軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24-29 意外な展開

一方、9名と共に捕虜となった、 第5列(クインタ) のレグルス43、クーガーは。

(動き出してもよさそうだ)

サムたちが調べた結果、周囲に人間がいないことはわかっている。

また、監視用の 魔導監視眼(マジックアイ) から視覚情報を送る魔導導線も切られていることを知っていた。

(そろそろ、麻痺が解けて動き出してもおかしくはないだろう)

監視についていたゴーレムも、超小型ゴーレム25体が来る少し前に出て行ったきり戻って来ない。

(行動に移すなら今だ)

と判断したクーガーは縛られていた縄を引きちぎる。人間には無理でも、彼には楽勝である。そしてそっと起き上がり、ドアを開けた。鍵は掛かっていない。

廊下にももちろん人影はない。感じるのはサムたちの存在だけ。まず目指すは隣の部屋、捕虜らしき気配の正体を確認しに行ったのである。

その部屋の前にはサム9と10が待機していた。

(レグルス43か。ドアを開けてみるつもりか?)

内蔵 魔素通信機(マナカム) でサム9が語りかけてきた。

(そうだ。我々のところからゴーレムが出て行って2時間ほど経つ。それきり戻って来ない。それから考えると、室内にゴーレムがいない可能性が高い)

レグルス43、クーガーも 魔素通信機(マナカム) で返答した。

(我々も同意見だ。そうした魔力を感じられないからな。だが、もしいたとしても我々の存在は気取られたくないのだが)

(わかる。だから、ここは目を覚ました私が単独で調べに来た風を装うことにしよう)

(異議無し)

そんなやりとりが交わされ、クーガーはドアの取っ手に手を掛けた。

意外なことに鍵は掛かっていなかった。

そっとドアを開け、中を覗いたクーガーの目に映ったものは意外すぎるものであった。

「オランジュ!? それに……こいつらは立て篭もった連中か?」

* * *

クロゥ砦に潜入した『王国軍別働隊』10名のリーダー、ドーハスの知識を転写した『頭脳』は、即解析に入った。

仁には劣る『 知識転写(トランスインフォ) 』とはいえ、彼等の陣営についての情報を得るには十分であった。

そして得られた情報はそれだけではなかった。

《なんと……わが内部にいる者たちは少数派で、多数派の者たちと抗争を続けているのか》

この戦いの真相を知ったのである。

《ううむ、どうすべきであろうか》

『頭脳』には、このようなときにどうすべきか、という指示はなされていなかった。

そもそも、砦は対人間用ではなく、対魔族用なのである。しかも戦闘用に偏った基礎知識しか無く、実働経験も皆無。

『頭脳』は、たっぷり5分間悩んだ揚げ句、一つの結論を出した。

『無駄な争いを止めるのがより上策である』、と。

『ぎゃああっ! な、なぜだ!?』

まずは司令室にいる、ルフォール・ド・オランジュが無力化……気絶させられた。

『ぐわああっ! は、反乱か!?』

次いで、オランジュの腹心、ボッカー・オーヴが。

『ぎゃあ!』

『ぐあっ!』

『がはっ!』

そして、砦内にいたオランジュの部下たちが。

次々と気絶させられ、地下へと運んで行かれたのである。

疲れで死んだように眠るダジュール・ハーヴェイは、そのまま運んで行かれた。

こうして、クロゥ砦内の人間は全員が地下の監禁室へと集められたのであった。

* * *

部屋の中には気絶したままのオランジュをはじめとする、合計9名が横たわっていた。……縛られて。

(これはいったいどういうことだ……?)

クーガーはありのままを老君に報告した。

『ふむ、オランジュたちが……』

老君はその理由を考えてみることにした。

同じ魔導頭脳の考えること、不可能ではない。

『リーダーの、ドーハスと言いましたか、彼の知識を転写し、解析したとすれば……』

同じ筋道で思考していくことで、推測の確実性が増す。老君は更に考えた。

『この戦いの意味、背景も知ったでしょうね。すなわち、両陣営の立場を知った。その上でどんな判断を下すか……』

老君にとっては仁が至上である。が、『頭脳』はどうであろうか。

『対魔族のために作られたなら、対人戦闘は忌むべきものという可能性が高いですね。そうなった場合は……』

おそらくどちらの味方もしない、という結論に達するのではないか。

『それを前提に、戦いを止める方法は……』

以前、仁がデウス・エクス・マキナの名を借りて、小群国間の紛争を収めた方法。

『双方を戦闘不能状態にする』

その可能性は高いと、老君は判断した。

「どうした、老君?」

蓬莱島司令室にいた仁が、考え込んでいるらしい老君を訝しく思い尋ねてきた。

『はい、 御主人様(マイロード) 。実はこんな報告が……』

推測も添え、現状を簡潔に報告する老君。

その時、地下の探索をしていたサム1から報告が入ったのである。

『ふむ、おそらくそこが砦を総括する魔導頭脳でしょうね』

「俺もそう思う。そういった魔導頭脳を置くならやっぱり地下だろう」

老君が置かれているのも地下である。

『その魔導頭脳はおそらく迷っていますね』

「だろうな」

そこへ、黙って聞いていたエルザが口を挟んだ。

「ジン兄、難しくてわからない。もう少し易しく教えて」

仁は頷いた。エルザはまだ大規模な魔導頭脳の製作をしたことはないからだ。

「あ、ああ、ごめん。魔導頭脳の設置場所についてはいいよな? できるだけ安定した、安全な場所ということだから」

「うん」

そこで仁は、魔導頭脳の基礎設定について簡単に説明することにした。

「まずは存在意義、これが下敷きになる。老君の場合は俺への奉仕、だな」

これがある以上、絶対に仁に背くことはできないのである。

「次が基本命令だ。自己保存に始まって、蓬莱島の守護や、礼子の暴走監視なんかがこれだな。それに制限。新規開発は俺の許可がいる、など……」

噛み砕いて説明していく仁。エルザは黙って聞いていた。

「……と、まあ、そんな感じだ。悪いけど、今は時間が無い。詳しい話はまた後でな」

「ん」

そこで仁は話題を戻した。

「……今説明したとおり、クロゥ砦の魔導頭脳は、おそらく基本命令に対魔族、というものが入っているはずだ。対人戦闘というのは考慮されていない」

「それは、わかる」

「だから、今問題にしているのは、相手が人間だとはっきりわかったときにどういう行動をとるか、ということなんだよ」

『これまで得た情報を加味して、その魔導頭脳は争いを止めようとするのでは、と考えました』

これには仁も頷いた。

「十分に考えられることだよな」

『はい。無力化されたオランジュ一味がそれを裏付けていると思われます』

「だが、サム1から4、だったか? 彼等も近づけないんだろう?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。おそらく、砦外の『王国軍別働隊』を全員無力化するまでは止まらないのではないかと』

それを聞いた仁は渋い顔をした。

「それは止めさせたいな。どうにかしてその魔導頭脳と対話できないのか?」

『サム1たちが近付いた際、問答無用で攻撃してきたといいます。おそらく自己保存命令によるものでしょう』

「バランスが悪そうだな」

『はい、そう思います。もしかすると、外部に何か補助要素が必要なのかも』

そこで老君は、 忍(しのび) 部隊が見つけた青髪の 自動人形(オートマタ) 2体との関連性を思いついた。

『 御主人様(マイロード) 、実はこういう 自動人形(オートマタ) が……』

「うーん、もしかするとその2体が鍵になる可能性があるな」

「ごしゅじんさま、それでしたら私をお遣わしください」

仁が振り向くと、青髪の 自動人形(オートマタ) 、アンが立っていた。