軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21-04 新政策

海底探検を楽しんだ仁とエルザは蓬莱島へと戻った。

「大成功だな。海底資源も見つけたし」

「お父さま、開発を進めるのでしたら、海上基地が必要かと」

珍しく礼子からの提案があった。

「採掘した資源を 転移門(ワープゲート) で蓬莱島へ送れば効率的です」

「なるほどな。検討してみよう」

こうして、更なる資源確保に乗り出す蓬莱島であった。

* * *

翌20日、仁とエルザは一旦ロイザートの館へ戻った。

事前に連絡をしておいたので、ラインハルトも来ている。

「やあ、ジン。また何か面白いものを作ったんだって?」

「ああ、潜水艦……いや、潜水艇をな」

「潜水艇か! 今度乗せてくれ!」

「……ライ兄、それより何か話があったんじゃ?」

興奮し始めたラインハルトをエルザが窘めた。

「そ、そうだった。陛下に呼ばれているんだ。できればジンにも来てほしいそうだ」

「陛下が? 何だろう」

「船の話とか諸々、らしい」

そこで早速、仁、礼子、エルザ、エドガー、ラインハルトらは 宮城(きゅうじょう) へ向かうことにした。もちろん飛行船でだ。

宮城(きゅうじょう) では、仁の飛行船も馴染みになっており、半ば専用の着陸床もできていたほどだ。

「エドガー、悪いけどここでお留守番してて」

「はい、わかりました」

飛行船の管理をエドガーに任せ、仁たちはまず宰相の執務室へ向かった。

「おお、ジン・ニドー卿、ラインハルト・ランドル卿、エルザ媛、レーコ媛」

宰相は書類を確認する手を止めて、仁一行を迎えた。そしてすぐに女皇帝陛下に知らせるため、秘書を遣わした。

「ジン君、ようこそ」

5分も経たないうちに女皇帝が自らやってきた。それを見た宰相は若干渋い顔。

「まずはベルンシュタインの成功、おめでとう。そして改めてお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」

進水式に行けなかったのは残念、とも付け加える。

「一昨日、鳩で連絡が入ったのよ。18日にエゲレア王国の港、『ナールネッカ』に停泊した際、アスントからの勅使による歓迎を受けたそうよ。おそらく何泊かするでしょうね」

ナールネッカはエゲレア王国首都アスントの南にある湾を望む町で、大きな港があるという。

「そうですか、もうエゲレアですか……」

ラインハルトがしみじみとした声音で言った。

「報告によれば、セルロア王国南端のクゥプで、あの国の大型船とすれ違ったそうよ。その船は今、我が国のジリショウ町に停泊しているらしいわ」

これは仁も聞いていた。その船、『ブリジット』を作ったのは事実上、仁の派遣した 第5列(クインタ) 、アルタフとギェナーなのだから。

「それでね、船の消息についてはそのくらいね。次は要望よ」

「要望、ですか」

「ええ。なんといっても、初めて尽くしの船ですものね。後からいろいろ要望が出てくるのは仕方ないわ」

そして女皇帝はまとめ直したリストを仁とラインハルトに示した。

「えーと……ははあ、なるほど」

1.急制動をかけられるようにしてほしい。

2.桟橋に付ける際の微速航行について一考を願う。

3.陸上との意思疎通手段として、旗や 幟(のぼり) を提案する。

4.港や海岸線には信号灯を設置してほしい。

であった。

1の制動については小型の 噴射式推進器(ジェットスラスター) を使っているので、数を増やすか出力を上げるか。

仁は数を増やした方が使い勝手がいい、と思った。

2は、ラインハルトがアイデアを出した。

「人魚型のゴーレムを港に配備して、そういった管理をやらせるというのはどうでしょう?」

ひいては船の曳航などもしてもらおうという。いわばタグボートの役目だ。

「いいかもな」

仁も賛成である。

「救命要員として船に1体乗せておくというのも、いいかも」

エルザがアイデアを口にした。

「ああ、そうだな、エルザの言うとおりだ」

3は、仁にも覚えがあった。旗の色や模様で知らせるというもの。

「もし行うなら、各国で共通にした方がいいと思います」

「ああ、ジン君の言う通りね。……特別なものは除いて、国同士で検討することにしましょう」

4は船ではなく、行政の問題である。

「もっともな話だわ。手を打ちましょう」

こうして、ベルンシュタイン発の要望は、概ね受け入れられることとなった。

「さて、次の話題はね、クライン王国の話」

仁は聞き耳を立てた。

「クライン王国では、年明け早々、レナード王国への調査隊を派遣するそうよ」

食糧の調達に関係するらしい。穀物に限らず、野生の動物で食用になるものを狩ることも考えているようだ。

「同時に、エゲレア王国も行うらしいの。上手くいけば、セルロア王国を経由せずとも行き来できる街道を開拓できるかも」

今現在、クライン王国とエゲレア王国の間にはセルロア王国の領土が挟まっており、陸路で行き来するのは簡単ではない。

熱気球なら可能だが、輸送力に欠ける。

ということで、新たな陸路を開拓したいと言うことなのだろう。

仁としては、旧レナード王国を再興し、できればアーネストとリースヒェンに統治させたらいいのでは、などと内心思っていたりする。

「そして最後ね。我が国では、ジン・ニドー卿の進言を入れ、異民族との国交を開くべく、年明けに先遣隊を派遣します」

「えっ!」

仁もエルザもラインハルトも、驚きの声を上げた。

「とは言っても、最初は小規模なものよ。大使、副大使、護衛併せて10人くらいを考えているわ」

「そうですか……」

仁は嬉しかった。女皇帝が、真剣に異民族……ミツホ族との国交を開くなら、きっと互いに得るものがあるだろう。

「その大使に、ラインハルト・ランドル卿、どうかしら?」

「えっ?」

またしても驚く仁たち。

「ラインハルトなら外交の実績もあるし、優秀な 魔法技術者(マギエンジニア) ですからね。適任かと思うのだけれど」

「……」

ラインハルトとしては即答できるものではない。

「駄目なら、誰か別の者を大使に選び、副大使にエルザ・ランドル卿を、という案もあるんだけれど」

「!!」

「異民族を訪問するんですから、無理にとは言えないわ。よく考えてみてちょうだい」

「わかりました」

「わかり……ました」

ラインハルトとエルザは少し俯きながら返事をしたのである。

「あとはね、もう1つの案、なのだけれど」

女皇帝は話を進めた。

「ショウロ皇国大使として、エリアス王国に行ってもらいたいとも思っているのよ」

「エリアス王国、ですか」

「そう。3人ともエリアス王国は行ったことあるわね。……今、『ベルンシュタイン』が向かっているわけだけど、23日か24日にはポトロックに到着する予定なのよ」

それは仁たちにもおおよその見当は付いていた。

「それに関連して、今後の航路を相談したい、ということね」

そこで一息置いた女皇帝は、ラインハルトとエルザの顔を交互に見た。交易路の設定という意味ではこちらも重要である。

「どちらかといえば、こちらを受けてもらえた方がありがたいわね。その場合は異民族へは別の者を派遣するから。どうかしら?」

「そうですね……」

仁はショウロ皇国国民ではない(名誉国民ではあるが)ので、正式な使者として同行することはない。ゆえに話は振られていないが、どちらに付いていっても面白そうではある、と思っていた。

が、今現在、より興味があるのはポトロックである。手掛けた船『ベルンシュタイン』と、ロドリゴとマルシアの父娘についても気になっていた。

ラインハルトも同じ気持ちだったと見え、

「それでしたらポトロックへ行きたいですね」

と答えたのである。