軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24-27 ついに動く蓬莱島

《ちょうどいいサンプルが来た》

外壁の下を掘り抜いてきた10人と10体を見た『頭脳』は内心ほくそ笑んだ。

《捕らえて調べてみることにしよう》

そう決めた『頭脳』は、砦の予備出入り口を開放し、通路にいた歩哨ゴーレムを引き上げさせた。

そして、途中の部屋には施錠し、1箇所だけ鍵を開けておく。その部屋にはもちろん罠が仕掛けられていた。

砦を把握した『頭脳』には、こうした措置を、司令室など一部の部屋をのぞく全ての箇所に行えるのである。

もちろん、司令室に籠もっているオランジュたちは、『頭脳』が独断でこのような行動をしていることは知らない。

『司令官』以外に、『頭脳』に対する無制限の命令権を持つ者はいないのである。

そんなこととは知らない10人と10体は砦内に入った。

「人影がないな」

「それだけ人員不足なのでしょう」

小声で短いやりとりを行い、一行は奥へと進んでいった。

途中見つけたドアには鍵が掛かっており、無理に開錠している時間は取れないので、更にその先へ進む。

そして辿り着いた1つのドア。

「お、ここは鍵が掛かっていないぞ」

とはいえ、中に誰がいるかわからない。が、ここまで来て開けてみないという選択肢はない。

「よし、半数は先に行け。残り5人と5体でここを調査する。そうだな、お前はとりあえずそっちのリーダーをしておけ」

仮のリーダーが指名され、ドーハスの指示で二手に分かれることになった。そのドーハスはドアを開ける方の集団、 第5列(クインタ) であるクーガーは先へ行く方の集団である。

クーガーたち5人と5体が通路の角を曲がったことを確認したドーハスは、ゴーレムにドアをそっと開けさせてみた。

「……空か」

中は空室であった。明かりもついておらず、薄暗い。

「何かあるかもしれない。調査してみるぞ」

5人は中に入り、ゴーレムは2体が通路で警戒、2体がドアを確保。1体は部屋の中で警戒、である。

「……しかし何も無いな……」

「オランジュの奴に味方する者も少ないでしょうしね」

文字通り『空』の部屋なので、探す場所も限られており、本当に何も無いことが確認されたのは1分後。

「よし、ここはもういい。先に行った5人と合流するぞ」

ドーハスがそう言って通路に出ようとした、その時。

《『 衝撃(ショック) 』》

「ぐあっ!」

「ぎあっ!」

衝撃(ショック) の魔法が降り注ぎ、5人は気を失った。彼等が連れて来たゴーレム5体は半自律タイプ、命令者が沈黙したため、為す術もない。

更には、施錠されていた他の部屋の扉が開き、10体の戦闘用ゴーレムが現れたのだ。

性能で劣り、数でも劣る『王国軍別働隊』のゴーレム5体はたちまち無力化されてしまった。

「!?」

ドーハスたちに何かあったことを、クーガーはその人間離れした聴力で察した。追いかけてくるゴーレムの足音も聞こえる。

「逃げろ! 見つかった!」

一声叫ぶと走り出す。残りの4人も一瞬遅れたが、クーガーに続いた。

だが、彼等の行く手には壁が立ちはだかる。

砦内の大半は『頭脳』の体内も同じ。『頭脳』が操作して出現させた壁だ。

一部の通路は、側壁・天井などから、『頭脳』の制御により壁をせり出させることができる構造になっているのである。

「い、行き止まりだ!」

後ろからは5体の戦闘用ゴーレムが迫ってくる。クーガーたちが引き連れているゴーレムに命令を出そうとした、その時。

「がっ!」

「ぎゃああっ!」

『 衝撃(ショック) 』が浴びせられ、5人とも動かなくなったのである。

こちらのゴーレムも命令するものがいなくなったため、あっさりと捕獲されてしまったのであった。

(……このまま気絶した振りをするか)

だが、 自動人形(オートマタ) であるクーガーだけは気を失ってはいなかった。内蔵された 魔素通信機(マナカム) で老君と連絡を取り、以降の行動方針を決定したのである。

気を失った5人は、戦闘用ゴーレムに縛り上げられ、抱え上げられて、どこかへ運んでいかれるようだ。

クーガーが薄目を開けて見てみると、階下の部屋へと運んでいかれているようだった。

地下2階にある監禁室に10人とも運び込まれた。

(隣の部屋にも人の気配が……)

クーガーの鋭敏な感覚に、別の捕虜らしき者の存在が感じられたのである。先の偵察で捕虜になった者かもしれない。

彼はその情報を老君に伝えたのち、己の問題に取り組むことにした。

(さて、何をされるのか?)

クーガーがじっと観察を続けていると、リーダーのドーハスに近付くゴーレムがあった。

そのゴーレムが唱えた魔法は……。

彼に危害を加える気なら即攻撃しようと身構えるクーガーだったが、そのゴーレムが使った魔法は、なんと『 知識転写(トランスインフォ) 』であった。

(チーフがお使いになる『 知識転写(トランスインフォ) 』よりも大分落ちますね)

とはいえ、仁と仁ファミリー以外で、初めて出会った『 知識転写(トランスインフォ) 』の使い手であることに間違いはない。

そして、『 知識転写(トランスインフォ) 』の目的は明確。

攻撃側の作戦を、陣容を、戦力を知るため、であろう。

この時点では、さすがの老君も、『頭脳』が己の置かれた状況を必死に分析しようとしていることまでは見抜けなかったのである。

* * *

『……という状況です』

老君からの長い説明が終わり、仁は何かを振り払うかのように2、3度首を振った。

「……そうか。介入した方がいいだろうかな?」

『はい。レグルス43を除いても10名ほどの捕虜がいます。彼等をみすみす見殺しにするのはまずいかと』

「そうだな」

ここに、エルザの言うところによる『理由』が生まれた。

「よし、クロゥ砦をできる限り早く無力化しよう」

『 御主人様(マイロード) 、それについて提案があります』

「何だ?」

『はい。偵察行を『 忍(しのび) 部隊』にやらせてみたらいかがでしょうか』

意外な提案であった。

「 忍(しのび) 部隊にか?」

『はい。隠密裏に行うにはうってつけかと』

この提案に、仁は少し考え込む。

「うーん、だけど、捕虜を助けたりする必要もあるぞ?」

『いつでも後から送り込めます』

即答する老君。

「わかった。だが 忍(しのび) 部隊10体では足りないんじゃないか?」

『それにつきましては、私直属のフィンガー1から5及び諜報用のサム1から10も投入すれば十分かと』

「なるほどな。だが、損失には気を付けろよ? 無理をしてお前たちを失いたくないからな」

『承りました。それでは早速作戦を開始します』

こうして老君は、レグルス43すなわちクーガーをマーカーとして、25体の超小型ゴーレムを転送したのであった。

クーガーは、すぐそばに現れた25体を感じ取った。

25体は全部が『 不可視化(インビジブル) 』を発動させているため、目に見えない。視覚を可視光から遠紫外線領域に変更してようやく見えるようになるのだ。

このおかげで、もしもゴーレムに出会ったとしても大丈夫。

通常のゴーレムの視覚は、可視光域か、広くても少しだけ赤外・紫外領域に掛かっている程度なので、視認されることはないからだ。

25体は老君の指示に従って、砦内に散らばって行ったのであった。

それを見送るクーガー。

気絶したふりのクーガーは動くに動けず、もうしばらくじっとしていなくてはならないのである。