ていた。

「ただいま、父さん、母さん、兄さん、姉さん」

久しぶりに全員揃った家族に、フェナの目から一粒二粒、涙がこぼれ落ちた。

そんな末っ子を、家族らは温かい眼差しで見守るのであった。

「これ、おみやげ」

ラルゥは、『魔石コンロ』を出して見せた。フェナ、ラルゥ、ジュニにそれぞれ仁が持たせたものである。

但し、こちらでは 魔石砂(マギサンド) が手に入り辛いであろうということで、 魔力貯蔵庫(マナタンク) 式になっている。一度の充填で半年くらい使える仕様だ。

充填は、近くの町ですることになるだろうが。

「へえ? こんなので煮炊きが出来るってのかい?」

「うん、そうなの。これもジン様が作ったそうなのよ!」

「そうかい。じゃあさっそくお湯を沸かしてみようかね」

「少し背が伸びたんじゃないかい?」

ジュニは、4人の姉と1人の兄にもみくちゃにされていた。

「もう! お姉ちゃん、子供扱いしないでよ!」

まだ13歳というジュニは、家族の中では子供扱いなのである。

実際成人前だから子供なのは間違いないのであるが、カイナ村で簡単な教育を受け、色々経験してきた彼女は同年代の少女よりも大人びて見えた。

「ほら、お給金だっていただいてきたんだから」

そう言って、革の袋を父親に差し出す。

「ほう?」

微笑みながら、ジュニの父はその革袋を受け取った。

「……お給金?」

フェナの母は、まず驚き、次いで、その革袋を震える手で受け取った。

税が払えないため身売りした娘が、無事帰ってきたばかりか、珍しいおみやげと給金まで持って来たのだから。

そして、更にまた驚くことになる。

「……銀貨?」

てっきり銅貨だと思っていたのが、全部銀貨だったのだ。総額1万トール、つまり銀貨100枚である。

金貨にすれば1枚で済むのだが、小さな村では細かく崩しようがないだろうとの仁の配慮(実は老君の提言)であった。

円に換算するとおよそ10万円。

少ないようだが、何の技術もない少女を、3食付きで、かつ簡単な読み書き計算という教育までしてくれた上、給金まで払ってくれるという雇用主など聞いたことがない、というのが、少女3人の実家での感想であった。

* * *

「読み書き計算なら出来るよ?」

ラルゥは、これから何をして働こうかと考え、父母に相談していた。

その際、ジンの元で読み書き計算を習った事を告げると、家族は皆驚いたものだ。

「それなら、村長さんのところで人手がほしいと言ってたはずだから、行ってみればいいよ」

「うん、そうする」

こうしてラルゥは、村長の下で出納係を務めることになった。

「読み書きも習ったけど、あたしは手仕事をやりたいな」

ジュニは手先が器用だったので、裁縫を習っていたのである。

「それじゃあ、ミグ婆さんのところでお針子がほしいと言ってたから行ってみてごらん」

「うん、そうする」

こうしてジュニは、村一番のお針子として活躍することになる。

「薬草を探しに行ってくる」

「気を付けるんだよ」

フェナは、治癒師サリィの元で特に薬草について学んでいた。

その知識を活かし、治癒師のいないこの村で、少しでも役に立とうと思ったのである。

もちろん、半年にも満たない修業期間では、覚えた薬草の種類も知れてはいるが、それでも無いよりはずっとましというもの。

胃腸薬、健胃薬、傷薬、熱冷まし。

これだけでも、ラリオ村にとっては大助かりである。

その後、フェナは改めて薬草について勉強をし、村の薬師として皆に慕われたという。

* * *

そんなラリオ村の様子は、配備した『 第5列(クインタ) 』、レグルス25通称『ドロー』が逐一報告していた。

『そうですか、 御主人様(マイロード) も安心なさるでしょう』

報告を受けた老君もほっとする。

今の仁にとって、心配事は一つでも少ない方が望ましいのだから。

『明日には宇宙船が完成しますし……ね』

仁は今、『コンロン3』と共にカイナ村である。

明日、『コンロン3』でカイナ村を発ったあと、 転移門(ワープゲート) で一足先に蓬莱島へ戻ってくる予定だ。

『気に入っていただけるといいのですが』

研究所裏の宙港で静かに佇む金属の球体。

直径300メートルの新造宇宙船の処女飛行は明日に迫っていた。