軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18-30 お成り

蓬莱島に跳んだ仁は、さっそくゴーレムメイドを作製した。

仕様は5色ゴーレムメイドと同一なので、すぐに完成する。服も同様だ。

但し、その知識に、護身術、工学魔法、治癒魔法を付け加えたということで、老君には任せられなかったのである。

これらを追加したのはもちろんロイザートという環境で働いてもらうためである。

護身術は外敵・泥棒・侵入者などを防ぐため。工学魔法は館の修理や互いの整備のため。治癒魔法は万が一のため。

触覚も持ち、力加減も上手い。攻撃魔法は他の5色ゴーレムメイドと同じく、中級程度は使いこなす。

「よし、それぞれアメズ102、トパズ102、ペリド102、ルビー102、アクア102だ」

「はい、ご主人様」

全員が揃って返事をし、頭を下げる。

続いて仁は執事ゴーレム、バトラーを製作。バトラーDと名付けた。

こちらも触覚追加や新知識などのグレードアップ済み。

これで、留守の間の館を任せる事ができるメンバーが揃った。 職人(スミス) ゴーレムを呼び戻すことができるというものである。

『 御主人様(マイロード) 、お話があります』

仁は今回、普通のペースで製作したので、まだ時間はたっぷり余っている。

「うん? どうした、老君?」

『はい。 御主人様(マイロード) がロイザートで修理をなさった巨大ゴーレムについてです』

「あれがどうかしたのか?」

『はい。幾つか懸念材料があるので、ご報告をと』

「懸念材料?」

修理当時は周りに他の者がいたので、仁としても突っ込んだ解析が出来なかったのだ。それで、一旦終了した後、ロイザート担当の 第5列(クインタ) 、カペラ7が密かに調査していたのである。

『まず、なぜ 自由魔力素(エーテル) 濃度を下げた場所に保管されていたか、を考えました』

「ああ、それは盗難を防ぐためじゃないのか?」

『よくお考え下さい。あんな巨大なものをどうやって盗み出すというのですか』

言われてみればそうだ。当時は扉を動かすために外部から 魔力素(マナ) を供給していたから短絡的にそう考えてしまったが、盗まれる心配をする方がおかしい。

「と、なると別の理由があるわけだな」

『はい。動かさないもしくは動き出さないようにするためと考えるのが自然です』

動かさない、というだけであんなに 自由魔力素(エーテル) 濃度を下げる必要はないだろう。となると動き出さないようにするためということになるが……。

「まさか、あれが勝手に動き出すというのか?」

『その懸念があります。操縦装置無しに動き出したらどうなるかわかりません』

あのように大きなゴーレムを操縦する際、歩く、走る、殴る、などの基本的な動作は元々持たせているはずだ。それらを、命令を組み合わせて動作させていく方式を採るのではないか、と仁は推測した。

仁が作った『タイタン』はそうやって動かしているからだ。

「だとすると、もし動き出したとして、止める方法はあるのか?」

念のため仁は万が一の事を考えてみることにした。

『一番簡単なのは 自由魔力素(エーテル) を無くすことですね』

巨大ゴーレムは 魔素変換器(エーテルコンバーター) 仕様であったから、エーテルジャマーや 魔法無効器(マジックキャンセラー) が効果を発揮するだろうと思われる。

「そうだな。あとは操縦装置と同じ波長の魔力で指示を出すことか」

仁なら、時間を掛ければ操縦装置を作る事もできたのだが、面倒事をおそれ、それはやらなかったのである。

『魔力波長を特定するのに時間が掛かりそうですね』

「ああ、そうだな。だが、一番望ましい方法だ……」

『今後、他の使い途もあると思われますので、開発してみたらいいのではないでしょうか』

「 魔力波形分析機(マギスペクトラムアナライザー) か……」

700672号のところにそういう機能を持つ魔導具があったことを仁は思い出した。あれにより、仁の精神波が 自由魔力素(エーテル) を操るに十分な周波数を持っていることを判断してもらったのだ。

