軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24-13 挨拶まわり

翌7日は朝から慌ただしかった。

フランツ王国での騒動が、ここセルロア王国にまで届いたのである。

朝食を終えるや否や、居残っている各国代表は会議を持った。

「フランツ王国で革命が起きたそうだ」

これが会議のテーマになる。

「無血革命に近い状況らしい」

「リジョウン・ド・バークリーは革命軍に退位させられ、代わってロターロ・ド・ラファイエット公爵が王位に着くそうだ」

ここまでは、まあいい。ラファイエット公の評判はよく、他国にまで聞こえているくらいであるから、今後の国交に大きな問題は生じないだろうと皆楽観的である。

問題はオランジュだ。こちらの問題が大きすぎるため、王の交代が大したことと思えなくなっている節もある。

「オランジュが辺境の砦に立て籠もったそうだ」

「どうも魔導大戦時の遺跡らしく、簡単には落とせないらしい」

代表間で情報の交換が行われていく。

そこへ新たな情報が届いた。持ってきたのはカーク・アット。セザール王第一の腹心である。

「今朝早く、デウス・エクス・マキナ殿より、この書状が届けられました」

それだけを言って下がっていった。

一同、書状の中身が気になるので、代表してアーサー王子が大急ぎで書状を読み上げた。

「……オランジュが立て籠もったクロゥ砦は魔導大戦時の遺跡で、『 魔導砦(マギフォートレス) 』である。ただの砦ではない。注意されたし」

「『 魔導砦(マギフォートレス) 』だと? それはいったい……」

テオデリック侯爵が疑問の声を上げかけるが、アーサー王子はそれを制した。

「まだ続きがあります。……『 魔導砦(マギフォートレス) 』とは、それ自体が巨大なゴーレムのようなものであると推測される……」

書かれた説明を読み上げていくと、聞いていた面々の顔色が変わった。

「そんな遺物が……!」

「どうやって攻略すれば……!」

「そもそも今の技術でなんとかできるのか?」

など、完全に怯えてしまっているようだ。

そんな空気を払拭せんと、アーサー王子は声を上げる。

「皆さん、落ち着いて下さい。どんな堅固な砦、城であっても必ず弱点はあります。例えば『兵糧攻め』。これは防ぎようがないはずです」

「おお……」

「た、確かに」

それを聞いて、皆、少しは落ち着きを取り戻したようである。

(蓬莱島だったら 転移門(ワープゲート) があるし、自給自足もできるからなあ)

などと仁は考えていたが、口に出すようなことはしない。そのくらいの分別はある。

実際、クロゥ砦に人間が何人いるのか、ということも兵糧攻めには重要なポイントであるが、それについての情報はなかった。

「さて皆さん、状況が状況です。こうなってしまっては、私も明日には帰国しないとまずいでしょう」

ショウロ皇国女皇帝が発言した。ずるずるとここまで居残っていたが、情勢がこのように動いた今、帰国せざるを得ないだろう。

「そうですね、私も一度帰国しようと思います」

クライン王国のアーサー第2王子もそう発言した。

「こうなっては仕方ありませんわね」

エリアス王国のフィレンツィアーノ侯爵も。

「うむ、残念ではあるが、そうせざるを得ないな」

エゲレア王国のブルウ公爵も帰国する意志を明言した。

ということで、

ショウロ皇国:女皇帝、テオデリック侯爵、デガウズ魔法技術相、フリッツ中佐、マテウス大尉、ラインハルト。

クライン王国:アーサー第2王子、付き人リオネス、ジェシカ近衛女性騎士隊隊長。

エゲレア王国:ブルウ公爵

エリアス王国:フィレンツィアーノ侯爵、マルシア。

そして仁、エルザ。

こうした面々は一度帰国することを決めたのである。

それを午後一番で新王セザールに告げると、いかにも残念、という顔をされた。

「そう、か。状況が状況だから致し方ないな。皆、これまでの協力感謝する」

* * *

「あーあ、とりあえずここともお別れか」

微妙に私物が散らばった客室を片付けながら仁が呟いた。

「ん、仕方ない」

服を畳みながらエルザが答える。

「お父さまならいつでも来る事ができますよ」

礼子が仁を慰めた。

「エルザ様、荷造りが終わりました」

エドガーが大きなバッグを二つ抱えてやってきた。

「これでよし。今夜寝て、明日の朝食を食べたら出発しよう」

「うん」

「本当は、この後、各国代表を崑崙島に連れて行って世界会議を始めたかったんだがなあ」

「世の中って、なかなか、思い通りにはいかないもの」

「まったくだ」

そんな時、ドアがノックされた。

礼子が応対する。訪問者はマルシアだった。

「やあ、ジン、エルザ。お邪魔するよ」

「いらっしゃい」

礼子が、備え付けの茶器を使ってお茶の用意をしてくれた。

「こうやってゆっくり話をするのは久しぶりだな」

「ジンも出世して忙しかったものな」

「本当はもっとのんびり、好きなことしていたかったんだけどな」

仁がぼやくような口調で言うと、マルシアは苦笑した。

「あはは、それは無理だね。気持ちはわかるけどさ。完全に引き籠もらない限り、周りがジンのことを放っておくわけないじゃないか」

「まあ、な」

「でも、気持ちは少しわかるかな。あたしも、好きなように船を造っていけたらいいなあ、と思うことがあるし」

生きていくためには稼がねばならず、そうなるとしたくないこともしなければならず、会いたくない人と会うことも必要になってくる、とマルシアは結んだ。

「それはそうだよな」

「うん、でもジン兄は浮世離れしているし」

「どこでそんな言葉覚えたんだ……」

「あはは、仲が良さそうで何より」

などという世間話の後、マルシアは本題に入った。

「実は明日の朝、国に帰ることになったからさ。その前に2人と話がしたかったんだ」

「うん、楽しかった」

「またすぐ会えるさ」

とはいえ、仁にもマルシアにもそれぞれの生活があるため、いつでも、というわけにはいかないことは皆理解していた。

「それじゃ、少し早いけど、おやすみ、ジン」

「ああ、おやすみ」

午後8時、マルシアが帰った後、仁はエルザに尋ねかけた。

「俺たちも、他の人たちに挨拶回りした方がいいかな?」

「……うん、そうかも。まだ時間的には失礼じゃない。今から……行く?」

エルザも賛成したので、仁たちは各国代表たちに簡単な挨拶をして回ったのである。