軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25-13 終息

翌朝、明るくなった空を『コンロン2』はパズデクスト大地峡目指して飛んでいた。

「うわ、うわあ!! すごい、すごーい!」

初めて空を飛ぶアルシェルは、はしゃぎっぱなしだ。

「転移魔法で帰ればいい、と言ってたわりには凄いはしゃぎ様だな」

アルシェルに聞こえないよう、小さな声でベリアルスが独り言のように呟いた。とはいえ、ベリアルスもその気持ちはよくわかる。

「どうだアルシェル、ジン殿は凄いだろう?」

ベリアルスもアルシェルの隣に行き、窓から地上を見下ろす。

「うん、お兄ちゃんが言ってることわかった気がする」

そんな兄妹を見ていると、人間と少しも変わらない。

仁は改めて魔族と人間の和解にはどうすればいいか考えるのであった。

その時仁はふと思いつき、逃げ出したという 人造人間(ホムンクルス) のことを尋ねてみる。答えは『わかんない』であった。

2体目は『ルージュ』として700672号の下にいるが、1体目は狂気を抱えたまま、まだどこかを流離っているのだろうか、と仁はいろいろな意味で心配したのである。

パズデクスト大地峡のそば、カプリコーン1。

エルザは 転移門(ワープゲート) を使って戻っており、いかにもずっと留守番してました、と言う顔で一行を迎えた。

「お帰りなさい」

「エルザ、留守番ご苦労さん」

「エルザ殿、お陰様でアルシェルと再会できました」

「はじめ、まして。アルシェルです」

そんな言葉を交わし、全員カプリコーン1に乗り込む。今回、仁ダブルはそのまま魔族領まで行かせてしまうつもりだ。

そして仁自身は一足先に700672号の所へ行き、今回のことを報告し、助言をもらうつもりでいた。

その際に返却すべく、クリスタルキューブを受け取っておくことも忘れない。

『コンロン2』は蓬莱島へと帰しておいた。

* * *

半日後、魔族領、『 傀儡(くぐつ) 』の氏族領。

「やあ、ジン、ご苦労様」

「うまくいったようだね」

サキたち居残り組が一行を出迎えた。

「なかなか有意義なひとときだったよ」

トアも満足げな顔をしている。

ヴィヴィアンは少し寝不足気味の顔だ。連日遅くまでいろいろ話を聞いていたらしい。

「アルシェル! 心配したんだぞ」

「……ごめんなさい、族長……」

アルシェルは氏族長のマクシムスに謝っていた。

十分反省をしているというので、お小言は少なめだ。

その後、ベリアルスと共に両親の元へ帰って行った。

その後ろ姿を見送る仁ダブルの姿は、仁の心を反映してか、少し羨ましそうであった。

* * *

「さて」

蓬莱島にいる仁は、以降の仁ダブルの操作を老君に任せると、700672号の所へ行くことにした。

『 御主人様(マイロード) 、お供はどうします?』

礼子は今、仁ダブルと共に魔族領である。

「そうだな、ロルを連れていくか」

アンと同ロットの青髪を持つ 自動人形(オートマタ) 、ロル。老君が教育を続けていたため、経験はともかく、知識的にはアンに迫ると思われる。

「ご主人様、お供させていただけるのですか」

「ああ、行こう」

「はい!」

対魔族という基本命令は、もう1体の青髪を持つ 自動人形(オートマタ) 、レファよりは弱いだろうが、いきなり魔族に会わせるのは心配なので、まずは『サーバント』から、と仁は考えたのだった。

『サーバント』は魔族ではないが人類でもない。ロルがどんな反応をするかわからないので、念のため『老子』にも付いて来てもらうことにした。そんな仁は、

(やっぱり、俺は礼子を頼りにしているんだな)

と内心思っていたりする。

「おお、ジン殿、ようこそ」

700672号はいつもと変わらず仁を出迎えた。

「いらっしゃいませ、ジン様」

「いらっしゃいませ」

アルシェルをモデルにした 人造人間(ホムンクルス) のルージュも元気そうだ。700672号が作った 人造人間(ホムンクルス) のネージュもその隣でにこにこ笑っている。

