軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26-42 拒絶

男性型 自動人形(オートマタ) の後を付いて、建物に入った仁たち。

「塵一つ落ちてないね」

サキが感心したように言う。

仁は周囲を見回し、造りなどを観察。礼子はあたりに気を配っていた。

「ここだ。入りたまえ」

廊下突き当たりの部屋に案内された一行。

自動人形(オートマタ) によってドアが開けられた。

「……ようこそ、来訪者たち」

その部屋の奥には、痩せこけた老人が大きなベッドに横たわっていた。

「初めまして。俺は二堂仁、ジン・ニドーです。こちらはエルザ、サキ、ハンナ、グース、礼子です」

「そうか。私は……クローデン。ここ、バッタルフの管理者だ」

「管理者……というのは、町長のようなものでしょうか?」

聞き慣れない言葉に、仁はすかさず質問した。

「長……ではないな。この町の人間は私1人だから」

「えっ!」

「ええっ!」

クローデンの発言には、全員が驚きの声を上げざるを得なかった。

「な、なぜですか?」

仁からの質問。そう聞くしか、今の彼等にはなく、他の面々も同じ気持ちだったろう。

「なぜといっても……な。人口が減っていった揚げ句、としか言いようがない」

「……では、どうして人口が減ってしまったのでしょう?」

質問の仕方を変えてみるグース。

「……人が、気力を無くしたから、かな」

「どういうことなんですか?」

今度はサキからの質問。だが、クローデンは横に立つ 自動人形(オートマタ) に向かい、気怠そうに指示を出し、目を閉じた。

「……フェデリ、この町の歴史を簡単に話してやれ」

「はい、父上」

フェデリ……フェデリ479はゆっくりと語り始めた。

「この町が成立したのは今から1500年ほど前です。その頃はまだ町ではなく、村でした」

「1200年ほど前、一大転機が訪れたのです」

「それは、ゴーレムという安価な労働力でした」

「ゴーレムは、大気中に含まれる 自由魔力素(エーテル) により動きます。1台作るには巨額の費用が掛かりましたが、一旦完成してしまえば、100年以上動き続けますので、結果的に経済的でした」

