軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23-38 瓦礫/救出

安堵した反面、マキナの持つ底知れない力に畏怖も覚えざるを得ない、というのが各国首脳たちの偽らざる心境だったろう。

仁は、地上が静かになったのでゆっくりと『コンロン2』の高度を下げていく。

乗客たちは、地上を見やすくなったので窓に釘付けである。

そんな中、フリッツはダメージを受けた『ゴリアス4』以外の『ゴリアス』4体を使い、瓦礫を片付け始めていた。

さすが、6メートルという体躯があるだけあって、その力はなかなかのものである。

「おお、凄い力だ」

「いっそ小気味いいですなあ」

離宮の外側は3分の1ほどが崩壊してしまっていた。が、数トンもあるような瓦礫を片付けていく『ゴリアス』を見て、爽快感を覚えた者もいた。

30分ほどで、なんとか離宮の外壁だけは崩れた瓦礫が片付けられ、出入り口が見えてきた。が、まだ小さい瓦礫が積み重なっており、出入りは無理そうだ。

そこに降下してくる『コンロン2』。

見ている者たちは再度仰天させられることになる。

ランド11から20まで、10体のゴーレムが集まってきたのだ。

「あ、あれは!?」

「あれがマキナの戦力なのか!」

「……敵でなくて良かったというべきか……」

各国代表はそれぞれの感想を 抱(いだ) き、

「やはり、あの時のゴーレムだな」

グロリアは、かつて救われたときのことを思い出していた。

そのゴーレムたちは、『ゴリアス』の手では無理な、つまり小さい瓦礫を片付け始める。

小さいといっても人間では動かせない大きさ・重さである。

それを楽々運び出してしまうランド隊。

およそ5分で離宮の出入り口が露わになった。

ランド隊はそこへ飛び込んでいく。

『ゴリアス』を一旦停止させたフリッツもそれに続いた。

「兄様!?」

『コンロン2』客室の窓からその様子を見ていたエルザは、叫び声を上げた。

「どうした、エルザ?」

操縦室から仁が顔を出し、エルザに尋ねる。

エルザは急いで説明をした。

「うーん……フリッツさんも無茶をするなあ……まだ離宮の中だって安全とは限らないのに」

所々崩れている箇所も見受けられ、これから先絶対に崩壊しないという保証もない。

「老君、ランド隊に、フリッツの安全にも気を配るよう指示してくれ」

仁はエルザを安心させるべく、客室に聞こえないような小声で老君に指示を出した。エルザもそれでようやく胸を撫で下ろしたのである。

* * *

ギョーム離宮の中は、外から見た以上に崩壊している箇所があった。

石造りの建物の場合、全体として纏まっているときには強度を保てるが、1箇所壊れると連鎖反応式に壊れる構造を取らざるを得ないことがある。

アーチ状の天井などがそうだ。

石材同士が重力で押さえ合い、がっちりと組み合わさるが、どこかが崩れると強度を保てなくなる。

ここギョーム離宮内にもそういう箇所が数箇所あったのだ。

「……くっ……ここも駄目か」

フリッツは、離宮内に残った者、特に王、王太子、そして王太子が保護した少女の安否を気遣っていた。

1階のほとんどは大広間である。一目で誰もいないことが見て取れたので、フリッツは2階を目指すことにした。

崩壊した箇所を避け、何とか2階への階段を見つけ出したフリッツは、慎重に登り始めた。

そんな彼の後方にはランド12と16がおり、緊急事態に備え、見守っている。

2階には、国王リシャールが演説をしたテラスがあったが、その周辺には誰もいなかった。

「……奥、か」

フリッツは更に奥へ。

「……ん?」

瓦礫の下から脚が覗いていた。

「人だ!」

駆け寄り、瓦礫をどかし始めるフリッツだが、人の力では動かせない大きさ、重さの物があって、行き詰まってしまった。

「……くそう……なんとかできないものか」

そこに現れたのはランド12と16。

「我々がやりましょう」

「フリッツ様は下がっていて下さい」

「おお、そなたたちは」

「我々は『デウス・エクス・マキナ』様に仕えるもの」

