軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22-08 後始末、そして

「さて、この後どうするかだが」

隊員たちが落ち着いたあと、ポウルが口を開いた。

今、仁たちがいる場所はいいが、500メートルも行くと、そこには地獄絵図が広がっている。

とはいえ、彼等も騎士、戦場は経験している。

「敵対していたとはいえ、彼等も国のため働いたわけだからな」

そのまま放っておけば、野獣の餌になってしまうので、遺品を出来るだけ回収し、遺体は一箇所に集め、荼毘に付すことにする。

セルロア王国第2辺境兵団の生存者は0。トリスト・クラロートも馬と共に腐食液を浴びて溶かされていた。後味の悪い、悲惨な結末であった。

日が傾いた頃、全ては終了。

「ゴーレムも全て壊れてしまったか……」

がっくりと肩を落とすポウル・レイド。

「隊長、破損が軽微なものなら何とか修復できるかもしれない」

と、フィリップ・ティーフォ。

さすがは 魔法工作士(マギクラフトマン) 互助会(ギルド) ブルーランド支部長である。

とはいえ、老君指導の下、使用不可にした 魔素変換器(エーテルコンバーター) までは無理だろうが。

また、一度はセルロア王国第2辺境兵団に奪われた 魔結晶(マギクリスタル) だけは無事回収することができた。

これだけでも数億トールの価値はある。来た甲斐があったというものだ。

そして最後に、遺跡の処置をどうするか、である。

「遺跡は埋めてしまうのが良いかと思うのだが」

「そうですね、その前に、中を一度だけ確認させて下さい」

仁が提案した。それに関して騎士隊に異論はない。

「ありがとうございます」

仁は礼子を伴ってソルドレイク遺跡に潜った。バリアも張って慎重に進む。

この直前に、姿を消したランド隊が先行して中に入り、異常がない事を確認している。そうでなければ礼子が仁を危険に曝すはずがない。

エルザはと言えば、大怪我をした人間もいなかったこともあり、不必要に顔を見せる必要もないだろうと、飛行船の中でずっと留守番である。

とはいえ、礼子の目と連動する『 魔導投影窓(マジックスクリーン) 』をのぞき込んでいるので退屈はしない。

「お父さま、このあたりでいいでしょうか」

「ああ、いいだろう」

仁の真の意図は、この遺跡の中にマーカーを残すことであった。入口を塞いでも、転移を使い、後日調査に来る事もできる。

ざっと見渡してみて、めぼしいものは見つからなかった。

「蟻が出てきた穴だけは今塞いでおきましょうか?」

礼子の提案を、仁は却下する。

「いや、止めておこう。どうせなら巣を全部潰すことを考えた方がいい」

「わかりました」

後日、 超巨大蟻(ギガアント) の巣は、ランド隊によって焼き払われるのである。

そして仁と礼子は外に戻った。5分足らずの時間である。

「どうも。一応参考になりました」

「もう何も無かったとは思うが、気が済んだなら塞いでしまうがよろしいか?」

「ええ、やって下さい」

仁が肯定すると、ポウル・レイドは部下に命令を下す。土属性魔法を使える者たちだ。

彼等が『 岩石崩壊(コラプス) 』を使い、出入り口を塞いだのである。

仁は、もう日が暮れかかってきたこともあり、エゲレア王国に向かうことを告げる。

「何か伝えることはありますか?」

「そうですね、特には。その代わり、もしできましたら、報告させたいので副隊長を連れて行っていただけませんでしょうか?」

「それくらいなら」

仁はその申し出を引き受けた。

こうして、エゲレア王国第3騎士隊副隊長のガーニイ・ウェリンは、エゲレア王国で最初に『コンロン2』に乗る栄誉に浴したのである。

* * *

2時間後、仁たちはエゲレア王国首都、アスントに到着した。

時差があるため、こちらはまだ午後5時、空に明るさが残っている時間だ。

「『崑崙君』ジン・ニドー卿、感謝します!」

仁の『コンロン2』が着陸する前から、外宮広場には宰相と魔法相、それに近衛騎士十数名が待ち構えており、仁たちを歓迎した。

この日はもう夜になるので、仁との詳しい話は翌日とし、簡単な挨拶で済ませる。

副隊長であるガーニイ・ウェリンは仁に礼を述べ、報告のために内宮へと向かった。

仁たちが泊まったのはやはり迎賓館。ここの気楽さが仁の好みである。

くつろいだ仁は、ふとした拍子に、礼子の左腕に染みのようなものがあるのに気付いた。

「礼子。ちょっと腕を見せてみろ」

その声にびくっとする礼子。

「い、いえ、何でもないですから」

「何でもないなら尚更見せてみろ」

「はい……」

仁にそうまで言われては礼子も従わざるを得ない。おずおずと左腕を差し出した。

「これは……」

数箇所、小さな引きつれができている。 海竜(シードラゴン) の翼膜でできた礼子の皮膚に、だ。

「女王蟻の体液が掛かったのか?」

「……はい」

地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸で織られた服は何ともないのに、 海竜(シードラゴン) の翼膜が冒された。

「相性もあるのかもな」

同じ地底に棲む魔物である 地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸と、海に棲む海竜の翼膜。

「手元の素材を使って、老君に相性表でも作ってもらうか」

そんな呟きを漏らしながら、仁は工学魔法で礼子の皮膚をきれいに治したのである。

* * *

「ふうん、そんなことがあったのかい」

『興味ありますか?』

老君とサキの会話。

「もちろんさ!」

蓬莱島には、折良く(?)サキが訪れており、仁からの通信も聞いていたのである。

「老君、サンプルはあるんだろう?」

『ええ、ありますよ。ご覧になりますか?』

「もちろんさ!」

当然の返答。

作業を進めるのは、老君の指示を受けた 職人(スミス) たちではあるが、サキもまたその場に同席し、その好奇心と知識欲を満たしていくのであった。

「ふむふむ、こうしてみると地底に棲む魔物由来の素材というのはなかなか優秀なんだねえ」

『そうですね。耐薬品性ということであれば、 地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸は最高ですね』

いろいろと試した結果、 地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸は、 超巨大蟻(ギガアント) の体液、 巨大百足(ギガントピーダー) の体液でも溶けないことがわかった。

一方、 海竜(シードラゴン) の翼膜は、 超巨大蟻(ギガアント) の体液、 巨大百足(ギガントピーダー) の体液どちらにも溶かされたのである。

「ふうん、興味深いね。どうしてこうなるんだろう?」

サキはこの事実に、非常に興味を持った。

「老君、ジンが使っている素材について、こういう性質をまとめてみたいな」

これには老君も賛成する。

『サキさん、それはいいですね。時間は掛かってもゆっくりやりましょう』

「くふ、楽しみだね」

こうして、サキも加わって、素材の物性表作成が開始されたのである。

『色々な標準化も進めておくといいかもしれませんね』

とはいえ、こちらはサキの専門外である。

「うーん、そっちはあまり助言できそうもないな」

『いえ、日常的に行っていること、使っているもの、そういうところから始めればいいのです』

老君の説明に、サキも納得する。

「ふうん、なるほどね。お茶のカップの大きさ、なんてものも規格化することで整理が楽になるし、見た目も綺麗になるものだからね」

3458年の蓬莱島は活気に溢れている。