作品タイトル不明
27-10 装備開発
宇宙船開発を続けている仁は、まずは中継器を最初に開発することにした。というのは、既に構想が固まっていたからである。
基本は『 魔素通信機(マナカム) 』によるリレーだ。
送られて来た通信を一旦受け、音声に変えずにそのまま再送信する。
そのままでは1基につき到達範囲が単純に増えていくだけなので、もう少し効率を上げるため、指向性のある通信にしようと考えていた。
この再送信は、決まった方角、つまり蓬莱島のある方向のみで良いため、収束した信号を送ることができ、到達距離も長くなるはず。
これが仁の構想である。
蓬莱島の方向をどうやって見つけるとか、姿勢制御はどうするかということはその次に解決するべき項目だ。
「逆に、返信の信号は、送信された信号の来た方角に向ければいいだろう」
こうした新しい魔導具を作るのは楽しい。破壊兵器でないから尚更だ。
蓬莱島の方角、というかアルスの方角は、近ければ目視、遠ければ星々の位置から算出できる。
姿勢制御は『ウォッチャー』で実績がある。
こうして、3時間ほどで試作を2つ完成させた仁は、通信試験も済ませてしまった。
「やっぱり、搬送波は直線で進んでいるな……」
試験的に、惑星アルスの裏側にいる 空軍(エアフォース) ゴーレム、スカイ34に連絡を取ってみたが、 自由魔力素(エーテル) 波は惑星を貫いているようなのだ。
「やっぱり、地中や惑星内に含まれる 自由魔力素(エーテル) が媒質となっているんだろうか」
仮説を立ててみる仁。
『 御主人様(マイロード) 、その可能性は高いですね』
いずれにせよ、実用になりそうである。宇宙船に搭載するものは老君と 職人(スミス) たちに一任し、次の開発に取りかかる仁であった。
「お父さま、すぐに出来てしまいましたね?」
礼子が仁に話しかける。
「ああ、簡単な方から手を付けていった方が精神衛生上望ましいからな」
テストでも、難しい問題に掛かりすぎて他の問題を解く時間が無くなったりすることがあるが、仁は楽そうな問題から解いていく主義であった。
だがこれも、解き始めて見たら意外と難しかったので投げ出して、別の問題をやってみたらこれもまた難しかった……となると、時間の無駄になるので要注意である。
仁は定時制高校時代のクラスメートが語っていた試験を解く心得を久しぶりに思い出していた。
「そうですね、『これだけ終わらせた』という結果が目に見えるというのは気持ちいいですからね」
仁の考えを忖度して、そんなセリフを口にする礼子。
「うん、その通りだよ、礼子」
仁は礼子の言葉を聞き、微笑んだ。そして、次に開発する内容を口にする。
「今度はミサイルだ」
純粋な破壊兵器である。
だが700672号が指摘したように、宇宙空間において進行方向にそういった障害があった場合、躊躇わず使わなければ己が破滅するかもしれないのである。
「爆発といったら何といっても……」
「『 魔力爆発(マナ・エクスプロージョン) 』ですね」
仁の言葉に、礼子が被せるようにして答えを言う。
「そうだな、そして『 魔力爆弾(マナボム) 』ということになる」
『 魔力爆弾(マナボム) 』は、『 魔力爆発(マナ・エクスプロージョン) 』を利用した爆弾である。
「こいつを弾頭に使えばいいわけだ」
ゆえに、この兵器も比較的簡単にできてしまう。
ミサイル、というよりロケット弾、もしくは榴弾である。
問題は、空気のある宇宙船内で装填した砲弾を、真空の宇宙に放つということ。
どこかで境界を越えることになるのだが、その際に空気が漏れないようにしたいと考える仁なのである。
「お父さま、最初から真空中に置いておけばよろしいではないですか」
「うーん、そうすると補充ができないだろう?」
「いえ、ゴーレムは呼吸をしませんので……」
「ああ、そうなるか……」
そういった作業をゴーレムに任せればいいということに気が付いた仁は、試作砲弾をあっさりと作り上げてしまった。
「あとは、正確な威力が知りたいな……」
隕石・宇宙塵破壊用なので、威力が足りないのはまずいし、過剰であっても無駄だ。
炸薬の基準とするため、1グラムの 魔石(マギストーン) 1個が使われている。仁の目算では、10メートルくらいの岩を破壊できるはずだ。
「お父さま、 力場発生器(フォースジェネレーター) で岩を浮かせて、それを狙い撃てばいかがでしょう?」
「それしかないか……」
いざという時に使いものにならないというのは困るので、礼子の進言を入れて実験することにした。
魚の生け簀があるタツミ湾を避け、蓬莱島の北側へ。
マーメイド部隊に 力場発生器(フォースジェネレーター) を使わせ、岩塊を海上50メートルの高さに浮かせる。
それを、礼子が狙い撃つ、という手順だ。
「礼子、試作は1発だけだ、外すなよ。発射の威力は最低限でいいからな」
「はい、お父さま。お任せ下さい」
礼子は、愛用の 魔力砲(マギカノン) に砲弾を装填し、構えた。
「老君、記録準備はいいか?」
『はい、 御主人様(マイロード) 』
何が起きるか記録を取り、以降に生かすつもりの仁であった。
「いいか、3、2、1、発射!」
全力には程遠い、3パーセントほどの出力で発射された砲弾は、亜音速で飛び、狙い過たず岩塊に命中した。
命中の直後、『 魔力爆発(マナ・エクスプロージョン) 』の 魔法制御の流れ(マギシークエンス) が起動する。
そして爆発。
「おお、成功だ!」
10メートルほどの花崗岩の塊が、100以上の破片と化して砕け散ったのである。
「威力も計算通りだな」
これを基準に、威力別に何段階か分けて作ればいい、と仁は考えたのである。
そこに老君が提案を行ってきた。
『 御主人様(マイロード) 、わざわざ 魔力砲(マギカノン) で発射するのではなく、『転送機』で目標へ送り出してしまったらいかがでしょう?』
「ああ、なるほどな。それならエアロックとか考える必要もないな」
問題があるとすれば、正確に転送するための制御頭脳である。
今現在の転送機は、老君でなければ制御しきれない。送り出し時のわずかな誤差が、目的地での大きな誤差になってしまうからだ。
『宇宙船の制御頭脳を高性能なものにしていただければ大丈夫かと』
基本的に目視可能な距離が対象となるはずなので、老君ほどの処理能力は必要ではないだろう。
「だが、位置測定はできるだけ正確な方がいいな」
直径300メートルの球形宇宙船、その両極に測定装置を置けばかなり精度は出せそうだ、と仁は考えた。
「ああそうか。これってレーダーと連動させればいいんだよな」
同時に、700672号から助言を受けた『対物レーダー』について検討を始める仁。
「うーん、レーダーってどういうものだったっけな……」
確か、電波を出して、跳ね返ってくる電波をキャッチして……、とぶつぶつ言いながら考え込む仁。
「お父さま、本日は一旦おやめになって、夕食になさって下さい」
いつの間にか空は夕暮れ。
無理をしてもいいことはないと、今回仁は素直に礼子の言に従った。
「ジン兄、お帰りなさい」
「やあ、エルザ」
仁が家に戻ると、そこにはエルザもカイナ村から帰って来ていた。
「ご飯できてるから手を洗ってきて」
「うん、わかった」
洗面所へ手を洗いに行きながら、こういうのもいいな、と思う仁であった。