軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25-04 見つけたもの

『コンロン2』が離陸した後、カプリコーン1に残ったエルザも 転移門(ワープゲート) で蓬莱島に戻った。

入れ替わるようにランド3が送り込まれ、仁ダブルが戻るまで、この場でカプリコーン1を管理することになる。

* * *

『コンロン2』の速度でなら、目的地であるエルラド鉱山まではひとっ飛び、およそ2時間で到着した。

自由魔力素(エーテル) 濃度が低いことについては、ベリアルスに『蓬莱島謹製』ペルシカジュースを飲んでもらうことで解決出来た。

コップ1杯のジュースで半日は大丈夫のようだ。普段は呼吸から取り込んでいる 自由魔力素(エーテル) だが、経口でもいけることは700672号の例でわかっていた。

「早かったですね、どのくらいの速度が出ていたんですか?」

とのベリアルスからの質問に、時速150キロくらい、と答える『仁ダブル』であった。

併せて『全力疾走する馬の2倍から3倍くらい。あ、そういえばグランドラゴンの疾走も同じ位だったかな?』とも補足しておく。

その答えに言葉を無くすベリアルスを尻目に、上空から周囲の地形を観察してみる。

眼下には、2000メートルを超えるであろう山が聳えている。これがエルラド山だろう。

エルラド山は東西に細長い山体をしている。その東側山麓にエルラド鉱山があり、南西側山麓にはエルラド遺跡があった。

「おそらく、エルラド遺跡が入口への鍵じゃあないかと思うんだ」

「そうですね」

仁ダブルと礼子は話し合い、エルラド遺跡のそばに着陸することにした。

もっとも、エルラド鉱山側は、若干ではあるが人の出入りがあるという理由もある。

岩陰にコンロン2を降下させると、仁ダブル、礼子、ベリアルスは飛び降りるようにして下船。3人とも小さな荷物を背負っている。食糧や非常用の装備が入っているのだ。

その後コンロン2はすぐに上昇する。そのまま高度3000メートル付近で待機することになっているのだ。

「さて、行ってみるか」

上空から確認していたので、エルラド遺跡までの道筋はわかっていた。一行は早足で向かった。

「ここがエルラド遺跡か……」

第5列(クインタ) たちの報告でおおよそは知っていたが、 魔導投影窓(マジックスクリーン) 越しとはいえ、近くで見ると迫力があった。

地球の建築様式で近いものがあるとすれば、ビザンティン建築であろうか。

ドーム状の屋根を持つ建物と、それを取り巻く塔が目立っていた。

もちろんそっくり同じではなく、異なる点も多々ある。規模はこちらの方がずっと小さいし、使われている素材も、石材だけではなく金属も所々に使われていたのである。

「様式は我々のものとも少し似ていますね」

観察していたベリアルスがぼそりと言った。

「集めた情報によると、500年くらい前には既にここにあったらしい。それにしては外観が風化していないな」

仁ダブルは外壁表面にそっと触れてみる。

(……やはり、『 強靱化(タフン) 』が掛かっているか。それも、相当強力な)

