軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20-04 反省と自戒

「おお、これが超音速か……」

ペガサス1に乗り込んだ仁は、礼子と共に上空を飛び回っていた。

今のところ、最高速度は時速3600キロ、つまりマッハ3くらい。これは老君が 魔力探知機(マギレーダー) で計測した結果から算出したものである。

風避けの結界が作り出した真空中なら、どこまでも速度を上げられるはずだが、やはり限度はあった。

それはすなわち、結界の生成速度、である。

時速3600キロ以上では、結界の生成速度が追従できずに、ペガサス1の機首が結界の外に出てしまうのだ。

「それでも破格のスピードだけどな」

この星、アルスを2時間で1周できるというのは途轍もない速度であることは間違いない。

ひとしきり超音速の世界を楽しんだ仁は、着陸後、他の航空戦力を改造することにした。

一度仁が作り上げ、老君の記憶用 制御核(コントロールコア) に登録しておけば、 職人(スミス) たちが製作してくれる。

こうして、全ての航空機に 力場発生器(フォースジェネレーター) が備え付けられ、離陸のための滑走が必要無くなるのであった。

「もちろん、船にも使えるし、ゴーレムにも」

ハイドロ艇とマーメイドゴーレムを優先で改造。水中用の水避け結界により、マーメイドの最高速度は時速500キロにも達した。

ここで、仁は大きな反省と自戒をすることになる。

「老君、3隻の空母はどうなっている?」

統一党(ユニファイラー) との抗争時に建造を開始した2万トン級の航空母艦である。その一番艦『穂高』は既に竣工していた。

『はい、 御主人様(マイロード) 。二番艦『妙高』と三番艦『浅間』も竣工を終え、妙高はタツミ湾に、浅間はまだドック内で、進水式を待っています』

「あれ? そうだったか……」

タツミ湾へは、礼子のテストのために先程訪れていたのだが、気づかなかったのだ。テストに夢中になっていたためだろう。

「……それはいいんだが、老君、相談がある」

『はい、何でしょうか』

「空母の必要性だ」

航空戦力を一々蓬莱島から発進させるのは効率が悪いということで空母を建造したのだが、一度も使わないうちに 統一党(ユニファイラー) は解体。

転送機の完成により、帰還はともかく、出撃は瞬時に、しかも任意の場所へできるようになってしまっていたのである。

「……思いつきでやらかした俺が悪いんだけどな」

『いえ、 御主人様(マイロード) 。あの時点では仕方ない面もあります。それに新しいものを作るのがお好きな 御主人様(マイロード) ですし……』

老君が仁をフォローする。微妙にずれたことを言われている気がしないでもない仁だったが、気を取り直すことにした。

「まあ、もう言っても仕方ないけどな。……それでだな、相談というのは、3隻を改造した方がいいんじゃないかということなんだ」

『それはどんな改造ですか?』

「俺が考えているのは言わば『万能艦』なんだが」

兵器としてみると、汎用性の高いものは確かに使い勝手はいいが、ここぞという決め手に欠けるという短所がある。つまり、万能艦というより汎用艦に落ちてしまうのだ。

が、仁が作るものであるから、少なくともその懸念は限りなく小さいだろうと思われた。

老君はメリットデメリットを考え合わせ、検討してから返答する。

『お考え自体は悪くないと思います。どのような内容をお考えですか?』

「そこなんだよな……3隻をうまく使って 三胴船(トリマラン) 型にしてみたら……とも思うんだが」

『大きすぎませんか?』

3隻合わせて6万トン、繋いだ甲板などを考えると7万トンくらいになるかもしれない。そうなるとかつての超弩級戦艦『大和』を凌ぐ。

『私としましては、 御主人様(マイロード) の専用機、ペガサス1を発着でき、他に1〜2機が着艦できる広さの飛行甲板を持てる大きさで十分かと思われるのですが』

「うん、わかる。だから悩んでいるんだ……」

「お父さま、いっそ無敵艦隊をお作りになっては?」

今まで黙って聞いていた礼子が口を挟んできた。

「……お父さまの記憶には、確か……駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、巡洋戦艦、戦艦、航空母艦、工作艦、補給艦、潜水艦、水雷艇……などがあるんでしたっけ?」

