軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26-48 帰宅

2時間足らずの空の旅を終えた『コンロン2』はショウロ皇国首都ロイザートにある仁の屋敷屋上に着陸した。

「こ、ここが首都なのか……」

2時間弱の間、サキはずっとグースを宥め続け、最後にはショウロ皇国についての説明まで行っていた。

「まずはゆっくり寛いでくれ」

仁が先頭でコンロン2から降りると、バロウが迎えに出てくれていた。

「お帰りなさいませ、ジン様。朝、いきなり連絡をいただいた時はびっくりしました」

「お客さんが大勢いる。いきなりで悪いが、準備はできているかい?」

「はい、それは大丈夫です」

コンロン2を出発させると同時に、もてなしの準備をするように、とバトラーDに連絡を入れておいたのである。

「それならいい。……こちらはグース殿、一番のお客人だ。後は見知っているよな?」

グース、サキ、ハンナ、エルザの順で下船。礼子、アアル、エドガーが最後に降りた。

「グース様、いらっしゃいませ。……はいサキ様、ハンナ様。ようこそおいで下さいました。エルザ様、お帰りなさいませ」

屋上から下り、まずは浴室へ。

まだ昼前ではあるが、昨夜は入浴できなかったので、皆埃っぽかったのである。

特に女性陣は、この入浴に喜んだ。

グースも着た切り雀であったため、仁が命じて着替えを用意させておいたので、風呂から上がったあとは見違えるようにさっぱりした身なりになったのである。

「ショウロ皇国風の服も似合うじゃないか」

「ああ、ありがとう、仁」

「今日はゆっくり休んで、明日、 宮城(きゅうじょう) へ帰化の手続きに行こう」

さすがに1ヵ月にわたる旅行の後であるから、仁としても性急な行動を避けたのであった。

そうこうするうち、女性陣も風呂から上がってくる。皆、旅行用の服からドレスに着替えているので、一気に華やかさが増した。

「ジン、ありがとう。さっぱりしたよ。やっぱりお風呂はいいね!」

「きもちよかったー」

サキとハンナは、風呂上がりの桜色の頬をしている。

「あれ、エルザは?」

一緒じゃないのか、と尋ねる仁に、サキは、

「ボクたちより一足先に上がったよ」

と答える。そんな時、仁の背後から声が掛けられた。

「ジン兄、私ならここ」

「え?」

振り返ると、普段着に着替えたエルザが立っていた。

「あれ? エルザはドレスに着替えなかったのか」

訝しんだ仁からの、当然の疑問である。

「ん。お客様をおもてなししなくちゃいけないから」

「無理しなくていいのに」

「くふ、若奥様としてはそうもいかないんだろうさ。ねえ、エルザ」

サキに言われたエルザは頬を染めた。

「サキ姉の意地悪」

「くふふ、御免御免。でも、実際そういうことだろう?」

「……否定できない」

そんなやり取りをしている2人に、仁は声を掛けた。

「サキ、グースに気を使ってやってくれな」

「え、ボクが、かい?」

「ああ。やっぱりトアさん絡みということもあるし、そこそこ気が合ってるようだから」

そんな仁の言葉に、サキは少し口籠もりながらも承知の意を示した。

「まあ、やってみるよ」

それから、少し遅めの昼食となる。

「おお、こいつは美味いな!」

グースが感激しているのは白米のご飯である。

ジャポニカ米をお釜で炊いた、ふっくらしたご飯。

それに、カツオブシで出汁を取った、トポポとマルネギ(ジャガイモとタマネギ)の味噌汁。

「あー、久しぶりの味だ」

仁が食べているのはアジ(に似た魚)の干物を焼いたもの。

およそ昼食の献立っぽくはないが、食べたくて仕方がなかったのでこのメニューとなった。

「パンもおいしい!」

今ハンナが食べているパンは、蓬莱島でペリドが苦心して作った『ブドウ酵母』を使ったパンである。

