軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26-20 初級ゴーレム作り

4月13日は、また自由行動とした。翌14日にはミヤコの町を発つ予定なので、心残りがないように、ということでだ。

「俺は約束を守らないとな……」

仁の呟きをエルザが聞きとがめた。

「ジン兄、約束って?」

「ほら、図書管理ゴーレムと、お菓子を作る話さ」

「……ああ」

この町に着いたその日、何気ないミイの一言を仁が請け合ったのと、図書館の本を読み取らせてもらう話。

「これから作るの?」

「ああ。ゴーレムは得意だし、午前中に終わらせてしまおう」

仁はそう言うと、

「俺は工場に行ってくるから」

と皆に告げた。

「じゃあ、私も」

「ボクは午前中は図書館に行くよ」

「あ、あたしも!」

ということで、午前中、仁とエルザは工場、サキとハンナは図書館ということになった。

「サキ様、ご一緒してよろしいでしょうか?」

「う、うん」

ミイはエルザより、なぜかサキに懐いたらしい。当のサキは面食らっていたが。

「いらっしゃいませ。ご注文は何でしょうか?」

工場では、昨日と同じように工場長 自動人形(オートマタ) が出迎えた。

「作りたいものがあるんだが、工場の一部を使わせてもらえるだろうか。それから素材も」

工場長 自動人形(オートマタ) は頷く。

「はい、結構ですよ。素材もお申し付け下さい」

どうやら、個人での利用も可能なようだ。

「こちらをお使い下さい」

なかなか広い作業用スペースに案内された。

ここを見る限り、本来ならもっと個人利用が増えてもいいのだろう。

「ありがとう。それじゃあ、素材として青銅を30キロほどもらえるかな。それから 制御核(コントロールコア) に使える品質の 魔結晶(マギクリスタル) を7個、普通の品質の 魔結晶(マギクリスタル) を3個。それに魔導樹脂20キロ」

