軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24-28 潜入、クロゥ砦

『まずはオランジュの居場所、砦内にいる人間の数、砦内の警備状況、そして内部構成等から把握していきますか』

情報を得ることが最優先である。忍び込んだ、もとい、転送された25体の超小型ゴーレムたちは砦内に散らばった。

地下を担当したのはサム1〜10。諜報用に調整された者たちだ。

(まずはこの階層を調べよう)

(了解)

彼等は皆、内蔵された『 魔素通信機(マナカム) 』を使い、声を出さずとも会話できるのだ。

加えて『 不可視化(インビジブル) 』で姿を消して行動すれば、その5センチという身長と相まって、普通の人間には見つかることはない。

クーガーたちを運んできたゴーレムも今はいない。

まずは魔法的な物も含め、監視装置を探すことにした。

(大丈夫だな)

(うむ、 魔導監視眼(マジックアイ) に近いものがところどころに埋め込まれてはいるが、全て死んでいるようだ)

300年という年月で、ある物は故障し、またある物は苔や埃に覆われ、用を成さなくなっていた。

オランジュの配下も、修理用ゴーレムも、まだそこまで手が回っていなかったのである。

(これを完全に使用できなくしておこう)

ということで、どこかに……おそらく司令室へと繋がる魔導導線を切断しておくことにした。

壁に使われている石材の隙間から魔法を使い、導線を切っていくサムたち。

人間には難しくても、身長5センチの彼等には十分可能であった。

そしてこうなると、行動の自由が広がる。

(隣の部屋にいる捕虜というのは……?)

人命優先をモットーに、サム9と10は確認しに行った。行動は2体以上で、が基本である。

ここで問題が生じる。

(ドアを開けられない……)

身長5センチでは小さすぎて、基本的に人間用の施設は利用できないのである。つまり誰かが開けるのを利用しなければならないということ。

換気口には虫除けなのか網が張られており、彼等にも抜けられない。覗き窓すらない扉は脱走防止なのか、それとも別用途の部屋だったからか。

もちろん、工学魔法などで穴を開けることはできるが、それは最終手段である。内部に見張りなどがもしいたら、潜入したことがばれてしまうからだ。

ばれるならもう少し調査を進めてから、にしたい。

(捕虜がいるなら、食事や水を与えるためにいずれ出入りがあるはず。それまで待機しよう)

サム7と8は通路を通り、奥と 思(おぼ) しき方向へ向かった。

(この部屋の扉は開いているな、見てみよう)

(よし)

人の気配は無い。それでも2体は慎重に部屋の中を覗き込んだ。

(おお!)

そこには戦闘用ゴーレム、万能ゴーレム、修理用ゴーレムなどが所狭しと並んでいた。

(これは……我々と同じ系統……ということは、先代様の 設計基(テンプレート) が使われているのだな)

(ご主人様が見たらお喜びになるだろうな)

この情報は早速に老君を通じ、仁にもたらされたのは言うまでもない。

サム5と6は、7と8とは反対方向へ進んだ。

(井戸、か。砦内に水場があるというのは強みだな)

(ここで待っていれば、必ず誰かがやってくるだろう。それを待つとしよう)

(そうするか)

サム1から4は更に地下へ向かった。

(なんとなくこの地下に何かあるような気がする)

(うむ、同感だ)

魔力の余波とでも言うべき『感覚』を4体は覚えていた。諜報に特化しているだけあって、そうしたものを感知する能力は高いのだ。

《そこに来たのは何者だ。姿は見えないが、いるのはわかっているぞ》

声が響いた。

(この声は?)

(人間ではなさそうだな)

もちろん声に出さないやり取りである。

《近寄るな、出ていけ。さもないと『 雷の洗礼(サンダーレイン) 』を浴びせるぞ》

(雰囲気が老君と似ているな。もしかして魔導頭脳ではないか?)