「1000年ほど前になると、各家庭は1体以上のゴーレムを所有するようになります」

その後の説明を要約すると、結局は安価な労働力を得たため、働かなくなった揚げ句に出生率も低下して、今に至る、ということらしい。

「……」

ゴーレム社会の行き着く姿、その一つを知り、言葉もない仁一行だったが、この町を訪れた目的を思い出した仁が口を開いた。

「『 賢者(マグス) 』について何か教えて下さい。それから『アドリアナ』という人物についても」

その名を聞いたクローデンは、閉じていた目を再び開いた。

「『 賢者(マグス) 』……我々を堕落させた悪魔。『アドリアナ』……我等が祖を裏切り、悪魔に身を売った愚か者」

その声音は、先程までと違って、怨嗟に満ちていた。

「貴様ら……悪魔について調べているとは、悪魔に繋がる者たちか。……出ていけ!」

「ちょっと待って下さいよ」

慌てた仁が止めるが、それで止まるクローデンではなかった。

先程、フェデリ、バリガルに『 賢者(マグス) 』と言ったときはこのような反応をしなかったというのに、クローデンは心を病んでいるのかもしれない、と仁は思った。

「フェデリ、バリガル、こいつらを追い……出せ」

「はい、父上」

「わかりました」

クローデンの命を受けた2体の 自動人形(オートマタ) は仁たちに向かってくる。

「さあ、出ていけ!」

「お帰り下さい!」

こうなってはもう何を言っても無駄だろうと、仁は諦めざるを得なかった。

「分かったよ、出ていくよ」

そう告げて、回れ右。入って来た廊下を逆に辿り、外へ。

「!」

「な、なんだ!?」

そこには、数十体のゴーレムが集まり、自動車を取り囲んでいたのである。

いや、取り囲んでいただけではない。殴りつけ、破壊しようとしていた。

「やめろ! 何をする」

思わず叫んだ仁だが、その声を聞き、ゴーレムの半数が仁を見つめた。

「父上の感情を察して、兄弟たちが暴れ出したようですね。こうなっては私にも止められません」

女性型 自動人形(オートマタ) のフェデリ479が感情の籠もらない声で告げた。

「我々が何をしたというんだ!」

だがグースのその声も届かない。ゴーレムたちの半数は自動車を殴り続け、もう半数は仁たちに向かってきた。

「こいつらはたいした自我を持ってはいないようだな。動き方が原始的だ」

「じ、仁、そんな悠長に構えている場合じゃないぞ!」

グースの腰が引けている。

「ええと、フェデリ、それにバリガル、だっけ? ……ゴーレムを止めてくれないかな?」

落ち着きを取り戻した仁が2体の 自動人形(オートマタ) に頼む、が。

「無理だ。奴らは単純な頭脳しか持たない。それゆえに一度何かを始めると、それを果たすまで止まらない。自分の身は自分で守ってもらおう」

その説明の間にも、15体のゴーレムが近付いて来た。

「それが答えか……」

バリガルの言葉に対し、仁は残念至極、といった顔で呟いた。

「それじゃあ、勝手にやらせてもらう。……恨むなよ?」

仁は礼子の顔をちらと見る。それだけで礼子は、仁が何を言いたいか察し、地を蹴った。

「何っ!?」

バリガルの驚いたような声が響く。

こいつらも一応驚けるのか、と仁は変なところに感心しながら、目の前を見つめていた。

仁たちに襲いかかってきたゴーレムが1体また1体と吹き飛んでいく。もちろん礼子の仕業だ。

今の礼子にとって、原始的なゴーレムなど、1000体いたとしても脅威にはならない。

「おいおい……」

グースは呆れたような声を上げた。その口はぽかんと開かれている。

何せ、少女型の 自動人形(オートマタ) である礼子が、体格差が数倍はあるゴーレムを文字通り蹂躙しているのだから。

礼子がその小さな拳を突き出せば、ゴーレムがばらばらになって散らばり、礼子がその華奢な足を振り上げれば、20メートルを超える高さまでゴーレムが吹き飛ぶ。

しかもそれが数秒のうちに行われたのだ。

仁たちを狙ってきた15体のゴーレムは6秒ほどで動作不能となった。

グースは最早物も言えないほどに呆れているが、エルザ、サキ、ハンナは苦笑しているだけ。

もちろん、礼子に楯突いたゴーレムたちの末路を思って、である。

仁たちに向かってきたゴーレムを片付けた礼子は、自動車を襲っているゴーレムの排除に掛かった。

もちろん、自動車には 障壁(バリア) が張られており、ゴーレムの打撃程度では、何百年経っても破ることはできない。

それは仁たちを覆う 障壁(バリア) も同じであるが、危険がないからといって、礼子が怒らないということにはならない。

「お父さまの作品から離れなさい!」

無駄であることも理解できず、執拗に 障壁(バリア) を殴り続けるゴーレムに苛立ちを隠せない礼子は、その1体の足を掴むと、力任せに投げ飛ばした。

力任せとはいっても、仁から普段許可されている20パーセントで、であるが、それでもゴーレムは通りの彼方へと飛んでいった。

建物にぶつけていないのは、せめてもの礼子の心遣いである。

ぽいぽいと、18体のゴーレムは全て100メートルほど先まで飛ばされ、そのまま動き出すことはなかったのである。

「あなたがたはどうしますか?」

礼子の働きぶりを信じられないように硬直して見ているだけのフェデリ479とバリガル243に向かって礼子が尋ねた。

「お父さまの邪魔をするなら、同じ目に合わせてさしあげますよ?」

だが、帰ってきた言葉はといえば、

「……化け物め」

という一言のみ。

「そうですか。それでは、しばらく動かないでいてもらいましょう」

礼子は、『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』を2体に向けて放つ。

魔法無効器(マジックキャンセラー) は、元々は 魔素暴走(エーテル・スタンピード) 対策のため作られた魔導具である。

魔力素(マナ) を強制的に 自由魔力素(エーテル) に戻してしまうことで、大抵の魔法を無力化することができる。

その波動を受け、2体は動作不能となり、その場に 頽(くずお) れたのである。

更に礼子は『エーテルジャマー』も発動させる。つまり、 自由魔力素(エーテル) から 魔力素(マナ) を作れなくしたわけだ。

これでしばらくの間、この2体が動き出すことはない。

「さて、仕方ない。この町を出て行こう」

まだ放心しているグースを自動車に引きずり込み、仁たちはバッタルフの町を後にした。

町を覆っていた 障壁(バリア) は、 魔法無効器(マジックキャンセラー) で解除できたのである。