「はい、かしこまりました」

工場長 自動人形(オートマタ) は作業用ゴーレムに命じ仁が要求した素材を運び込ませた。

「さて、作るか」

「……ジン兄、 魔法筋肉(マジカルマッスル) や魔導神経の材料は?」

当然の疑問を抱くエルザ。

「それなんだがな、今回はなしだ。メンテナンスを考えたら、蓬莱島仕様じゃ整備できないんだよ」

先日、工場内のゴーレムを調べた仁だからこそわかること。

「この工場内にいる整備用ゴーレムじゃ、蓬莱島仕様にしたら整備不可能だろう。図書館に置いていくなら、向こう100年くらいはメンテナンスフリーにしないと」

いわゆる『 変形動力(フォームドライブ) 』なら、仁が作ればほぼメンテナンスフリーにできる。万が一の事があっても工場の整備用ゴーレムにメンテしてもらえばいい。

「……よく分かった」

仁が『 変形動力(フォームドライブ) 』系のゴーレムを作るのは珍しい。

正確にいうと『 変形動力(フォームドライブ) 』は 負の人形(ネガドール) が作ったゴーレムに使われていた方式であるから、ここは初めてというべきか。

カイナ村の守護ゴーレム、ゴンとゲンの原型となったゴーレムを直した時の方式は『 変形(フォーミング) 』動作方式、と呼ぶのがより正確だろうから。

「お待たせしました」

その時、仁が要求した資材が運ばれてきた。

「ありがとう。そこに置いておいてくれ」

素材も揃ったので、いよいよ仁は製作に取りかかることにした。

「……よく考えると、初めて」

エルザも『 変形動力(フォームドライブ) 』のゴーレム作りを見るのは初めてになるようだ。

「それじゃあ、見ていろよ? ……俺もあまり慣れてはいないけどさ」

「ん」

変形動力(フォームドライブ) 方式のゴーレムは、作るだけなら比較的簡単にできる。いわば初級ゴーレムだ。

「まず、魔導樹脂で身体を形作る」

魔導樹脂に『 変形(フォーミング) 』を掛け、求める形にしていく。今回は図書館用ということで細身の中性タイプにした。

「次が 制御核(コントロールコア) の準備だ。まあ魔導樹脂の成型とどっちが先でもいいが」

説明しながら仁は『 制御核(コントロールコア) 』、『 魔素変換器(エーテルコンバーター) 』、『 魔力炉(マナドライバー) 』を作っていった。

「今回は図書館用なので、目にも品質の良い 魔結晶(マギクリスタル) を使う」

「うん」

用意された 魔結晶(マギクリスタル) は残り2個。

「1個は補助記憶用だ」

図書館にある蔵書を全部記憶させるつもりである。

現代日本の国会図書館であれば、さすがに 魔結晶(マギクリスタル) 1個では無理だろうが、ここの図書館の規模は小学校内の図書室よりも小さいくらいであるからこれで十分だろう。

「あと1個は?」

「『 魔素通信機(マナカム) 』にして、老君に情報を送れるようにする」

そうすれば、バックアップという意味でも安心できる。

「送信だけにしておくから、万が一にも老君の存在は辿られることもないだろう」

そして、逆にこちらに何かあったなら老君が感知することができるというわけだ。

「あとは耳と発声装置だな」

そちらは普通品質の 魔結晶(マギクリスタル) を使う。耳に2個、発声装置に1個。

「よし、これで中身は完成だ」

このままでも動くことは動くが、なんといっても樹脂であるし、見た目が悪い上、強度も低い。

そこで青銅を使って外装を付けていくわけだ。

人間と違い、中に入るのが魔導樹脂の身体であるため、関節を気にする必要がないので、気にすべきは可動性だけである。

極端な話、関節部分が曲がりさえすれば、どんなデザイン、どんな構造でもいいわけである。

「……と、いうわけで、エルザ、作ってみようか」

「え、私!?」

いきなり仁から振られてエルザは驚く。

「そうさ。俺がデザイン苦手なの知ってるだろう? ここはエルザの出番だよ」

贈り物にするので、あまり無骨な外観は避けたかったこともある。

「ん、わかった。……『 変形(フォーミング) 』」

エルザも、魔法工学に関しては、超一流の腕前である。30分足らずで外装を作り終えてしまった。

「よし、あとは装着だ」

これは、中に入るのが魔導樹脂なので、きつかろうが緩かろうが調整ができるので作業性はいい。

仁と二人掛かりで10分で終了した。

「ジン兄、知識はどうするの?」

制御核(コントロールコア) を埋め込んでしまったため、どうやって『 知識転写(トランスインフォ) 』を行うのか気になったのである。

「ああ、この魔導樹脂の場合は魔力をよく通すから、完成後でも外装さえ外せば簡単に書き込めるよ」

「あ、そうなんだ」

この図書館用ゴーレムの力は人間の1.5倍くらい。戦闘用にはとても使えない。

ゆえに『隷属書き換え魔法』の対策は行っていないのである。

「で、知識をどうするか考えたんだが、ここはゴーレムメイドと同じでいいと思ってさ」

「ゴーレムメイドの?」

「そうさ。十分すぎる知識があるし、動作にも問題はない。単なるコピーにはしないしな」

「わかった」

ということで仁は、礼子を通じて老君に連絡を取り、五色ゴーレムメイドのうち、最も家事を多くこなしているペリドのものをコピーした 魔結晶(マギクリスタル) を送ってもらう。

2分ほどで 魔結晶(マギクリスタル) が転送されてきたので、仁はそこから必要な知識を転写する。

「『 知識転写(トランスインフォ) 』レベル5。……これでよし」

あとは図書館に連れていき、司書の知識を幾ばくか移せば終了である。

「まだ時間は大丈夫だな。あっちもやってしまおうか」

時刻は午前10時半。

「ジン兄、まだ何か作るの?」

「鏡餅があったしな。で、迎賓館の食堂の人に聞いたけど、そういうものは食べたことがない、って言われたんだ」

「だから、何のこと?」

エルザの問いに仁は笑って答えた。

「それは見てのお楽しみ」

「……もう」

こうやって時々もったいをつけるのも仁である。エルザは、わざとちょっと膨れた顔を見せた。