軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23-10 地下の謎/あの国

クライン王国で『押し上げポンプ』を作り、ティアを救った翌日。

仁は蓬莱島に戻り、老君と話をしていた。

監視衛星『ウォッチャー』に続く計画についてである。

礼子はもちろん、エルザ、サキも同席していた。

『…… 御主人様(マイロード) は、地下にはまだまだ謎が隠されている、と仰るのですね』

「そうだ。特に旧レナード王国の地下。あんな 超巨大蟻(ギガアント) が出てくるというのはいささか異常と言えるだろう」

『確かにそのとおりですね。それで、具体的にはどうなさるおつもりですか?』

「……ジン兄、『モグラ』を使うの?」

エルザが仁の行動を予想した。

『モグラ』というのは、仁が作った地底探査用 魔導機(マギマシン) である。

現代地球でトンネル掘りなどに使われるシールドマシンに似ており、直径2メートル、長さ3メートルの円筒状。

『 掘削(ディグ) 』の魔導具と、ハイパーアダマンタイト製のチップを使った掘削の2通りを行える。

「うーん、ちょっと大袈裟……と言うか、大きすぎると思うんだ」

難しい顔でエルザの質問を否定する仁。

「ジン、それってどういう意味だい?」

今度の質問はサキからだ。

「つまり、調査するだけならもう少し小さい方が効率がいいと言うことさ」

「ああ、なるほど、掘る穴の大きさとか、そういう意味だね?」

「そう。人が後で入り込むのでなければ、もっと小さくてもいいだろうと思うんだ」

イナド鉱山という環境だったからこそ、『モグラ』もあの大きさにしたわけである。

ミニ 職人(スミス) かリトル 職人(スミス) に合った大きさでいきたいと語る仁であった。

「……それならコストもそれほど掛からない」

エルザも納得したので、早速その線で検討を開始することに。

「主な目的は、旧レナード王国の地下調査なんだよ」

「確かに、あの魔物は異常だよね」

サキも話に聞いているし、 超巨大蟻(ギガアント) の溶解液は素材の物性評価にも使っている。

「以前、イナド鉱山の地下を『モグラ』で調べたら、 巨大百足(ギガントピーダー) の養殖施設みたいなのがあったじゃないか」

「……確かに」

エルザが頷く。

「もしかしたら、旧レナード王国の地下にもあんなのがあるんじゃないかと思ってさ。あの国の北部はカイナ村とも接しているわけだし」

「ああ、確かにね。仁が心配するのもわかるよ」

サキは仁の心中を推し量り、同意してくれた。

「それともう一つ。やっぱり、この星の地下構造にも興味はあるんだ」

仁はチラとサキを見る。

「蓬莱島が、先代の時に比べて大きくなっていたのが火山活動らしいとは思うが、今は噴火していないし、完成した世界地図を見ても、活火山がない。この星は小さいだけあって、核の方までかなり冷えた星なんじゃないか、とかな」

「んん? どういう意味だい、ジン?」

サキは理解できなかったようだ。無理もない。サキはまだ現代日本でいえば小学校レベルくらいまでしか科学を学んでいないのだから。

(サキにももっと高レベルの 知識転写(トランスインフォ) を使えるような魔導具は作れないものかな?)

そんな事まで考えている仁である。

「えーとな、惑星というのは、表面は冷めていても中の方は熱いんだよ。だから時々火山なんかが噴火したり、温泉が湧いたりするんだ」

「ふむふむ」

「で、この星は小さい……といっても、俺がいた星に比べて、なんだが……、小さいから、中の方まで結構冷えているんじゃないか、と思ってさ」

地質学などは中学生レベルでしかない仁であるから、説明も辿々しいが、そもそも、異世界にあるこのアルスという惑星を地球と比較する意味があるのかどうかすらわからない。

「つまり、地下がどうなっているのか。 魔結晶(マギクリスタル) はどうしてできるのか。どんな資源があるのか。そう言うことも調べたいというわけさ」

この説明はサキの気に入ったようだった。

「なるほど! ジン、調べよう! さあ! さあ!」

勢い込むサキを押し止めたのはエルザである。

「サキ姉、落ち着いて。そのために必要な魔導具を考えようと言ってるのだから」

「そ、そうだね。すまない」

ということで、仁の主導で仕様を詰めていくことに。

「直径10センチ、長さ30センチ」

大きめの茶筒のようだ。

「マイクロ 魔力反応炉(マギリアクター) が動力源」

ミニ 職人(スミス) が作る超小型の 魔力反応炉(マギリアクター) 。普通の……いや、一流の 魔法工作士(マギクラフトマン) でも解析などできはしない。万が一、誰かの手に渡っても、応用することはできないだろう。

