軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16-23 森羅の氏族、解放

翌朝。

カプリコーン1は、『福音』の氏族に別れを告げ、『森羅』氏族解放に出発した。

仁(の 身代わり人形(ダブル) )、礼子、アン、ランド1、イスタリス、シオン、ネトロス、ルカスといった元からのメンバーに加え、ナース1、2、それに『福音』の氏族からはアレクタスが、『 傀儡(くぐつ) 』の氏族からはベリアルスが加わっていた。定員オーバー気味である。

往路と同じく、丸1日掛けて『森羅』氏族の居住地に接近する。

カプリコーン1に驚いたベリアルスの話などもあるのだが、ここでは述べない。

その夜は居住地から2キロほど離れた場所で野営した。

そして、明けて21日となる。

* * *

『『森羅』の氏族もあれで解放されているようですね』

転送機で送り込んだ 陸軍(アーミー) の一部、ランド81〜83が調べてきた結果である。

『森羅』の居住地は『声』からの指示が来ないことで平穏であり、本音を漏らす者も多かった。

老君は密かにその結果を礼子とアン、そして仁(の 身代わり人形(ダブル) )に知らせていたのである。

であるからして、

「まずは私が様子を見てまいります」

とネトロスが言い出した時も、仁は心配をしていなかった。

「大丈夫かしら? ……気を付けてよね、ネトロス」

イスタリスはそういったことを知らされていなかったので、心配そうな顔をしていたのは少し気の毒だったが。

ということで、今回は、ネトロスの偵察は何事も起こらず成功した。

居住地の外れを1人歩いていた者を捕まえ、物陰で尋問。『 操縦針(アグッハ) 』で操られていたことを確認。

そして 一昨昨日(さきおととい) あたりから、『声』が聞こえなくなっていることを聞き出した。

同じ事を3人に対して行い、かなりの確信を持って、『森羅』氏族も解放されたと判断したのである。

「そう、よかったわ!」

無事カプリコーン1に戻って来たネトロスの報告を聞いたイスタリスとシオンは安堵の溜め息をついた。

「じゃ、じゃあ、あたしも行ってみようかな……」

おっかなびっくりといった挙動をしながらシオンが言い出した。

仁たちは大丈夫なことを知っているので頷いただけ。

一方でイスタリスは心配そうな顔。

「気を付けてね……あっ、私も一緒に行った方がいいのかしら……」

「姉さまは残っていた方がいいわ。あたしに何かあったらもう氏族のために何かできるのは姉さましかいないんだから」

「シオン……」

感動的な姉妹愛のシーンなのだろうが、裏事情を知ってしまった側から見ているとじれったい。

『もうみんなで行きましょう』と言いたいのだが、さすがにそれは出来ず。

「うむ、こういう時は私の出番だな」

アレクタスが立候補した。

確かに、同じ魔族であるし、『福音』の氏族であるから、万が一にもいきなり攻撃してくることはないだろうと思われる。

「なら、私も行こう」

同じく、ベリアルスも立ち上がった。

それで2回目は2人に任せる事にする。

カプリコーン1を降りて、2人はゆっくりと『森羅』氏族の居住地へと歩いて行った。

そして30分。

アレクタスが小走りに戻って来て言った。

「大丈夫だ。君らのことを話したら、『森羅』のバルディウスは涙を流して喜んでいたぞ」

「ほ、ほんとですか!?」

「お祖父様……」

「ジン様、貴殿のこともあらためて話してきました。彼等は喜んで……いえ、謹んで貴殿をお迎えするそうです」

こうして、イスタリスとシオンはようやく自分の氏族に戻ることができたのである。

「ナース1、2。今回は一緒に行くぞ」

「はい、わかりました」

『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』ということを強調するため、礼子とアンだけでなくナース1、2も一緒に行くことになった。

カプリコーン1の警備はランド1に任せる。

「おお、イスタリス!」

「シオン!」

姉妹を出迎えたのは壮年の男女だった。

「お父さま!」

「母さま!」

聞くところによると、2人の両親で、父はラデオゥス、母はロロナというそうだ。

「ごめんなさいね、あなたたちを守るためとはいえ、追い出すような真似をしてしまって……」

「ううん、いいの」

親子の対面。仁はちょっとだけ羨ましそうにその様子を見ていた。そんな仁にも声がかけられる。

「貴殿が 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 、ジン殿ですね?」

先行したベリアルスと共に仁を出迎えたのは若い魔族。

「私はクライドス。イスタリスとシオンの兄です」

* * *

仁たちは『森羅』氏族族長の家で歓待されていた。

「ジン殿、娘たちをお救いいただき、感謝の念に堪えません」

2人の父親、ラデオゥスが頭を下げた。母親、ロロナも一緒になってお辞儀をしている。

「……ジン殿が比類無き 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) であること、今こそ氏族全員が認識しましたぞ」

部屋にやってきたバルディウスが言った。

たった今、ナース1により『 操縦針(アグッハ) 』を取り出したところである。

人数が多いので半日以上掛かると思われるが、これで呪縛から解放されると知った氏族の顔は皆明るい。

「これからの事を話し合いたいと思います」

と仁が言えばバルディウスも同意する。

「俺は人間を代表しているわけではないですが、今のように魔族内が統一されていないと、とても恒久的な援助はできませんね」

「それはもっともだと思います。少なくとも『森羅』の氏族は、ジン殿に敵対する気は毛頭ありません」

バルディウスが頭を下げた。

「穏健派と言われる他の氏族はどうでしょう? 少なくとも、穏健派が一つにまとまっていないと先へ進めないと思うのですが」

「『針』……『 操縦針(アグッハ) 』で操られていなければ、まとめることはできると思います。特に『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』がいらしてくれたからには」

魔法工学師(マギクラフト・マイスター) という称号は、魔族の間では相当のステータスになるようだ。

「まずは『深遠』の氏族、『久遠』の氏族。それに『宵闇』の氏族でしょうな」

穏健派の氏族を3つ上げるバルディウス。

「彼等が納得すれば、穏健派の9割はジン殿の下に付くでしょう」

「いや、俺は別に……」

支配とか統治する気はないし、ずっとこちらにいるつもりもない。

本音としてはカイナ村が平和で、自分は蓬莱島で好きなモノ作りをのんびりやってられたらいいなあ、と思っているのだから。

「まあまあ、別に指導者になってくれというのではないのですよ。なんというか、その、『旗印』になってもらえれば、と……」

それでも仁は難色を示した。御輿に担ぎ上げられるというのも好まない。

何より、他種族(生物学的には同じなのだが)の内政に干渉するつもりはない。

「それはまた後ほど話し合いましょう」

とりあえず先送りすることにした。逃げたと言うより、どうすべきかじっくり考えたかったのである。

「とにかく、その3氏族が『 操縦針(アグッハ) 』で操られているのかどうか。そしてそうであればどうやって解放するか。まずはそれからです」

老君の計画では、仁(の 身代わり人形(ダブル) )は、穏健派に対しての諸々を担当することになっている。

そして、別働隊が『 負の人形(ネガドール) 001』への作戦を展開することを考えていたのである。