軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02-12 告白

「おかえりなさいませ、お父さま」

研究所に帰ると礼子が出迎えてくれた。

「もう大分暗くなってしまいましたが、家が出来ましたのでごらんになって下さい」

「え? もうか?」

仁は礼子達が家を1日で作り上げてしまったことに驚いているが、仁自身がやればもっと早くできるだろう事には気づいていない。

それはさておき、研究所の外に出てみれば、そこには瓦屋根の日本風家屋が建っていた。

「これは……」

「お父さまの記憶から、住みやすそうな形態を模索したらこうなりました」

平屋建て、木造瓦葺き。壁は土塗り。

「中もごらん下さい」

中に入ると、玄関があって、そこで靴を脱ぐ。廊下は板張りで、土間があり、台所とくっついている。部屋は4つ、板敷きかと思いきや、

「……畳?」

畳に良く似た物が敷き詰められていた。

「お父さまの記憶によれば、『いぐさ』ですか? それで作るのでしょうけれど、似た草が湿地に生えていたので使って見ました」

よくもまあ、ここまで、と思わないでもないが、それだけ礼子が仁のことを思って作り上げてくれたのである。

「礼子、ありがとう。お前はほんとに良くできた『娘』だ」

満面の笑みでそう言った仁、礼子も誉められて嬉しそうである。

「早速今夜からこっちで寝泊まりするか」

「はい、どうぞ」

その夜、仁は久々に 畳(たたみもどき) の部屋に布団を敷いて寝たのであった。

翌朝。大麦のお粥を朝食に食べた仁は、

「礼子、また小さい 魔石(マギストーン) を売って金にしておいてくれ。それで小麦、大麦、調味料とか買い込んで欲しいんだ」

「はい、承知しました。それが終わりましたらビーナさんの所へ行けばいいですか?」

「ああ、そうだな。露店を出していなければビーナの家だろう」

「了解です」

蓬莱島で採れた 魔石(マギストーン) は良質なのでかなり高く売れるようだ。3個を売った礼子は5000トールを手に入れ、その金で小麦、大麦を買う。

ブルーランド近辺での小麦・大麦の価格は、小麦がキロ80トール、大麦がキロ90トール。10キロ買うともう少し安くなる。

大麦小麦併せて60キロを担いで歩いて行く礼子を、穀物売り場の店員はぽかんとして見送っていたのは余談である。

蓬莱島に持ち帰った麦類は一部をゴーレムメイドのペリドに渡し、栽培させる。残りは食糧として貯蔵した。

塩は蓬莱島の海で採れるので、コショウを少々買えば、礼子の役割は終わりである。

「もう少しお金を稼いでおきますか」

それで礼子は 魔石(マギストーン) をもう2個売り、3200トールを手にし、仁がいるであろう場所を目指した。

* * *

「おはよう」

「おはよう、ジン」

「今日はまたペルシカ持ってきた」

「ありがとう!」

最早、ビーナはどこから仁が果物を持ってくるのか気にしなくなっていた。

「なんだか、弟たち、これ食べるようになってから具合がいいみたいなの」

「そりゃあ良かったな。医者にかからないで治ればそれが一番だ」

仁がそう言うと、

「もしかしてジン、こうなるのわかってた?」

そう言って上目遣いに仁を見つめるビーナ。

「ああ、もしかしたらとは思った。だけど、確信が無いって言ったろう? だから黙っていた」

「そういえばそう言ってたわね。ねえ、何という病気だったの?」

「壊血病」

「カイケツビョウ?」

聞き慣れない言葉にビーナは首をかしげる。

「生野菜とか果物を食べないとかかりやすい病気さ。ビーナは、野菜といえばスープにしてたろう? 熱を加えると、野菜に含まれるある特定の栄養は壊れてしまうんだ。だから生で食べると言うことにも意味がある」

仁がそう説明してもビーナは首をかしげたまま、

「なんでジンはそういう知識持ってるの? なんだかジンって、根本的にあたしと違うみたい」

そう言うのであった。

「あー、俺はかなり特殊な教育受けたかも知れない。そのせいだろ」

「教育? ジンって、学園に通ったことあるんだ?」

「学園?」

「違うの? じゃあもしかして家庭教師? ジンってお金持ちだった? それとも貴族とか?」

仁は手を顔の前で振り、

「違う違う。どう言えばいいかな……」

家が完成してから考えていた事。

「俺は孤児なんだ」

「えっ?」

いきなりの告白に面食らうビーナ。仁は続けて、

「で、俺の住んでるところは孤島なんだ。師匠ももういないし」

「……」

「その島には 古代遺物(アーティファクト) って言われている 転移門(ワープゲート) があってな」

「なななな、 転移門(ワープゲート) ですって!!??」

驚き慌てるビーナ。仁はそんなビーナに、

「落ち着け。で、それを使ったらこの側の森の中に出たんだよ。で、あとはビーナも知っている通り」

かなり省略したりぼかしたりしているが、おおむね嘘は言っていない。

内容が衝撃的だったらしく、ビーナはかなり経ってから、

「……なんとなくわかったわ。ジンがちょっと特殊な 魔法工作士(マギクラフトマン) だって理由も」

「果物とかもその島に 生(な) っていたんだよ」

付け足す仁。

「なるほどね。ありがと。あたしを信用してくれたのね?」

「ああ。他人には話してくれるなよ?」

「もちろんよ。それで、今日もライター作ろうと思うの」

「もちろん、手伝うさ」

それで2人は早速ライターの製作に入る。売れることがわかったので、今日は倍の40個を作製した。

まだ少し時間があったので、

「それで、他に何か作りたい物は思いついたか?」

そう尋ねる仁。ビーナは、

「あ、そうそう。あのね、お湯を作る魔導具って作れないかな?」

「ライターで簡単に火を熾せるようになるからいらないんじゃないか?」

仁がそう反論すると、

「違うのよ。お湯って言っても、料理に使うような熱湯じゃなくて、例えば手を洗う、とか、体を拭く、とかするようなお湯なの」

そう説明された仁は感心するように手を叩き、

「ああ、そうか。わかったよ」

現代地球で言う湯沸かし器のような使い方をする魔導具と言うことだ。そこそこ熱いお湯ができればいい。

「そんなに難しくなさそうだけどな」

「でしょう? あたしとしては、水を入れた入れ物の中に入れると発熱するみたいなこと考えてるんだけど」

ビーナが自分の構想を延べたが、仁はそれを一蹴する。

「ああ、そりゃダメだ」

「なんでよ!?」

あっさりと駄目出しをくらったビーナ、自然と大声になる。

「昨日ビーナが言ってたろ、みんなのためになる道具、って」

「言ったわよ?」

「ということはだ、出来るだけ値段も安くしたいよな?」

「まあそうなるわよね」

「だとしたら、効率第一に考えないと」

「効率?」

「ああ。労力に対する仕事みたいな意味」

そう聞いて考え込んだビーナだったが、すぐにその意味を悟り、

「そっか。出来るだけ少ない魔力を使って、出来るだけ多くのお湯を作れるように、って意味ね?」

「そうそう。ビーナは飲み込みがいいよな」

素直に感心する仁であった。