軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23-37 再考/マキナ出動

仁は、ここで『デウス・エクス・マキナ』を登場させることにし、老君に連絡を取る。

「老君、『ペガサス1』にマキナを乗せて出撃させろ」

だが、老君から返ってきた返答は、仁が予期しないものであった。

『 御主人様(マイロード) 、マキナ出動は問題ないと思いますが、『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』の使用はご再考下さい』

「どうしてだ?」

『はい、その場には各国首脳が集まっています。彼等の前で、例えマキナが、とはいえ、『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』を使ったらどう思われるでしょうか?』

仁ははっと思い至った。隣で聞いていたエルザも同様だ。

『リヨン』のみならず、 魔力素(マナ) タンク仕様の魔導具は全て停止することになるのだ。

それはつまり、今の世界秩序を破滅させられるということでもある。

もちろん仁は乱用するつもりはないが、他人はそうは思わないだろう。

「……確かにな」

現場におらず、広い視野で現状を分析できる老君ならではの意見であった。

「そうすると、現状の打破には……」

仁は、眼下の様子を再確認した。

「もう逃げ遅れたものはいないようだな……」

『リヨン』の動作は、仁から見れば鈍い。人々が避難する時間は十分にあったのだ。

だが。

「……やっぱりか」

リシャール王の発した『暴れろ! 壊せ!!』は、周囲全てに適用されるらしい。明確な目標を設定していないのだから当然の帰結とも言える。

暴走した『リヨン』は、ギョーム離宮のみならず、周辺施設にも襲いかかっていたのである。

「放っておけば、町にも被害が出るだろうな」

「……ジン兄」

エルザも心配そうだ。仁はそんなエルザを安心させるように、別の策を説明した。

「大丈夫だ。既知技術で『リヨン』を止める方法はもう1つある。老君、マキナの準備は?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。準備完了しています』

「よし。ランド部隊は?」

『はい。ランド11から20まで、出動準備が整っています』

「それならいい。いいか、今から俺は蓬莱島へ行く。全属性の 魔結晶(マギクリスタル) 10個を用意しておいてくれ」

『わかりました』

今度は理由を聞かず、老君は仁の指示を受けた。仁はエルザに声を掛ける。

「エルザ、今から俺は蓬莱島へ行ってくる、多分数分で戻れるだろう。詳細は戻ってから話す」

「うん、わかった。その間、操縦室には誰も入れない。行ってらっしゃい」

「礼子も頼むぞ。それじゃ、行ってくる」

操縦室内にこっそりと設置されている 転移門(ワープゲート) を使い、仁は蓬莱島へ飛んだ。

『 御主人様(マイロード) 、準備は整っております』

司令室のテーブル上には、10個の全属性 魔結晶(マギクリスタル) が乗っていた。

「ご苦労」

一言老君を労った仁は、時間が惜しいとばかりに、早速工学魔法を使い、加工を開始した。

「……『 書き込み(ライトイン) 』」

そうして出来上がる、10個の魔導具。仁はそれを老君に託した。

「これをランドたちに持たせて出動させてくれ。俺は『コンロン2』に戻る」

慌ただしい帰島であった。

「ジン兄、お帰りなさい」

きっかり5分で『コンロン2』に戻った仁をエルザと礼子が出迎えた。

「お父さまの留守中、異常なしです」

「わかった。もうじき、ランド隊が転送されてくる」

どこから、というのがわからないように、『 不可視化(インビジブル) 』を使いながら、である。

傍目には、どこからともなく現れたように見えるだろう。

「お、来たな。よしよし」

そのランド隊が暴れている『リヨン』に近付くと、一瞬で『リヨン』が停止した。

「……どうして?」

エルザの当然ともいえる疑問。

「エルザも知っている……というより、酷い目にあった魔法さ」

ヒントを出す仁。エルザはそれを聞いてすぐに気が付いた。

「……あ、もしかして、『 消去(イレーズ) 』?」

「正解だ。『 消去(イレーズ) 』なら、同類の『隷属書き換え魔法』を 統一党(ユニファイラー) が使っていたしな」

怪しまれること無く『リヨン』を停止させることができるというわけだ。

「……やっぱりジン兄、すごい」

「いや、俺だって、はじめは『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』を使おうと思ったさ。だけど老君に言われて気が付いた。気軽に人前で使っていいものじゃないよな」

「……ん、確かに。『重力制御魔導装置』とか、『結界爆弾』とかも……」

「だな」

眼下では、23体目の『リヨン』が停止するところであった。

* * *

『リヨン』による被害を少しでも減らそうと、フリッツは『ゴリアス』で対抗していた。

彼が相手取っていた『リヨン』は12体。

『リヨン』の素早さは体躯の大きい『ゴリアス』に勝っていたが、単に『暴れろ』という命令を受けただけなので、詳細な指示を受けて動く『ゴリアス』に及ばなかったのである。

とはいえ、12体と5体、数の差は歴然としている。

2対1なら何とかいなせたが、3体に囲まれると『ゴリアス』の分が悪い。

そしてついに、『ゴリアス4』が倒されてしまった。

「くっ……! そろそろまずいか……」

フリッツが残る4体の『ゴリアス』に退却を命じようとしたその時。

「ん?」

『リヨン』が突然停止したのである。

動作途中で停止した『リヨン』も3体あり、ゆっくりと倒れていく。

それらが地面に倒れ込んだとき、大きな音を立てたが、その後離宮周辺は不自然なほど静かになった。

23体の『リヨン』全部が停止していたのである。

地上にいて、停止した『リヨン』を見たフリッツは、驚きながらも現状を把握しようと努めた。そして。

「いったい何が起きたんだ?」

その時、フリッツは、小さな影……『リヨン』に比較して、という意味である……が、『リヨン』から飛び降りるのを見た。

「あれは……いったい?」

「私のゴーレムだ、フリッツ殿」

「うおわっ!?」

いきなり背後から声を掛けられ、フリッツは文字通り飛び上がった。

「すまんすまん、驚かせてしまったようだな」

「マキナ殿……?」

以前、フリッツとグロリアたちが『もどき』相手に苦戦していた時に助けてくれたデウス・エクス・マキナがそこにいた。

* * *

「あ、あれはマキナ殿のゴーレム!」

『コンロン2』の窓から地上を見つめていたグロリアが叫んだ。

彼女が『アルシェル』と名乗る魔族の少女が操る『ギガントーアヴルム』、巨大ハサミムシに襲われた時に助けてくれたゴーレムであった。

「マキナのゴーレムだと?」

グロリアの言葉を聞いた面々は地上を注視した。が、マキナとそのゴーレムが何をやったのかまではわからない。

「皆さん、危機は去ったようです」

その時、操縦室の扉を開け、仁が顔を出した。

「ジン殿、『リヨン』が止まってしまったようだが、どういうことか貴殿にはわかるだろうか?」

すかさず、ブルウ公爵が質問を投げかけた。それはこの場にいる全員の疑問でもあったろう。

仁は少し考える素振りを見せてから返答した。

「おそらく、『隷属書き換え魔法』の一種、『 消去(イレーズ) 』ではないかと。ここからではそれしか言えません」

「そうか……」

ブルウ公爵は、エゲレア王国での『ゴーレム 園遊会(パーティー) 』の折、 統一党(ユニファイラー) が使った『隷属書き換え魔法』の恐ろしさをまだ覚えていた。

「エルラドライトを使っていないようですから、距離があっては効果が無いため、『リヨン』に接触して使ったのだと思われます」

「なるほどな」

仁の説明に納得する人々。そしてこれでようやく騒動も終わりかと、皆、胸を撫で下ろしたのであった。