軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02-13 テンプレな展開

結局その日は『湯沸かし器』を作り始めるには時間が足りず、昼食を済ませた仁とビーナは、昨日と同様、露店を出しに行った。

「なんだか昨日より人が増えてるような気がする」

そこには昨日にもまさる人だかりが出来ていた。早速仕度に取りかかる2人。

「おう、待ちかねたぜ」

「早く作ってよ」

「はい、お待ち下さいねー」

ポップコーン作りに取りかかるビーナ、魔導具を並べる仁。そこへ礼子が合流した。礼子の姿を見た仁は、

「お、礼子。もう済んだのか?」

「はい。大麦、小麦、コショウの買い付けは終わりました」

小声で言葉を交わしているので、ざわついているお客達には聞こえていない。

「よし、それじゃあここで手伝っていってくれ」

「はい」

それで礼子も店番に加わった。

「あら、可愛い子ね。あなたの妹さん?」

お客の1人がそう言った。仁と礼子、どちらも黒髪なので兄妹に見えたようだ。

「いえ、私は……」

娘です、と言いかけた礼子を遮り仁が、

「そうなんですよ。手伝いに来てくれたんです」

「へえ、いい子ね。あ、このライター1つちょうだい。昨日買って帰ったら義母がこれいいわね、って言って取られちゃった」

「はい、ありがとうございます」

ライターを渡し、お金を受け取る仁。礼子は不満そうだ。だが仁は小声で、

「礼子、ここでだけは俺の妹という事にしておけ。わざわざ面倒ごとを増やすんじゃない」

「わかりました、……お兄さま」

そんな感じでこの日も日が沈む前にポップコーンとライターは売り切れたのである。

「今日も売れたわねー」

「ああ、良かったな」

そんな会話をしながら、ビーナの家に向かっていると、一行の前を遮った者がいる。

「へへへ、最近儲けているみたいじゃねえか」

「すこーし、俺たちにもお裾分けしてもらいてえんだけどな」

柄の悪い男達が4人。4人共剣を腰に提げている。

「……うわ。何ともテンプレ」

呆れる仁であるが、そんな仁には構わず男達はビーナの腰に提げられた袋に手を伸ばす。

「何するのよ! これは今日の売り上げなんだから!」

その手を払いのけるビーナ。

「だーかーらー、ちょっくらお裾分けを、な」

「ふざけないでよ! 何であんた達なんかに!」

どこまでも強気のビーナではある。仁も、

「そういうのを泥棒って言うんだけど、自覚してるのか?」

そう質問した。すると中の1人が、

「それがどうした!」

そう言っていきなり仁目掛けて殴りかかったのである。

だが、次の瞬間、その男は宙を舞っていた。そしてそのまま、

「へぐっ!」

変な悲鳴を上げて地面に叩き付けられ、そのまま沈黙。

「お父さまに何をするんですか」

もちろん礼子の仕業だ。残った男3名は、10歳くらいにしか見えない礼子がやったとは信じられないようで、

「今何しやがった?」

「魔法使うのか?」

等と喚き始めた。仁はそんな奴らに向かって、

「そいつを連れて帰った方が身のためだぞ」

と言うが、そんな忠告を聞くような男達ではない。

「ふざけるなよ? 痛い目見なきゃわからないらしいな?」

そう言って、剣を持った男の1人が腰に提げたそれを抜いた。

「ちょっと痛い思いしてもらおうか」

そう言って仁に斬り掛かる。が、その剣が仁に届くことはない。

「出来ない事は言わないように」

そう言い捨てた礼子が剣を一瞬で奪い取ったからだ。

「な、何!?」

「こんななまくらな剣、使い物にはなりません」

そう言って礼子は、男の目の前でその刀身をくにゃ、とひん曲げて見せた。

「ば、化け物か!?」

残った2人はそれを見て恐怖に駆られたらしく、剣を抜いて無茶苦茶に振り回し始めた。

「危ないですね」

だが礼子は瞬く間にその剣を奪い去ると、今度はなんと手の中で剣をくしゃくしゃに丸めてしまった。

「う、うわああああああ!」

それを見た男達は、気絶している1人を無視して逃げ出そうとする。

「卑怯な」

そう言ったかと思うと、礼子は3人に追いつき、1人は鳩尾に一撃。1人は首筋に手刀。そしてもう1人は投げ飛ばし、気絶させてしまったのである。

「お父さま、終わりました」

「ああ、ご苦労さん」

さも当然なような2人の会話、ビーナは、

「レーコってすごすぎ。これじゃあたしの『麻痺の杖』が役に立たないわけだわ」

と、溜め息混じりにこぼしたのだった。

「で、こいつらどうしようか?」

4人とも見事にのびている。

「そうねー、縛り上げて警備の兵士に突き出しましょう」

「わかった」

仁は、男達が持っていた剣を『 変形(フォーミング) 』で針金に変え、男達を縛り上げていく。

「面白い使い方ね」

変形(フォーミング) は工学魔法、ビーナも使えるので、真似して剣を針金に変え、最後の一人を縛り上げた。

「それじゃあ、まず荷物を置いてからこいつらを突き出しに行くか」

「そうね」

それで、まだ気絶している男達を念のため木に繋いでおく。そして3人は荷物をビーナの家に置きに帰った。

「それじゃ奴らを引き渡しに行くか」

「そうね、面倒だけど」

そういうわけで3人はとって返したのだが、4人はまだ気絶中。

「どうする?」

「お父さま、私が引きずっていきます」

その言葉通り、礼子は兵士詰め所まで4人を引きずって行ったのであった。石にぶつかったり、ズボンが擦り切れたりしていたようだが。それらは仁達のあずかり知らぬ事であった。

* * *

「なんで作れないんだ! 無能!」

館に罵声が響き渡る。

「ぼっちゃま、最高級のトウモロコシ、最高級の植物油、最高級の塩を使っているんですが……」

「なにが最高級だ! 焦げててちっとも膨らんでないじゃないか! こんなもの食べられるか!」

焦げ付いたトウモロコシの入った皿が投げ捨てられた。

「いったいどうしてなんだ? 作り方は簡単そうなのに……」

そのぼやきに答える者はいない。