「うーん……」

唸りながら仁は考え込んだ。そうして費やすこと20分。ついにアイデアがひねり出された。

「そう、か。『数値化』しようとするからいけないんだ。まずは『同じ周波数』を見つければいいんだ!」

数値化するには、決まった一定時間(例えば1秒)での波の数を数える必要があるが、魔力の場合、今のところ非常に難しい。

1秒なら1秒を定義する手段が乏しいからである。電子回路では基本となる信号をクロックと言うが、そこから作り出す必要があった。

だが仁は別の方向からのアプローチを思いついたのである。

「低い周波数から高い周波数まで上げていって、どこで魔力共振を起こすかを見れば……」

同じ周波数の魔力を発生させられれば、当面の問題は片がつくと思われるから、まずはこの方向でいいと思えた。

だが、仁がさっそく試作に手を付けようとした時、老君からの声が掛かった。

『 御主人様(マイロード) 、そろそろお戻りになった方がよろしいかと』

「え? もうそんな時間か」

女皇帝が来るまであと20分ほど。一応、名目は館の検分なので、仁が説明役となるのは必定。着替えるなどする時間が必要だった。

「あと10分もあれば作れるのにな……」

使おうと思った全属性の 魔結晶(マギクリスタル) をポケットにしまった仁は、後ろ髪を引かれる思いでロイザートへと戻ったのである。因みに、ゴーレムメイド達は既に送っておいた。

「ジン兄、さっき、先触れが来た」

戻って来た仁にエルザが告げる。予定通り、午前10時に女皇帝陛下は来訪されるとのことだ。

「ハンナも着替えておいてもらおう」

ちょうど、クライン王国のリースヒェン王女からもらったドレスを持ってきている。

エルザは問題無し。そして仁は 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) の服に身を包んだのである。

ポケットに入れてあった 魔結晶(マギクリスタル) は念のため持っておくことにした。暇があったら加工しようというのである。

「ショウロ皇国皇帝陛下のおなーりー」

向こう三軒両隣の家々が何ごとかと注目する中、女皇帝陛下の御光臨である。

「ジン・ニドー卿、多忙な中、大儀である」

今回も、随従員は魔法技術相のデガウズと近衛女性騎士、そして秘書官であった。

「ようこそおいでくださいました、陛下」

仁は急遽エルザから教わった、ショウロ皇国式の最敬礼を行った。右掌を左肘外側に、左掌を右肘内側に付けた腕組みのような姿勢で腰を60度曲げるのである。

隣に控えるエルザは片膝を付き深く頭を下げる女性としての最敬礼である。

このあたりは、マギルーツ村とは異なり礼儀を尽くす必要があるので、儀礼について女皇帝は何も言わなかった。

「さっそく館を見せてもらいましょう」

「はい、こちらへどうぞ」

仁とエルザが先導して玄関ホールへ。

「おおっ!?」

「まあ」

そこには5色ゴーレムメイドとバトラーDが一行を出迎えていたのである。

「ジン君、これは!?」

館内に入った途端、女皇帝の口調がフランクなものになった。

「この館を任せている侍女と執事です。右からアメズ、トパズ、ペリド、ルビー、アクア。そして執事はバトラーと言います」

仁の声に6体は一斉に最敬礼を行った。

「素晴らしいわ。さすがは 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) ね」

「ううむ……」

女皇帝は素直に感心し、デガウズはその出来映えに驚嘆、いや、いささか脅威を覚えていた。

「内装の設えも品が良いわね」

「ありがとうございます。それはエルザの仕事です」

仁の言葉に女皇帝はエルザを見つめ、微笑みかける。

「素敵ね、パートナーとしてよくやっているわね」

女皇帝に褒められたエルザは少し頬を染めた。

「そして、身の回りの世話をしてもらっているバロウとベーレ。マギルーツ村の出身です」

仁の紹介に、緊張したバロウとベーレが最敬礼を行った。

「まあ、そうなの? この前紹介してくれればよかったのに」

「あの時は休暇を与えていましたので……」

「ふうん、ジン君は使用人のことも大事にしているのね」

自国民を大事にしてもらっていると知り、女皇帝は嬉しそうだった。

「最後に、もう1人の妹分、ハンナを紹介させて下さい」

「ハンナ、です」

ドレスを着たハンナがカーテシーでお辞儀をした。未成年は最敬礼をしなくてもいいのである。

「まあ、可愛らしいお嬢ちゃん」

女皇帝の顔が一層綻んだ。

「いらっしゃい」

しゃがんだ女皇帝はハンナを手招く。それに応え、とことことハンナは女皇帝の下へ……。

「クライン王国風のドレスね。よく似合っているわ」

「ありがとうございます」

お辞儀をするハンナ。

「本当に可愛い子ね。ジン君の妹さん?」

「はい、血は繋がっていませんが、大事な妹です」

「そう、ハンナちゃん、よろしくね」

「きょうしゅくです、へいか」

女皇帝はそんなハンナの手を取り、そっと頭を撫でるのであった。