『 強靱化(タフン) 』は脆い物質を割れにくくする工学魔法である。風化から守るには適した処理といえた。

「ジン殿、中に入ってみましょう」

ベリアルスが急き込んで言った。妹の手がかりを一刻も早く掴みたいらしい。

「よし、行こう」

仁ダブルは荷物の中からヘッドランプを取り出した。これは頭に取り付ける懐中電灯……電灯ではなく魔導ランプだが。

「これはいいですね、両手が空くのがいい」

その特性上、顔の向いた方が照らされることになる。

仁ダブルと礼子は赤外線まで感じられるため特に明かりがなくても平気なのだが、それでもやはり光源がある方がはっきり見えるのだ。

まして、 魔導投影窓(マジックスクリーン) のこちら側で見ている仁にとっては、明かりは必須であった。

一行はゆっくりと遺跡に足を踏み入れた。

「少しカビ臭いような臭いがしますね」

ベリアルスが、鼻と口を押さえた。仁ダブルと礼子は呼吸をしないので問題は無い。

「ベリアルス、これを使ってくれ」

仁ダブルはこういう時のために作った簡易防臭マスクを取り出した。目が細かく薄いフェルトで炭の粉を挟み込んだフィルターが付いているので、多少の効果は期待できる。

ベリアルス以外は不要だが、ポーズとして仁ダブルも着用しておく。

「これはかなり有効ですね」

くぐもった声でベリアルスが感心した。

「目的地は地下だ。階段や隠し通路を探そう」

冷静に観察しながら仁ダブルが方針を口にした。

「わかりました」

3人はゆっくりと、慎重に歩きながら周囲を観察していった。礼子は大気の組成もチェックしていく。ベリアルスは生身だからだ。

「普通に出入りできる箇所にそうした階段があるはずがない。巧妙に隠されているはずだよな」

仁ダブルが礼子に確認するかのように話し掛けた。

「そう思います」

遺跡のこのあたりは、一般人も入り込む場所であるから、危険なもの・めぼしいものなどは無いといって良い。

1時間ほど探し回ったが、何も見つけられなかった。

「いよいよ手を変えることになるな」

魔法を試してみることになる。ただし、その結果、何が引き起こされるかは未知数なので、一旦外に出て、外から使ってみることにする。

それで何ごとも起こらなかったら、順次内部へと移動しながら調査する、と、こういう手順だ。

「『 音響探査(ソナー) 』」

……だが、どこにも空洞はないようである。

「少し奥へ行こう」

そこで『 音響探査(ソナー) 』を使ってみるが、空洞の存在は感じ取れなかった。

これを繰り返すこと数十回。遺跡内部に空洞はないようである。

「うーん……」

行き詰まってしまった一行。

日は傾き、間もなく沈もうとしている。

「今日はここまでにするか」

アプローチの仕方を変えなければならないかもしれない、と、 魔導投影窓(マジックスクリーン) の前で仁は思った。

「……そう……ですね」

ベリアルスも、疲れた顔で答えた。もっと探していたいとは思っているのだろうが、やはり疲労は隠せない。

『コンロン2』を呼び、乗り込む。内部には3人が寝泊まりするには十分な居住スペースがある。

とはいえ、礼子はもちろん、仁ダブルも寝る必要はない。ただ、操縦している仁が眠る必要があるだけだ。

『 御主人様(マイロード) 、その間は私が代わりますからお休み下さい』

老君に操縦を代わり、仁も休むことにした。

* * *

翌日も探索を続けたが成果は無かった。

昼過ぎ、仁がふと思いつきを口にした。

「もしかしたら、遺跡ではなく鉱山の方に入口があるんじゃないかな?」

「うーん、可能性はありますね」

そこでその日の午後はエルラド鉱山を調べてみることにした。

基本は、全ての坑道の奥まで行ってみること。

この日は3人ほどの山師がいただけで、後は静かなものだったので、何とか日没前までに全部の坑道を調べてみることができたのである。

だが、結果は『成果無し』だった。

「うーむ、まいったな」

もう少し何か見つかるかと思っていたのだが。

そんな時。

「この向こうに何かあるようです」

一番南側にある坑道を調査していた礼子が声を上げた。

「本当か? よく調べてみよう。『 地下探索(グランドサーチ) 』……これは?」

魔力的な『エコー』があるようなのだ。

「うーん、だがこれは、天然自然のもののようだが……」

礼子がその手で直接岩を掘り進むにつれ、違和感が明らかになってきた。

「そうか、この感覚は……」

「あ」

仁ダブルからの情報を、仁が解析、判断し終えたその時、礼子はとある鉱石を掘り当てたのである。

「やっぱりな」

それは巨大な『ミティアナイト』=エルラドライトであった。

繭のような形をしており、差し渡し50センチもあるような塊。

「すごいな……」

エルラド鉱山であるからエルラドライトが採れるのは当たり前だが、このように巨大なものは稀少だろう。

そのまま持ち出すと、坑道を監視している管理者に強制的に買い上げられてしまうのだ。

隠そうとしても、エルラドライトの特性を生かした探査魔法があるらしいので隠しきれるものではない。

「よし、転送しよう」

幸い、ベリアルスは別の坑道を調べているので、勘付かれることはないだろう。

蓬莱島にいた仁は、転送先を調整した転送銃を急いで作る。それを老君が転送機で礼子の元へ届け、礼子はエルラドライトを蓬莱島へ転送する、という、かなり回りくどいやり方である。

「でも、一度作っておけばあとは楽だしな」

あとは楽、というのは転送銃のことである。もちろん直接蓬莱島へではなく、『しんかい』に転送し、そこから改めて蓬莱島へ送り出す手順を踏む。これも安全のためである。

以前、『 凍結竜(フロストドラゴン) 』の死骸を送り出した銃の設定は直接蓬莱島へ、であったので一旦リセットしてしまっていたのだった。

この日、最も大きな収穫が『エルラドライト』であった……。

アルシェルへの手がかりはまだ見つからない。