フリッツの問いに短く答えたランド2体は瓦礫をどかす作業に取りかかった。

「おお……!」

フリッツが持ち上げようとしてもびくともしなかった瓦礫が、まるで重さなど無いかのように軽々とどかされていく。

「……以前に見たレイという騎士といい、マキナという人物はどれだけの力を持っているのか……窺い知れんな」

フリッツは感心したり恐れを抱いたり。

そんなことを考えているうちに、瓦礫は全てどけられ、下にいた人物が明らかになった。

「……カーク……殿?」

セザール王太子の護衛の1人、カーク・アットであった。頭から血を流しており、右腕は潰されてしまっている。はっきり言って重傷だ。

「まだ息があるようです。急いで手当てしないと」

そう言ったランド16は、腰に付けていたパックからなにやら瓶を取り出し、カークの傷に振りかけた。たちまち血が止まる。

蓬莱島謹製の回復薬だ。その効果は中級の治癒魔法に匹敵する。

「とりあえず止血はこれでいいでしょう。私はこの方を連れ出します」

カークをそっと抱き上げたランド16に、フリッツは慌てて告げた。

「あ、ああ。俺の妹、エルザは優秀な治癒師だ。俺の名前を出して頼んでみてくれ」

「わかりました」

そしてランド16は去っていった。入れ替わりに、ランド14、17、18がやって来る。

「お手伝いします、フリッツ様」

名前を呼ばれたフリッツは驚きながらも頷いた。

「た、助かる。この奥にまだ部屋があるはずなんだ」

気を取り直して奥へ進むフリッツ。

邪魔な瓦礫は4体のランドゴーレムがたちまちのうちに片付けてしまった。

そして現れたのは重厚な扉。金属の枠で補強された木製で、セルロア王国の紋章である交差した剣とドラゴンが彫られていた。

非常時なので、フリッツはノックをしてから返事を聞かずに、扉に手をかけた。

鍵は掛かっておらず、少し軋みながら扉は開き、中には……。

「しっかりしろ!」

叫びながらフリッツは部屋に飛び込んだ。

天井が何ヵ所か崩れ落ちており、破片が当たったのか、年配の侍女が1人倒れていた。

呻き声を上げているので意識はあるようだ。ランド14が回復薬を与えたので、なんとか口をきける程度には回復した。

彼女は、ランド14が付き添って離宮から連れ出すことになった。

そして、部屋の奥にも、瓦礫に埋もれるようにして少女が1人。王太子が保護した、記憶のない少女だ。

「あの子は……おい! しっかりしろ!」

意識は無いようで、フリッツがいくら呼びかけても反応を示さなかった。

その少女は、左肩を大きく負傷していたが、血は流れ出していない。

それをいぶかることもなく、フリッツは少女の下へ向かった。瓦礫が邪魔だったが、それほど大きなものは無かったのが幸いし、フリッツは少女を担ぎ上げ、部屋から連れ出すことに成功した。

「フリッツ様、私の仲間が他の階を確認したようですが、もう誰もいないとのことでした」

ランド17がフリッツに告げる。が、フリッツは首を振った。

「いや。まだどこかに王と王太子がいるはずだ。隠し部屋かもしれない。それに王太子のもう1人の護衛、確か……スケープだかスケーブだったかが見つかっていない」

「隠し部屋があるとしたら地下でしょう。まずはここから出るべきです」

そう言っている間にも、天井からは細かな瓦礫が落ちはじめている。

「わかった。一旦外に出よう」

* * *

『コンロン2』は迎賓館前広場に着陸していた。

船に避難した者たちも、危険は去ったと見て再度上陸し、各国からの出席者たちはそれぞれの護衛や従者と無事を確認し合っていた。

列席者側の被害は皆無といっていい状態。

離宮に入ることを許されたのが少数だったことが逆に幸運だったようだ。

が、セルロア王国側はそうはいかなかった。

「……ひどい、な」

サクラとしての意味もあって、大勢駆り出されていた兵士たちにも逃げ遅れたものが多数おり、少なからぬ被害が出ていたのである。

正確な人数が把握できていないので何とも言えない部分はあるが、死者15名、重傷者21名、軽傷者11名といったところ。

今後の調査次第ではまだ増えるだろうと思われた。