軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25-02 魔族領で

エルザの誕生日パーティー、その団欒の終わりの方で、仁は、ファミリー全員がそろっているからちょうどいい、とこれからの予定を語った。

宇宙船の話と、地下の話。特に、当面の課題である地下の話を詳しく。

「……というわけで、エルラド鉱山の地下の調査をするつもりなんだ。その前準備として魔族領に行き、ベリアルスを連れてくる」

「ふうん、ちょっとは耳にしていたけど、そんなことになっていたのかい」

ラインハルトが驚いたような顔をした。

「ダリにあった謎の 転移門(ワープゲート) がそんなところに繋がっているなんてね」

同じくダリにいても、そうしたごたごたとは無縁だったマルシアは呆気にとられている。

「……ジンもいろんなことに首を突っ込んでいるんだねえ」

とは、彼女の正直な感想だろう。

「くふ、ジン、魔族領に行くなら、ボクも連れて行ってくれないかな?」

「ああ、できれば私も行きたいね」

サキとトアの父娘が名乗りを上げた。

「今回はそんなに長い時間滞在するつもりはないけど、それでもよければ」

仁が承諾すると2人は喜んだ。特にトアは初めてのことゆえ、躍り上がらんばかりだ。

「あなた、大人げないことしないように気をつけて下さいよ」

あまりにはしゃぎすぎてステアリーナに注意されているほどだ。

「くふふ、父さんもステアリーナさんの尻に敷かれてるね」

2人には聞こえないような小声で呟くサキであった。まだステアリーナを『母』とは呼べないらしい。

「あの、できれば、ですが、私も連れていってもらえません?」

ヴィヴィアンだ。語り部として、興味があるらしい。

それも当然だろう、と仁は彼女も連れて行くことにした。

そんなこんなでパーティーも解散。ラインハルト夫妻は公務があるので自領へと戻っていった。

マルシアとロドリゴも、店をあまり空けてはおけないとポトロックへ戻り、ヴィヴィアン、サキ、トアは当然残る。

トアの妻になったステアリーナはショウロ皇国の家で待つと言い、帰って行った。『皆様方にご迷惑お掛けしないで下さいね』と釘を刺すのを忘れずに。

翌朝、朝食後に仁は魔族領探訪参加メンバーに簡単な説明をした。

「乗り物はカプリコーン1。パズデクスト大地峡手前までは転送機で移動し、そこから歩かせる。で、『 傀儡(くぐつ) 』の氏族へ真っ直ぐ向かう」

今の季節、大地峡周辺は気象が安定せず、突風などの危険性を考慮して、『コンロン2』を使うのはやめたのである。

「滞在期間は短いのかい?」

サキが質問した。ヴィヴィアンも同じことを聞きたかったようで隣でうんうんとばかりに頷いている。

「ああ。今回はな。アルシェルを連れ帰ることができたらゆっくりできるだろうが……」

「1泊、と考えておいた方がよさそうね」

ヴィヴィアンが少し残念そうに言う。

「ああ、でも、話によっては、ベリアルスが戻るまで向こうにいるということもできるかもな?」

「ジン、それいいね!」

サキが身を乗り出してきた。

「そうすると、補助要員にアアルを連れていって、何かあったら老君に連絡を入れれば、迎えに来てもらえるだろう」

「そうだね」

もちろん、『仲間の腕輪』でも通信は可能だ。ヴィヴィアンは桃色、サキは薄紫色のものを着けている。

「お父さま、こう言ってはなんですが、アアルだけだと対応に難があるかもしれません」

確かに、アアルの戦闘力は低い。仁は少し考えて、アンとスチュワードも同行させることにした。

* * *

その日の午後。蓬莱島研究所前広場にはカプリコーン1が駐められていた。

その前には仁、エルザ、サキ、トア、ヴィヴィアン、礼子、アン、エドガー、アアル、そしてスチュワード。

今回の操縦はランド1に代わり、スチュワードが務める。

見送るのはミーネ。

「それでは皆様、お気をつけて。ご無事をお祈りします」

「それじゃあ行ってくる」

「母さま、行ってきます」

「行ってきます」

「行ってきますよ」

「行ってまいります」

仁たちは短い挨拶を交わし、カプリコーン1に乗り込んだ。

『では、転送いたします』

老君の声が響き、転送機が作動する。一瞬にしてカプリコーン1はミーネの目の前から消えた。

「皆様、ご無事で……」

北の空を見つめ、小さな声で呟くと、ミーネは研究所に戻ったのである。

* * *

カプリコーン1は、パズデクスト大地峡の手前に転移した。あたりはすっかり雪が無くなり、土色になっていた。草が萌え出てくるのはもう少し先なのだろう。

「ああ、前回は一面の雪原だったのに、ここにも、もう春はすぐそこまで来ているんだね」

サキが感慨深げに呟いた。

仁はスチュワードに命じ、カプリコーン1を発進させる。

天気は薄曇りだが、遠くまで見通すことができる。

「今回は岩の様子がよく見えるね!」

サキははしゃいでいる、前回は雪と氷に閉ざされており、岩の分布を観察することができなかったのである。

順調に進み続け、2時間ほどで地峡が最も狭まった場所に来た。

「ジン、このあたりから岩が変わると言ってたよね?」

「ああ、そうだ。……ほら、あそこあたり」

「どれどれ……ああ、本当だ!」

まだ日陰には雪が凍り付いて残ってはいるが、地面の7割以上が見えており、岩の色が違うことは一目瞭然であった。

「ふうん、石灰岩から、ラジオラリア板岩、って言ったっけか? ……に変わる訳か。本当に赤い岩なんだね……」

「ああ。だから俺は、ローレン大陸とゴンドア大陸は大昔の地殻変動でくっついたんじゃないか、と思っているんだ」

「うんうん、ありそうだね」

そう言いながらもサキは窓に釘付けである。

「岩のサンプルなら帰りにでも採集しよう」

「くふ、そうしてもらえると嬉しいね」

そしてカプリコーン1は日暮れ前に大地峡を踏破した。そのあたりはもう『 傀儡(くぐつ) 』の氏族の土地である。

「このカプリコーン1のことはみんな知っているはずだから、何か動きがあってもいいんだがな」

仁のそんな言葉が終わらないうちに、遠くに人影が見えた。

「アン、見てきてくれるか?」

「はい、ごしゅじんさま」

アンは昨年の魔族領探訪の際にも同行していたので顔が売れている。なんといっても『グランドラゴン』を彼等の目の前で倒したのであるから。

「アン殿、よく来られた!」

カプリコーン1らしい乗り物が近付いてくる、というので、数名が確認するため出て来ていたのだ。

その彼等はアンのことを覚えていたので話は早かった。

「ジン殿、歓迎いたしますぞ」

知らせを聞いた氏族長マクシムスが自ら仁たちを出迎えた。

「マクシムスさん、しばらくです。こちらは俺の仲間でエルザ、サキ、トア、ヴィヴィアンです」

「エルザです」

「サキです、よろしく」

「サキの父、トアです」

「ヴィヴィアンと申します」

皆それぞれ改めて名乗りを上げた。仁は更に今回の目的を告げる。

「行方不明だったアルシェルの手がかりを掴んだんですよ」

それを聞いたマクシムスは驚きを隠せないようだった。

「なんですと! それは朗報ですな!」

「それで、ベリアルスを誘いに来たんですが」

「ああ、ギリギリで間に合いましたな。実は、奴は一両日中にもアルシェルを捜しにローレン大陸へ出発する予定でした」

それを聞いた仁は、本当にギリギリだった、と胸を撫で下ろしたのである。