軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27-27 仁、大忙し

仁は一旦、少女たちをカイナ村へと連れ帰った。

「それじゃあ、明日、送別会をやろう」

村長ギーベックにもそのことを伝える。

「二堂城でやりましょう。食材は俺が用意します」

そう告げた仁は、さらにセルロア王国を目指した。

カイナ村は午後4時であったが、セルロア王国首都との時差は1時間20分。

『コンロン3』は15分足らずで首都エサイアに到着した。

セルロア王国防空部隊の熱気球が3機上がってきたが、『コンロン3』の紋章『丸に二つ引き』と、窓で手を振る礼子の姿を見て、仁とわかったようで、ゆっくりと離れていった。

「崑崙君、ようこそ」

仁を出迎えたのは総務省主席のバルフェーザ・ウォーカー。

「お久しぶりです」

「まずはこちらへ」

主席自ら、仁と礼子を王宮内の応接室へと導いてくれた。

「実は……」

仁としては、セザール王に直接会う事は難しいだろうと思っていたので、総務省主席なら十分と思い、訪問の目的を話すことにした。すると。

「まあ、お持ち下さい。陛下におかれましては、本日の執務もほぼ終了されておりますので、間もなくおいでになる筈です」

その声が終わるか終わらないうちに、ドアが開かれ、セザール王がやって来た。

「おお、ジン殿、しばらくだった」

「ご無沙汰しております」

立ち上がって一礼する仁。セザールはにこやかに笑いながら、仁を椅子に座らせ、自らも席に着いた。

「まずは、用件を聞こうか」

忙しい身ゆえ、世間話は後回しとばかりに、セザールが切り出した。

「はい。実は……」

仁は、かつて奴隷として売られた、ラリオ村の少女たちの話をした。

11名のうち、8名が移住を望んでいる、と。

「なるほど。……国民が国から出て行くということは、国王としては憂うべきことだな」

「……申し訳ないことですが」

少し残念そうなセザール王に、仁も済まないという気持ちになる。

「いや、今回、ジン殿が謝ることではない。我が国の不徳の致すところだ」

そしてセザール王は、少女たちが移住するにあたり、問題はないという言質をくれた。加えて、略式ではあるが、書類も調えてくれる。

そもそもセルロア王国に戸籍と呼べるものはないので、口頭での許可でも十分ではあるが、後々のために、と文書化してくれたのである。

「ありがとうございました」

仁は礼を述べ、その書類を受け取った。

「さて、ジン殿。今度はこちらの頼みも聞いてもらいたい」

「なんでしょうか」

セザール王は、同席しているバルフェーザ・ウォーカーをちらりと見てから、説明のために口を開いた。

「我が国は広い。街道が整備されてはいるが、国土の広さは、時には弊害となることがある」

「はあ」

前置きの意味が掴めない仁は曖昧に頷いておいた。

「例えば、今回の飢饉だ。救援物資を送ろうとしても、距離という壁があった」

「なるほど」

「そこで、ジン殿には、陸上輸送の改善案をお願いしたいのだ」

流通の改善、ということである。

輸送量を増やすか所用時間を減らす、あるいはその両方を行いたい、ということである。

「謝礼としては、最低でも1000万トール(約1億円)を考えております。内容によっては更に増額もいたします。もちろん、金以外での支払いも応相談ですな」

バルフェーザ・ウォーカーからは、謝礼金についてが語られた。なかなか破格の条件だ。

「期日は今年一杯でいかがかな?」

「わかりました。お引き受けいたします。ただし、条件が一つ」

「何かな?」

「セルロア王国内に留まらず、いずれ各国とも同じような輸送網を広げていただきたいのです」

「うーむ、それは……」

「その場合、謝礼は各国からいただこうと思います」

仁は、例えば鉄道網のようなことを考えたのだ。

その場合、一国で閉じてしまうより、各国を結べば、大きな恩恵があるはずなのだ。

方法としては今のところ、鉄道がいいのか、それともトラック輸送の方がいいのか、決めてはいない。

「うーむ……」

仁としては、かつて計画して実現はされていない『世界会議』の議題の一つにしてもらいたいと思ったのである。

「わかった。……とはいえ、どのようなものを提案してもらえるかわからない現状では確約はできない。その案を見せてもらって、また考えさせてもらいたい」

「それもそうですね。なるべく早く、案だけでも出せるように致します」

「うむ、よろしく頼む」

こうして、仁は少女たちを正式にカイナ村の住民にする許可を得たのであった。

* * *

「さて、どうするかな……」

帰りの『コンロン3』の中で、仁は考えていた。

「鉄道か、トラックだよな……」

仁の中では今のところ、どちらがいいとも結論できない。

鉄道は、線路の敷設が面倒ではあるが、大量輸送が可能で、人間の輸送もできる。欠点はどうしてもおおまかな輸送しかできないことだ。

トラックは、現在の街道を利用できるので導入が楽である。小回りも利き、各村までも運ぶことができる。欠点は、今の街道の巾では、かなり制約を受けてしまうこと。

「うーん、一概に決められないな……」

これこそ、各国首脳を一同に集めた『世界会議』で話し合ってもらいたいと思う仁であった。

とはいえ、今はやるべきことがある。

気持ちを切り替えた仁は、送別会について、老君と 魔素通信機(マナカム) で相談した。

『 御主人様(マイロード) 、食材は何をお送りしましょうか』

「そうだな、ペルシカとシトラン、それにアプルルだな」

米や小麦の備蓄は二堂城にたっぷりある。

「本来なら周辺の村で買うのが経済の活性化にはいいんだろうけどな……」

仁自身、かなりの蓄財があり、使おうにも使いどころが無いというのが現状である。

辛うじて、ロイザートの屋敷で、バロウとベーレの給金や生活費などとして消費できているだけだ。

「それも今は置いておくしかないか」

仁としても、あっちもこっちもではさすがに手が回らない。今は一つ一つ片付けていこうと思い直す。

「まずは明日の送別会だな」

「お父さま、ハンナちゃんのことも忘れないであげて下さいね」

「ああ、もちろんだ」

明日は、午前中一杯、ハンナや村の子供たちと遊ぼう、と心に決める仁であった。

『コンロン3』は暗闇の中、カイナ村に着陸した。

力場発生器(フォースジェネレーター) 推進なので、ほとんど揺れも衝撃もない着陸であった。

「さて、今夜は城で休むか」

蓬莱島とは時差が2時間20分ほどあるので、こちらで休んだ方が生活リズムが狂わないだろうとの考えである。

そして二堂城の中へ入った仁を迎えたのは。

「お帰りなさい」

エプロン姿のエルザであった。

「夕食、まだでしょう? 用意してある、から」

仁の後ろでは礼子が微笑んでいる。どうやら、礼子から老君へ、老君からエルザへと連絡が行ったらしい。

「……ありがとう」

空腹だった仁は、温かい食事が載ったテーブルを前に、エルザに礼を言ったのであった。