( 魔導砦(マギフォートレス) というくらいだ。統括する魔導頭脳があってもおかしくない)

そこでサム1が代表して声を発した。甲高いキンキン声であるが、届いたはずだ。

「マテ、ワレワレハテキデハナイ。オマエハダレダ?」

《問答無用。出ていかないようだな。よし、後悔するがいい。『 雷の洗礼(サンダーレイン) 』!》

『頭脳』は聞く耳を持たないらしい。雷属性魔法、『 雷の洗礼(サンダーレイン) 』を放ってきた。これは対象範囲に強い雷を浴びせる魔法で、手練れになると電圧も調整できる。

(なかなか高い電圧のようだ)

(うむ。確かに。オゾンが発生しているようだしな)

オゾン、O3は、高いエネルギーを持つ電子と酸素分子の衝突によって発生する。つまり、雷などの大気中での放電ではオゾンが発生している。特異な刺激臭を持ち、人体に有毒。

コピー機などでもごく少量発生するため、仁の知識にあり、従ってサムたちも知っていたのである。

《うむむ、今の雷魔法でも平気らしいな? ならば手加減は抜きだ》

サムたちの気配に変化がないことを感じ取った『頭脳』は更なる『 雷の洗礼(サンダーレイン) 』を放つ。

ただし、まったく見当外れの方向に。

サムたちの大きさを知らないがゆえに、距離感が掴めていないのだ。加えて、視認できていないということもある。

(だが、これでは近づけないな)

(うむ)

(話し合いもできない)

『 障壁(バリア) 』は物理・魔法攻撃を無効化するものではあるが、彼等の大きさに応じて強度も低い。

1度目の『 雷の洗礼(サンダーレイン) 』は凌げるが、2度目に放たれた電圧は5000万ボルト以上あり、防ぎきれない可能性があった。サムたちもこれ以上は近づけそうもない。

(とりあえず報告しよう)

(それがいいな)

* * *

さて、フィンガー5体と 忍(しのび) 部隊10体は階上へと向かった。

15体なので3体1組になって調査に取りかかる。

(ここは食料庫か)

(こっちは武器庫らしいがほとんど空だな)

(ここにはゴーレムが並んでいるぞ)

(とはいえ、かなり旧式だな。サムたちが見つけたものにはかなり劣るようだ)

老君に報告を行い、彼等は更に上を目指す。

地上1階部分は広間を中心に廊下が巡らされており、小部屋が幾つか設けられていた。

この階でも3体1組で調査を進めていく。

(レグルス43の報告ではこの階に罠が仕掛けられていたそうだ)

(確かに、壁の中に魔力性の導線が通っているようだ)

(切るか?)

(いや、老君の指示によると、まだそのままにしておけとのことだ。敵に気付かれるおそれがある)

(わかった)

人影も見あたらなかったので彼等は2階へと向かった。

(ここは居住区らしいが人の気配がないな)

(うむ、それほどまでに人員不足なのか?)

捜し回ってみたものの、一人として見かけることはなかったのである。

(では上へ行くとしよう)

そして彼等は更に慎重に、3階へと向かうのであった。

(3階には何も無い、誰もいない、か)

(おそらく高級将校や技術者、上級兵士などのための階層なのだろう)

こうして見ていくと、砦がいかに人手不足かわかろうというもの。本来、50人、100人で立て篭もるべき施設なのだ。

(それにしても、未だに誰も見かけないのはどういうわけだ?)

捕虜を除き、砦側すなわちオランジュ陣営の人間を誰一人として見かけていないというのはいささか異常であった。

(おそらく4階に司令室があるはず。オランジュがいるならばそこしかないだろう)

この状況ではそう判断せざるを得なかった。

15体は纏まって4階へと向かう。

(ここが司令室だな)

(位置的にいって間違いない)

(よし、まず自分が入ってみる)

扉は開いていた。

隠密行動に最も特化した『 忍(しのび) 部隊』の長、忍壱が率先して部屋に潜入したのである。

(これは……)

そこで彼が見たのは、空っぽの部屋。いや、机や椅子などの調度品や、 魔導投影窓(マジックスクリーン) をはじめとする 魔導機(マギマシン) は確かにあった。

だが、それを使うべき人間がいなかったのである。

いたのは、停止した青髪の 自動人形(オートマタ) が2体。

敵か味方かわからないため、 忍(しのび) 部隊は気付かれないよう観察するに留めたのである。