「推進力は 力場発生器(フォースジェネレーター) 」

最も効率の良い推進方式だ。

「 魔導監視眼(マジックアイ) も付けて、情報をこちらへ送らせる」

一番の目的が調査であるからこれも当然だ。

「万が一、誰かの手に渡って、悪用するために解析されないよう、転送装置と自壊装置、さらに最悪のことを考えて自爆装置内蔵」

転送装置の帰還先は『しんかい』の中。それすらできない時は自壊。さらには自爆も可能。機密を守るのが最重要だからだ。

こうして次々に決まっていく仕様。

「ミニ 職人(スミス) と同等のゴーレムを1体乗せ、不慮の事態にも対処させたい」

これにはサキから異論が出た。

「うーん、ジン、それはどうだろう? 今まで決まった装備でもどうしようもないような不慮の事態が起きたとしたら、ミニ 職人(スミス) でなんとかなるかな?」

仁も反論。

「故障した時の修理ができる。それに素早いし、 不可視化(インビジブル) も使えるから、捕まるとも思えないんだが」

「そう、か……ならいいかな?」

そのくらいのリスクは負うしかない、と仁は補足した。

そして最も重要な、『穴掘り』の方式になる。

物体の中を掘り進むというのは、進行方向にある物質を自分の後方に移動させる、これを繰り返せばいいのだが、行うとなると簡単ではない。

ドリルは、その側面に刻まれた螺旋状の溝で切り屑を上方に排出することで穴を穿っていく。

トンネルを掘る場合は、岩盤を砕いて出た岩屑を排出するためのコンベアなどが必要になる。

例え、 光束(レーザー) で蒸発させたとしても、その気体を排出しなければならない。

「うーん、どうするか」

悩みどころである。とはいえ悩んでいる一番の理由は、『隠蔽性』であるのだが。

どういうことかというと、仮に、地下に何かの施設……かつて『デキソコナイ』が作った『魔導頭脳』のようなものが有った場合に、気取られたくないからなのだ。

機械的に掘り進めば、振動や掘削音で気が付かれるだろう、と仁は考えた。

「やっぱり転送銃方式にしよう」

「……ジン兄、どうやるの?」

その命名ではピンと来なかったらしく、エルザが小首を傾げて質問してきた。

「うん、転送銃と同じ物を先端に付けて、進行方向の岩を後方へ転送してしまおうというのさ」

転送距離は『ミニモグラ』の長さ分。

「えーと、例えば、10センチ分の岩を後ろへ転送し、10センチ進んで、また10センチ分の岩を後ろへ……ということかい?」

サキがわかりやすい説明を出してくれた。

「ああ、そのとおり。転移させる距離が短いから、消費する 魔力素(マナ) も少なくて済むし」

「つまり、間欠的に進む、ということ?」

「そういうことさ。マイクロ 魔力反応炉(マギリアクター) で 魔力素(マナ) を作り溜めて、転送して、進んで、また 魔力素(マナ) を作り溜めて……」

「時間は掛かるかもしれないけど面白そうだね」

「ん。やってみたい」

「よーし、取りかかるぞ」

こうして『ミニモグラ』の製作が始まったのである。

『モグラ』というよりも『ミミズ』に近い、と仁は思ったのだが口には出さなかった。

* * *

「式典の準備の方はどうだ?」

「はっ、陛下。順調です」

セルロア王国王城では、国王リシャールが昼食を摂りながら、部下からの報告を聞いていた。

「そうか、ふふふ、他国の奴どもが驚く顔が早く見たいものだ」

セルロア王国ダリの街は、例えるならばベネチアのように水路が張り巡らされ、重要な交通手段となっている。

その水路にも新型の小型船が浮かんでいた。

「船、飛行船、ゴーレム。このセルロアが大陸一であることを改めて奴等に示すのだ」

セルロア王国国王リシャールはにやりと笑い、手にしたグラスのワインを一気に飲み干した。