「そちらは? 初めて見る 自動人形(オートマタ) だな」

「ええ。こっちは『老子』。それに最近発見した『ロル』です」

「ほう。……いろいろあったようだな」

「ええ。……」

世間話的に、仁は『 魔導砦(マギフォートレス) 』の話をした。

「ほう、対魔族用にそんな砦があったのか」

「そうなんです。ですが何とか人的被害を出さずに済ませられましたよ」

「うむうむ、何よりだ」

「それで、今日の用件ですが」

仁は懐からクリスタルキューブを取り出した。

「まずは、お預かりしていたクリスタルキューブをお返しします」

「うむ。役に立ったかな?」

それを受け取りながら700672号が尋ねた。

「はい、それに関しまして、説明します」

エルラド山山頂から 転移門(ワープゲート) で地下施設へ入ったこと。

600012号と名乗る2体の 自動人形(オートマタ) について。

2体は、クリスタルキューブを見せた途端、『主人』からの遺命を果たし、そのまま動かなくなったこと。

その後、施設が崩壊してしまったこと。その際、アルシェルをモデルにした 人造人間(ホムンクルス) 5体は身体が崩れてしまったこと……。

「ふむ、興味深い話だ。……まずはその600012号についてだが、その番号から察するに、吾より更に古いサーバントであろう。長い間、主人の遺命を守り、ようやく果たせたのだな。静かに休ませてやりたいものだ」

3000メートルという地下で、誰にも邪魔されることなく眠れることだろう、と仁は思った。

「だが、クリスタルキューブを見た……というか、その波動を感じただけでそのような反応をするとは思わなかったな」

「そうでしょうね」

予想できるなら、渡す時に忠告してくれただろう、と仁も頷いた。

「その『マライト』による誤動作と関係があるのやもしれぬ、が、もう終わったことだ、掘り返すのは勘弁してやってもらえぬだろうかな?」

700672号は、あくまでも600012号たちをそのまま眠らせてやりたいようだった。それを察した仁は無言で頷いたのである。

「だが、彼等が貴殿に託した知識というのは何なのだ?」

「それが……」

それを聞いた仁は項垂れ、理由を説明する。

「ふむ、『隷属書き換え魔法』対策をしていたことが裏目に出て、きちんと受け取れなかったのか」

「はい、これから解析はしてみますが。何か、心当たりはありませんか?」

藁にも縋る思いで、仁は700672号に尋ねてみた。

「……」

700672号は瞑目して何やら考えていたが、やがて目を開け、返答を口にした。

「ジン殿、吾にもその内容は想像がつかない」

「そうですか……」

残念だが仕方がない。

「それから、その5体のなりそこない 人造人間(ホムンクルス) だがな、その5体は『精神触媒』も使われずに放置されていたのだろう。となると、この先、まともな 人造人間(ホムンクルス) になるとは思えない」

「そうなんですか?」

「うむ。脳に当たる部分が萎縮しているはずだ。これはもう如何ともし難い。もしも見殺しにした、などと気に病んでいるなら、それは間違いだ、と言っておこう」

「そうですか……」

600012号たちがアルシェルの身体で再起するのを諦めた時から、5体の運命は決まっていたのだろう。

「そんな顔をするな。貴殿が悪いのではない。……あまり慰めにはならん、か」

「済みません」

「ご主人様……」

今まで黙って仁の斜め後ろにいたロルが、仁の袖を掴んで来た。仁はそんなロルの頭を撫でてやる。

「ああ、すまん。俺は大丈夫だ」

それから、幾つかの細かい話を交わし、仁は700672号の元を辞した。

サキたちもカプリコーン1に乗り魔族領を発った。再会を約束して。

こうして、エルラド鉱山地下にまつわる一連の出来事は終息の日を迎えたのである。