「いくらなんでもそれは駄目だろう」

即刻、仁はダメ出しをした。

礼子の気持ちもわかるし、作ってみたい気はするのだが、使いどころがあるとは思えないのである。第二次大戦でさえ、戦艦よりも空母、そして航空機の時代であった。

戦闘を考えるなら航空戦力を充実させる方が有利なのである。戦闘する気が無いなら、それこそ艦隊は無用の長物だ。

『礼子さん、 御主人様(マイロード) の性格を 鑑(かんが) みますに、使い勝手の良い船を1隻お作りになれば、きっとそれを末永くお使いになられると思いますよ』

「……たしかにそうですね」

礼子の例がある。仁は、気に入ったものはとことん大事にする性格なのだ。

『そうしてみますと、改造するしないは置いておき、必要なスペックを出してみたらいいのではないかと思いますが』

老君の提案に仁は頷いた。

『まずは、用途や、使われる場面などを想像されるといいのではないでしょうか』

「ああ、なるほど。……例えば、ポトロックへ行ったり、とか?」

『それを踏まえますと、あまり大きくはできませんが』

肝心な点である。航空機でいうと、飛行船に相当するもの、ということになろうか。人前に出せないのではあまり使うシーンがない。

「ポトロックや、エカルトの所に行ってみたいとは思うんだ。それから、魔族の領海とか。あと思いつく用途としては、飢饉を救うために魚を捕ったりそれを運んだり、かな」

『北の海へ行くにはそれなりに大型の船が必要になりますね。魚を運搬するのにも、大きい方が有利ではあります』

「だな……」

仁は考え込んだ。中途半端はしたくない。かといって、使えないようなものを作るのは避けたい。

「やはり、大きさを変えて何隻か、となるのかな……」

10メートル以下では居住性は皆無に等しい。20メートルでも中途半端だ。

「……とすると50メートルくらいか?」

セルロア王国南部の大商人、エカルト・テクレスが建造している船は40メートル級であった。50メートルなら何とか常識内だろうか。

『そうですね……いずれにせよ、普通の港には入港できないでしょうから、その際には小型船を使う必要がありますね』

「ハイドロクラスだな」

『動力に 力場発生器(フォースジェネレーター) をお使いになるのでしたら、バランスを考える必要は無いですから、双胴船や三胴船にする必要もないでしょう』

最低2隻、となる。これならまあ、常識の範囲かと、仁は考えを纏めていった。

「お父さま、そんな大きな船、どこで作った、と思われませんか?」

「あ……」

蓬莱島という拠点については秘密である。デウス・エクス・マキナが所有するということにすればいけるだろうが、仁所有と言い張るのは厳しいものがあるだろう。

「あー……問題だらけだな」

飛行機と違って、人目につく機会が多いものだけに、誤魔化しが利かないおそれがある。

『私の意見を述べてよろしいでしょうか?』

悩む仁を見かねた老君は案を出すことにした。

『まず、竣工した3隻は、航空母艦から戦艦に改装し、蓬莱島の守備に使います』

「それは悪くないな」

『戦艦だけでは運用しづらいので、巡洋艦を数隻建造します。大きさとしては100メートル、2000トン級』

現代地球ではその大きさは駆逐艦になるところだが、老君は構わず続ける。

『駆逐艦……いえ、駆逐艇として、ハイドロシリーズの一回り上のものを多数』

老君こそ、何と戦うつもりだと仁は思ったが、考えてみると空の戦力に比べ、洋上の戦力は確かに不足している。

「そっちは……任せる。だが、俺の希望は?」

『はい、それらをご覧になっていただけたら、 御主人様(マイロード) のお考えももう少し纏まるのではと思いまして』

確かに、実物を前にしたほうがイメージを固めやすいかもしれない。仁はそれも許可した。

「なら、それぞれの一番艦にすぐ着手してくれ」

『わかりました。命名はどうしますか』

「うーん、空母改め戦艦には山の名前を付けたから、巡洋艦には川、駆逐艇には魚、かなあ」

『それでは、巡洋艦一番艦には 梓(あずさ) 、駆逐艇一番艇には鯉、でよろしいでしょうか』

「ちょっと待て。駆逐艇の魚はやめよう。イメージと違いすぎる」

『梓』は穂高岳の麓、上高地を流れる川であるからいいとして、『鯉』やら『鯛』やら『 鮪(まぐろ) 』は船に相応しく無さそうだ、と仁は思ったのである。

「駆逐艇はハイドロシリーズと同じように、シリーズ名にナンバリングで行こう。で、シリーズ名は……『ストリーム』でどうだろう?」

ハイドロシリーズ同様、なかなかいいネーミングであった。

『わかりました。駆逐艇はストリーム1とします』

こうして、蓬莱島を守る艦隊が本格的に発足することとなった。

その一方で、仁は専用の艦艇をどうするか、悩み続けていたのである。

(エルザがいたら相談できるんだがな)

いつもいるエルザがいない、というのは何となく物寂しいものだ、と仁は感じていた。

それを払拭するかのように、船のことに没頭していく仁であった。