ワインが発酵するというところから、パンの発酵にも使えるのではないか、という老君の提案により、試行錯誤してこのたび完成に漕ぎつけたものである。

少し前から使っている、『ビール』酵母から選別したもので作ったパンとは風味が若干異なるのだ。

実際に、現代日本でもそういうパンを製造している。

因みに、この酵母もビール酵母同様、『パン種』を『種継ぎ』しているのでいつでも使える。

古くなりすぎたパン種は焼いてから生け簀の魚用にしているので無駄が出ない。

「ごちそうさま」

食後はショウロ皇国のお茶で締める。

「ふうん、こっちのお茶も美味しいな!」

お茶の木の品種が微妙に違うようだが、味としてはどちらも甲乙つけがたい、とグースは評した。

「とりあえず、安心したよ」

仁もお茶を飲みながら、グースに向かって言った。

「ん? 何がだい?」

「食べ物さ。故郷の味って、懐かしくなるはずだろう? こっちの味が問題ないならかなり楽に馴染めるんじゃないかと思ってさ」

仁としても、日本で食べなれた味を再現しようといろいろやったわけだから、グースのことも気になっていたのである。

「ああ、それなら、父が度々料理をしてくれたからな。そっちの味も馴染みが深いんだよ」

「なるほど」

どうやら、グースの父、マークという人も、自炊に慣れていたとみえ、フソーに行ってもそれなりに手料理を家族に食べさせていたようだ。

「うちの父さんはあまり料理しないけどね……」

幾分残念そうな顔でサキが呟いた。

「だからといってサキ姉も料理しないよね」

「エ、エルザ!?」

「……お返し」

最近、ちょくちょくエルザをからかっていたので、ここぞとばかりに反撃されたサキであった。

和やかなひととき。

と、そこに、バロウがやって来た。

「ご歓談中申し訳もございません。ジン様、お客様がお見えです。トア様、ステアリーナ様がいらっしゃいました」

「お、ある意味ちょうどいい。お通ししてくれ」

「はい」

「やあ、ジン君、お邪魔するよ。サキ、ただいま。……いや、お帰り、と言うべきなのかな?」

トアとステアリーナも、ミツホへ新婚旅行に行っていたのである。

「父さん、お帰りなさい。そして、ただいま」

挨拶を交わす父娘。そしてサキは唐突に、

「父さん、『マーク』っていう人、覚えてるよね?」

と、父トアに尋ねた。

「う、マークだと? もちろん覚えてるとも! 私の幼馴染みで親友だよ! ……調査行に行ったきり、帰って来なかったんだ……」

「父さん、このグースは、そのマークさんの息子さんなんだよ!」

「なんだと?」

娘の発言に驚きつつも、トアはグースの顔をまじまじと見つめた。

「ふうむ……目と髪の色は違うが、顔はマークによく似ているな……」

「えっと、トアさん、ですよね? 父からはいろいろ伺ってます。子供の頃、一緒に悪さしたこととか……」

それを聞いてトアの顔が崩れる。

「おお、そうか、奴は今どこに?」

だが、その答えは非情である。

「大分前に亡くなりました」

「なんと! そうだったのか。……グース君といったね、マークの話を聞かせてもらえるかな?」

「はい。トアさんも、父の話を聞かせてくださいますか?」

「おお、もちろんだとも」

そこへ仁が口を挟んだ。

「それでしたら、ここではなく、部屋での方がいいでしょう。バロウ、案内してあげてくれ」

「はい、かしこまりました」

2人の様子を見たステアリーナも気を利かせた。

「あなた、わたくしはこっちでジン君たちと話してますわ」

「ありがとう、リーナ」

かくして、トアとグースは部屋へ行き、ステアリーナは食堂で仁たちと歓談である。

「2人とも、もう帰ってきていたんだ」

とサキが言えば、

「わたくしたちはミヤコまで行って帰って来ただけよ。おおよそ10日間くらい。あなたたちは随分と巡って来たみたいね」

と、ステアリーナ。

仁たちは、巡って来た異民族の国について、代わる代わるステアリーナに話して聞かせるのであった。